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デビルアカデミア~ 悪魔学園の禁断の封印を解くのは俺だけでいい ~  作者: 雪沢 凛
第十二章

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断章 (1)

 朝の光がカーテンの隙間から斜めに差し込み、部屋を柔らかく照らしていた。

 アリアンはゆっくりと目を開け、まだ少しぼんやりした意識を取り戻す。頭を横に向けた瞬間、思わず声を詰まらせた。


 セレナがフード付きのスポーツウェアを着たまま、猫のように丸くなって自分の隣で眠っていたのだ。

 規則正しい寝息を立て、完全に熟睡しているようだった。


「セ、セレナ!?なんでここにいるの?」

 驚いて勢いよく体を起こし、小さく叫んでしまう。


 その声に反応するように、セレナが眉をひそめてゆっくり目を開けた。

 彼女は眠たげに長いあくびをして、何事もなかったかのように言った。


「おはよう、姉さん。」


 アリアンの顔が一気に赤くなり、言葉を詰まらせながら問い詰める。

「な、なんで私のベッドにいるの……!?」


 セレナはまるで当然のように目をこすりながら、無頓着な口調で答えた。

「起こしに来たんだけど、あんまり気持ちよさそうに寝てるからさ。起こすのも悪いなって思って……そのまま私も寝ちゃった。」


 そう言って、もう一度気だるげにあくびをした。


「そ、そんなのダメに決まってるでしょ!ここ私のベッドだよ!」

 アリアンは信じられないという顔で抗議する。


 だがセレナは肩をすくめて、まったく悪びれる様子もなく言い返す。

「ちょっと寝ただけじゃん、別にいいでしょ。ほら、さっさと起きて準備しなよ。今日はやること多いんだから。」


 その飄々とした態度に、アリアンは大きくため息をつくしかなかった。

 複雑な思いを胸に抱えつつも、結局は言われた通りに布団を出て、今日を始める準備を始めた。



 アリアンとセレナは学院の廊下を並んで歩く。

 借り物のスポーツウェアを着ているせいで、アリアンはどこか落ち着かない様子だった。

 一方、セレナは軽い足取りで、何も背負っていないかのように歩いている。


 アリアンは我慢できずに声をかけた。

「ねえ、セレナ、昨日のこと……」


 だがセレナは振り返りもせず、歩みを止めることもなく、淡々と答えた。

「今はその話をする時じゃない。」


 アリアンは口を噤み、不満そうに眉を寄せたが、結局はそれ以上追及しなかった。

 二人はそのまま進み、やがて学院長室の前へとたどり着いた。


 扉を開けた瞬間、アリアンの視線は中の様子に引き寄せられた。

 デスクの向こうではアイデンが書類をめくっており、ソファにはノックスが無造作に座っていた。


 ノックスは白いシャツを着て、袖を無造作にまくり上げていた。左腕は吊り包帯で固定され、右手首には包帯が巻かれている。

 肩に引っかけた上着はずり落ちそうで、赤い髪は寝癖のように乱れ、口にはサンドイッチをくわえたままだった。


「ノックス!」

 アリアンは思わず駆け寄り、心配そうに声を上げた。

「怪我、大丈夫なの?少しは良くなったの?」


 ノックスは少し疲れたような目をしながらも、無理に笑みを作って答えた。


「大したことないよ。軽いヒビだし、見た目よりはマシだ。」

 そう言って、吊った左腕を軽く持ち上げてみせ、わざとらしく軽口を叩いた。


 だがアリアンは納得しないように顔をしかめ、彼の全身をじろじろ見てしまう。

 包帯の隙間から覗く傷や、どこか痛みに耐えているような目の下の隈を見つけてしまい、思わず声を詰まらせた。


「もっとちゃんと休んでよ……そんなのじゃ、治るものも治らないよ。」


 そのやり取りを見届けたセレナは、部屋を見渡してから入ってきた。

 その目が探るように動いたのをアイデンは見逃さず、薄く口角を上げて言った。


「心配するな。エンとカルマはいない。外へ調査に出ている。」


 セレナは一瞬だけ表情を止め、口を開きかけたが、結局何も言わずに視線を逸らした。

 そしてソファの一角に腰を下ろし、腕を組んで壁を見つめる。無言で、だがその眼差しにはわずかな緊張が滲んでいた。


 アリアンはというと、相変わらずノックスをじっと見つめていた。

 ノックスはそんな彼女の視線を避けるように、わざとサンドイッチをかじる仕草をしてみせ、肩からずれかけた上着を直した。

 本当は包帯の下よりも、誰にも見せられない翼の根が痛むことを、悟られたくなかったからだ。


 アイデンは軽く咳払いをして、部屋に流れる気まずい沈黙を断ち切った。

「さて、どこから話すべきかな。アリアン、君の頭の中には夜空の星みたいに疑問がいっぱいだろう?」


 アリアンは少しムッとしたように腰に手を当て、不満げに言った。

「そうよ!みんな何も説明してくれないし、結局どういうことなの?」


 セレナはソファに斜めに寄りかかりながら、淡々と言った。


「簡単に言えば、私とノックスは双子。小さい頃に引き離されたの。」

 その口調はあまりにも軽く、まるで他人事のようだった。


 ノックスはその言葉に眉をひそめ、不満げに言い返した。

「兄妹だろ、正しくは。」


 セレナは口元をわずかに釣り上げ、挑発するような視線を向けた。

「その未熟さで?どう見ても私が姉でしょ。」


 言い終えると、二人は同時にアイデンの方を見た。まるで判定を求めるように。

 突然注がれる双子の視線に、アイデンは頭をかき、少しうんざりしたようにため息をついた。


「えっと……別にどっちでもいいんじゃないか?そんなに重要な問題か?」


 しかしその言葉で終わるかと思いきや、二人の視線は全く逸れず、むしろより真剣さを増していた。


 アリアンはその様子を見て、思わず吹き出した。

「なんだか、今の二人、普通の兄妹みたいだよ。」


 その一言に、少し張り詰めていた空気が和らいだ。

 けれどもノックスとセレナは、どちらも視線をそらさず、頑なに自分の立場を譲ろうとしなかった。


 アイデンは額を押さえ、小声でぼやいた。

「まったく、この一家相手は骨が折れるな……」


 アリアンの笑い声も徐々に小さくなり、やがてその表情は複雑なものに変わった。

 兄妹だと認め合う二人を見ていると、胸の奥に説明しがたい寂しさが広がった。

 彼女はふと目を伏せ、声を絞り出した。


「二人が本当の家族なら……私は何なの?」


 その言葉に、セレナの目がかすかに揺れたが、すぐに真剣な色を帯びた。


「アリアン、あんたは私の姉だ。それは変わらない。」


 しかしその断言は、アリアンを安心させるどころか、逆に彼女の心をざわつかせた。

 彼女は自分の手を見つめながら、低く苦しげに呟いた。


「いつもそう言うけど……本当にそう思ってる?いつも私を遠ざけて、何も話してくれないじゃない。今になって急に“姉”だなんて、そんなの……根拠あるの?」

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