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アレ・テタルの薬魔術師見習い  作者: HAL
2章 入学準備

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15/24

01 入学案内の熟読/まずはお金の計算から

ほぼ説明回です。


 寮の部屋に戻ったマユは、学費を払ったときにもらってまだ目を通していない書類の束を取り出した。入学意思を伝えたときにもらった説明書もほとんど読めてないのに気づき、そちらも引っ張り出す。


「入学案内、学校規則、学習課目と授業一覧……もらった順番が良さそう」


 ひとまず入学案内から目を通してゆく。

 入学案内書は手続きや契約、スケジュールに関する内容が中心だ。修学期間は二年間、ただし本人の希望により延長が可能とある。


「延長する場合は……学費が半期で一万ダル!」


 マユが支払った額の三倍だ。そんな大金を払ってまで学校に残るのはどうしてだろう。

 学費を稼ぐ時間も本来ならば勉強にあてたい。なんとしても二年間で卒業し、薬魔術師試験に合格するぞと決意した。


「資格がないと、錬金薬が作れないもの」


 作った錬金薬を売れるようになれば、生活も安定する。いつかは薬店を持ちたいが、まずそのまえに薬魔術師証を得なければ。


「あ……学費って、減免制度があるんだ」


 全額免除の特待生には及ばないが、優秀者には成績に応じて学費が減免されるとあった。マユの支払った半期三千ダルは、一位合格の実績により減免を受けた金額だったらしい。正規の学費は半期三万ダル、減免割合の最も高いのが最優秀者で正規額の十分の一、特待生以外の二位から五位までの優秀者は三分の一となっていた。

 薬草園での仕事を続けられたとしても、全額を貯めても三ヶ月以上かかっていては到底間に合わなかっただろう。一位合格の喜びが今ごろになって湧いてきた。


「ただし、期末試験の結果により、次期減免対象は決定される……あれ?」


 冊子に挟んであった受領証を抜き出して確認する。後期の学費として三千ダル預かった、としっかり書かれている。


「後期の授業料も払ってるけど、私の成績が落ちたらどうなるんだろう?」


 不足分を追加納入しなくてはならないのだろうか?

 ページを隅々まで読み、該当の記載を見つけた。やはり各試験で一位を取れなければ、後期学費として不足分を請求されるらしい。


「大変だ……」


 休日に薬草採取をどれだけ頑張っても三万ダルは貯められない。五位までに入れば学費は一万ダル、七千ダルの追加払いで済むが、それでもかなりキツイ。一位の成績を維持できれば、学費の追加はいらないのだから、ここは頑張るしかない。


「……闇の日(お休み)に稼いでる余裕、あるのかな」


 マユは財布の現金を数え直した。五千四百ダルほどあるので、成績さえ落とさなければ二年目前期の学費も何とかなりそうだ。だが一年間、何も買い物をせずに生活はできない。手元の現金が目減りするのは確実だ。


「朝と夜の食事は確保できているから、昼は抜いてもいいかも」


 昼食の出費がなければ、支出は大幅に削減できる。あとは学校が休みの日に、薬草採取に出かけて稼ぐ以外の選択はなさそうである。


「授業のある日は採取に出られそうにないし……長期休みにまとめて稼ぐしかないのかな」


 年間スケジュールのページを開いた。七月二十日に前期試験が行われ、八月一日から夏期休暇だ。後期は十月一日からはじまり、二月末で終わる。三月の一ヶ月間も休暇だ。


「よかった。休暇中に集中して稼げそう」


 成績を落とすつもりはないが、もし減免割合が減らされたとしても、休暇中に稼いで何とかできそうだとわかり安堵した。

 お金を財布に戻し、引き出しにしまう。鍵をかけていてふと思った。


「……ギルドに口座を開いたほうがいいかも」


 寮の個室は鍵もかかるし、貴重品入れにも鍵はあるが、大金を部屋に置いておくのは不安だ。なぜなら、鍵が万能ではないとマユは嫌というほど知っている。それに食堂での様子から、盗難の被害にあっても、教師はともかく、同級生らはきっと味方になってくれないだろう。


「安全なのが一番だもんね、あとでギルドで相談しよう」


 魔法使いギルドに口座が欲しかったが、マユはまだ見習い以前の学生だ。魔術師証を得るまでは口座は開けない。ひとまず冒険者ギルドでブレナンに相談だ。

 学費と現金の心配を解決したマユは、入学案内書を読み終え、学校規則に移った。

 授業の開始は三の鐘半からだが、四半鐘前に教室で出席登録をしてから、自分が受ける授業の教室に移動するようだ。朝の出席確認よりも、各授業での出席・遅刻が重要視されている。


「遅刻数は試験結果から減点される、無断欠席は十点減点。他者への加害行為の禁止。改善が見込まれない場合、契約魔術により縛る……契約魔術?」


 はじめて聞く魔術だ。


「薬魔術じゃないし、治療魔術でもないよね……あ、あった」


 補足に、条件を盛り込んだ契約を合意した者同士を縛る魔術、とあった。錬金魔術らしい。規則違反が著しい者については、罰則を付した契約魔術で縛り、それでも改善が観られない場合は魔力を封じた上で放校する、とある。


「……魔力を、封じるのか」


 魔力による加害行為で想像するのは、攻撃魔術だ。一瞬で魔物を屠る攻撃魔術は、当然人も一瞬で殺せる。魔術学校に集まっているのは、魔術師となれる魔力量を保有する者だ。その魔力を極める教育を受けた危険人物を放置できないのだろう。

 薬魔術は毒も扱うが、基本は人を癒す魔術だ。加害行為とは無縁である。


「普通にしてれば、問題なさそう」


 学校規則を読み終え、学習課目と授業一覧に移る。

 アレ・テタル魔術学校の一年目は、魔術職の座学と実習、全魔術職共通の必須科目が四つあり、加えて選択科目から最低一つ履修しなければならない。その七教科の試験で合格しなければ進級できない。学費減免もこの成績で決定される。


「座学ばかりで、実習は少ないなぁ」


 錬金薬を作れると期待していたマユは少し残念に思った。

 授業一覧では、実習は週に一回と設定されていた。実習内容は座学の延長とあり、場合によっては学校外や他職との合同実習もあるそうだ。


「学校外の実習……薬草採取だったらいいなぁ」


 実習ついでに小銭を稼げるかもしれない。

 教科書をパラパラとめくって、詳細な画図と説明を見たマユは、座学も実習も楽しみになった。


「共通の必須科目は、語学、数学、魔術理論、魔力操作、か」


 語学は問題ない。数学も商業ギルドが運営する孤児院で育ったマユには難しくはない。魔術理論と魔力操作は、どの魔術職においても基礎となる科目のようだ。

 専門科目の時間は週に八コマ用意されており、週に二限の授業に出席しなくてはならないとあった。


「魔力属性考、薬草学、身体学の三つ」


 薬魔術師を目指しているのだから薬草学を選ぶべきだろう。だがマユは他の二つにも興味があった。


「魔力属性考って、何を学ぶんだろう」


 人の持つ魔力には属性がある。マユは水だ。水の魔力が強く、魔術を学ぶ前から飲み水を作ることができていた。火属性なら着火に便利だし、風属性の冒険者は洗濯物に風を送って乾燥を早くしていた。土属性の知り合いはおらずわからないが、かすかにでも魔力を持っていれば、ちょっとしたときに便利で重宝するのだ。

 渡された教科書の中に、魔力属性考と身体学はなかった。入学手続きの際に「薬魔術」で登録したため、薬草学の教科書しか渡されなかったのだろう。おそらく一年目に複数の選択科目の授業を取る生徒はいないのかもしれない。


「あと、身体学ってどんなのだろう」


 錬金薬は人体の治療や回復のために使う魔術薬だ。身体学が人の体についての教科なら、学んでおいて損はない。二年目に学べるのだろうかと説明を読めば、二年目は別の専門性の高い授業に変わるため、身体学は一年目だけらしい。


「あ、あった。複数の科目の選択を希望する場合は、寮監を通じ二月十日までに申請すること、か」


 追加も可能とわかったので、あとは授業内容を調べて、勉強が必要そうなら申請するとしよう。過去の教科書や参考書籍は学校図書室に収蔵されており、閲覧可能とあった。


「図書室にも行かなきゃ」


 冒険者ギルドで口座開設、図書室で調べ物、寮監への申請と、予定がどんどん増えてゆく。

 二年目の専門科目は攻撃術、魔道具、錬金、医学の四つだった。


「薬魔術科はどれを選べば……医学? 錬金?」


 来年のこととはいえ、何をどのように学ぶのか知っておかねば、一年目の授業選択にも影響しそうな気がした。


「他の人は、どうやって決めたんだろう……」


 赤毛の、確かフランチェスカだったかが、師匠の存在を口にしていた。魔術学校は試験にさえ合格すれば、冒険者だろうと農夫だろうと入学資格を得られる。だが現実は、学んでこいと師匠に送り出された、魔術師見習いがほとんどだ。彼らは師匠や兄弟弟子から必要な授業の情報を得ている。

 マユもシェラストラルの薬魔術師カーラのもとで見習いをしていた。しかし入学する予定ではなかったマユは、師匠から助言も情報も得られていなかった。

 何を学ぶべきなのか、どれを選択すれば良いのか、さっぱりだ。


「こっちも図書室で調べられるかな」


 あるいは寮監から助言がもらえるかもしれない。そのあたりも相談してみようと板紙に書きとめた。

 パラパラと読みすすめ、実習の注意事項が目に入る。

 専科の実習で使用する素材は、学校側が用意するとあった。ほっとしたマユだが、続きを読んで顔をしかめた。


「自主学習を推奨する……そうだよね」


 魔道具・魔武具・錬金・薬魔術は経験が物を言う魔術職だ。授業以外での実技自主学習が推奨されていた。寮の自室での調合は禁止されているが、その代わりに授業のない空き時間の実習室使用が許可されている。ただし、自主学習で使用する素材は自分で用意しろ、とあった。


「採取してくるのが一番だよね」


 闇の日に採取した薬草を、練習用に取り分けておけば良いだろう。勉強と実利を兼ねられそうだと楽しくなった。魔法使いギルドの売店で割引価格で購入できるとあるが、マユは買う側ではなく売る側としてしか売店を利用するつもりはない。

 一通り目を通したマユは、書類を片付け、外出の準備をはじめた。


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【カリキュラム】

1年目

必須科目/全科目の試験に合格しなければ2年に上がれない。

 語学

 数学/物理

 魔術理論

 魔力操作


選択科目/最低1つを選択し、週2限以上の授業を受ける。試験に合格しなければ2年に上がれない。

 魔力属性/攻撃魔術、魔道具・魔武具を希望する者が多い

 薬草学/薬魔術、治療魔術を希望する者が多い

 身体学/攻撃魔術、治療魔術を希望する者が多い


魔術職専科/試験に合格しなければ2年に上がれない。

 座学(魔術職基礎)

 実習


2年目

専門必須科目

 攻撃術/攻撃魔術師

 魔道具/魔道具師、魔武具師

 錬金/錬金魔術師、薬魔術師

 医学/治療魔術師


魔術職ごとの必須授業

 薬魔術/座学と実習(採取、栽培、調合、製薬)

 治療魔術/座学と実習(解剖、製薬、調合、採取)

 魔道具・武具/座学と実習(工作、調合、素材集め、製作、素材知識)

 攻撃魔術/座学と実習(討伐、魔石収集、魔物解体、魔物知識、素材知識)

 錬金魔術/座学と実習(採取、栽培、調合、製薬、工作、彫金、細工、魔石扱い、魔物素材、錬金)


【マユのお財布】


現在の保有残高 約5440ダル

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