太りすぎた婚約者に『結婚までに健康体重になれ』と厳命したら驚きの結果に
エロはありませんが産後の女性の体型への言及など人によっては不快に感じられる描写があるかもしれません。
賢く見目麗しい王子には幼い頃からの婚約者がいた。
身分・才能共に申し分のない婚約者だったが、唯一の欠点は……肥満。
ウェスト周りなどが一般的な令嬢の2倍もあったのだ。
夜食を食うな、茶会に出るな、運動しろ、と苦言を呈してきた王子だったが効果がなく、彼女はどんどん肥え太るばかり。
結婚まであと1年を切った時、とうとう最後通牒を突き付けた。
「プリンだケーキだふわふわパンだと太りやすい食い物ばかり商品開発しやがって。子供の頃は細くてかわいかったのに、今やぎゅうぎゅうに身の詰まった米俵みたいになってるじゃないか!」
「我が国に米俵ってありましたかしら?」
「米俵でなかったらビア樽だ。もはや看過できん、減量しろ!」
「突然そんなことをおっしゃられましても」
「突然じゃねえわ! 何年も前から甘いものの食べすぎは体に悪いからやめろと言ってただろうが! それを『この商品が開発できるまでは』とかいって先延ばしにしやがって。ドレスを贈っても毎回毎回、採寸した時より肥えているからまともに着られた試しがないし。おかげで俺は『夜会があっても婚約者にドレスを贈らない男』だと噂されてんだぞ!」
「太るのを見越して一回り大きめサイズで作ってくださればよろしいのでは?」
「太るのを前提にするな! ていうか細れ!」
「細れって、そんな無茶な」
「無茶ではない。1か月に1キロずつ減らしていけば1年間で12キロ。多くは望まん、10キロでいい、結婚までの1年間で減らせ」
「減らせと言われて減る物だったら誰も苦労はしませんわ」
「苦労してないから減ってないんだろうが! 体を動かせ! 栄養管理しろ! 侯爵家なんだからトレーナーくらいいるだろ。いないなら王家の専属トレーナーを貸し出してもいい。美容体重になれとは言わん、健康体重になれ!」
「そんな…」
「俺は何も非道なことは言ってない。当たり前のことを言っている。結婚式の時に今より細くなってなかったらお前、国民の前で晒しものだぞ。『ビア樽妃』ってあだ名がつくぞ。外国からの来賓も来るから国際的に恥をさらすぞ?」
「う、それは嫌です」
「ならば今日からパーソナルトレーナーの指導の下、減量開始だ。茶菓子は食うな。茶には砂糖を入れずに飲め」
「うう、拷問ですわ」
「何が拷問だ。毎日体重記録をつけてもらうからな。食事記録も提出しろよ。俺の目をごまかせると思うなよ。嘘書いても見抜くからな?」
「ううう…」
※
そして時は流れて。
無事にダイエットに成功した婚約者は晴れて王子の妻となった。
標準サイズに減量できた花嫁の麗しいウェディングドレス姿に満足していた王子はその晩、初夜の寝室で驚愕した。
ドレスを脱いで薄物一枚となった花嫁の減量後のその体に…。
「おまえなんだよこれ、腹肉、いや、皮? メイドのエプロンみたいに垂れ下がってるじゃないか! 二の腕も袖みたいに!」
王子は花嫁の腹のひだ状のものをつまんでぷるんぷるんと揺さぶった。
「何って皮膚ですわよ」
「皮膚!?」
「減らせとかおっしゃるから、頑張って減らしたんじゃありませんか。お肉が減った分、皮膚が余ったのですわ」
「皮膚が余る!?」
「当然ですわ。脂肪や筋肉はエネルギーとして消費されて縮んでいきますけど、皮膚は消費されませんもの。たるんで残りますわよ」
「残るの!? これってどうなるの? 一生このまんまなの?」
「さあ?」
「さあ、って……」
「一応、医師の診断は受けましてよ。『病気ではないから問題なし。産後は皆さまこんなものです。数年早く来たと思えばどうということはないでしょう』と言われましたわ」
「その医者はデリカシーが足りてないんじゃないか? 俺も人のことは言えんが」
そういう王子の脳内には小さい子供を持つ若い貴族夫人たちの姿が去来していた。
妖艶な伯爵夫人も華奢で可憐な子爵夫人も、ドレス脱いだら腹の皮膚がエプロンみたいに…うわー。
「医師が言うには余った皮膚が気になるようなら切除することも可能だそうですわ。見苦しいとお思いなら…」
「切除って外科的にか? やめとけ。痛いし傷が残るだろ」
「でもお気に召さないのでしたら…」
「うーん…」
王子は自問自答した。
俺は新妻のこの余った皮膚がお気に召さないのだろうか?
沈思黙考。
やがて結論が出た。
「べつに気にならないな」
初めて見た瞬間はそのインパクトに圧倒されたが、見慣れればどうということはない。病気でないなら問題なし。
幸い顔の皮膚はたるんでないし、侯爵家の侍女たちがマッサージを頑張ったのだろう、首とかデコルテ部分はむしろ美しい。
「やるか、初夜」
「はい」
※
それから半年。
王子妃に懐妊の兆しありで王宮は沸いている。
そして王子は、
「むささびー」
「そこつまむのやめてくださいと言ってますでしょ」
妻の余った皮膚をぷにぷにする楽しみに目覚め、二の腕をつまんでは肘鉄を食らっている。
<完>
深夜テンションで書いてしまいました。これ全年齢対象でいいですよね? なんかもう深夜テンションでよくわかんないけど、完成したから投稿します。朝になったら後悔するかもしれませんけど。




