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デビルアカデミア~ 悪魔学園の禁断の封印を解くのは俺だけでいい ~  作者: 雪沢 凛
第十一章

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覚醒 (7)

 セレナは何も言わず、ただ顔をそらしてノックスを冷たく一瞥すると、ためらいもなく敵の中へと飛び込んだ。

 彼女の足取りは軽やかで安定しており、刀は夜空を裂くような鋭い弧を描き、雷光のように魔獣の首を一閃で断ち切った。

 その動きはまるで流水のごとく滑らかで、鋭利な刃は闇を切り裂き、一瞬で鮮血に染まった。


 続いて放たれたのは、エンの銃声だった。彼の目は猛禽のごとく鋭く、セレナの刃が届かない魔獣を正確に狙い撃つ。

 彼の腕は岩のように安定し、放たれる一発一発が魔獣の急所を正確に撃ち抜き、夜の闇に真紅の花を咲かせたかのようだった。

 無駄な動きは一切なく、そのステップと銃声はセレナの動きと完璧に重なり合い、彼女の隙を的確に補っていた。


 二人の間には一切の言葉はなかった。

 しかし、その一挙一動がまるで骨の髄まで刻み込まれたような連携を見せていた。


 セレナはまるで疾風のように前線を舞い、煌めく刃で次々と魔獣を斬り伏せる。

 エンは少し後方から、落ち着いた銃撃で彼女の死角を埋め、まるで彼女の動きを先読みしているかのように支援を行っていた。


 魔獣の攻撃は荒々しく混沌としていたが、二人の連携の前では無力で滑稽にさえ映る。

 刀光と銃声が夜空を彩り、無言の交響曲を奏でるかのようだった。その一撃一撃が致命の旋律となり、観る者を魅了した。


 セレナは振り向きざまに刀の背で魔獣の爪を受け止め、刃を返してその体を真っ二つに断ち切った。息を整える間もなく、別の魔獣が横から飛びかかってくる。

 しかしその瞬間、エンの弾丸が魔獣の頭を貫き、血飛沫を夜空に散らす。セレナは無言で彼に一瞥を送り、それが感謝の意であることは明らかだった。


 エンは返事をせず、静かにボルトを引き、再び銃を構えた。その眼差しは深淵のように静かで、そして冷徹だった。

 二人は言葉を交わさずとも、互いの動きと視線で不落の防壁を築いていた。


 アリアンはその様子を遠くから見つめ、心の中で複雑な感情が渦巻いていた。

 セレナの冷酷なまでの決断力、エンの圧倒的な安定感——彼らはまるで生まれながらの戦場の舞踏者であり、その殺戮の美しさに息を呑むほどだった。


 月光が彼らを照らし、セレナの刀に反射する冷光と、エンの静かな眼差しを浮かび上がらせる。それはまるで記憶に深く刻まれる一枚の絵画のようだった。


「早く!」


 アイデンの声にアリアンは我に返り、後ろ髪を引かれるような思いでノックスと共にその場を離れる。

 セレナの姿は徐々に夜に溶けていったが、その背中はアリアンの心に深く焼き付いていた。



 戦いが一段落し、夜の静寂が戻り始めたが、張り詰めた空気は未だ消えない。エンは一発、魔獣の頭にとどめを刺すと、低く言った。


「セレナ、早く行け。他の連中に追いつけ。」


 セレナは頬に飛んだ血をぬぐい、低く冷たい声で返す。


「わかってる。」

 そう言い残して彼女は学院の方角へと走り出す。その足取りは力強く、迷いがなかった。


 だが、エンの身体が突然硬直した。

 足元がふらつき、ついには膝をついて地面に崩れ落ちる。両手をついて支える彼の額からは冷たい汗が絶え間なく流れ落ちる。

 その身体から放たれる魔力の波動は、限界を示すように乱れていた。


 セレナは振り返り、エンの姿に目を細める。戻ろうと一歩踏み出したそのとき、学院の方から一つの人影が現れた。

 月光に照らされた赤髪が揺れ、その姿はまるで炎を纏ったようだった。

 カルマが、静かに、しかし確かな足取りでエンに向かって歩いてくる。


 セレナはカルマと跪いたエンを見比べ、言葉なくその場に立ち尽くす。

 二人が目を合わせたその瞬間、交わされた視線には言葉以上の意味が込められていた。


「行け、セレナ。」

 エンの声はかすれていたが、そこには確かな意志があった。

「早く、みんなに追いつけ。」


 セレナはしばしその場に立ち尽くし、複雑な感情を押し殺すようにしてうなずいた。

 そして静かに背を向け、走り去る。黒い闇にその姿が消えていった。


 カルマはエンのそばに膝をつき、肩に手を添える。

 その瞳には深い想いが宿っていた。二人は言葉を交わさずとも、理解し合っていた。


 エンは小さく息を吐き、苦笑を浮かべながらつぶやく。

「母娘の再会……少しだけ後回しになったな。」


 カルマは首を横に振る。その赤髪が夜風に揺れた。何も言わずに彼の肩を軽く叩き、余計な言葉はいらないと示す。

 エンは目を伏せ、しばらく黙っていたが、やがて小さな声で言った。


「残りは……頼んだぞ。」


 カルマは何も答えず、彼を支えながら静かに立ち上がった。月の光が二人の姿を照らし出し、ただ静かに、しかし確かに、その絆を物語っていた。



 アイデンはノックスを医療室のベッドに寝かせ、振り返ったとき、アリアンは部屋の片隅にもう一人の姿が立っているのに気づき、目を見開いた。


「セナ先生……?」

 アリアンの声には驚きと疑問が混じっていた。


 セナはゆっくりとこちらを振り向き、淡々とした口調で、どこか皮肉めいた微笑を浮かべながら答えた。

「ええ、アイデンに急に呼ばれてね。まさか、こんな場面を見ることになるとは思わなかったわ。」


 彼女の視線が素早くノックスの全身をなぞり、すぐさまベッドに近づいて手際よく彼の傷を確認する。


「傷は浅くないけど、今のところ命に別状はないわ。応急処置は済ませたけど、しばらく安静が必要ね。」

 冷静な手つきで包帯を巻きながら、セナはそう告げた。


 そのとき、医療室のドアが開き、血に染まったセレナが姿を現した。

 アリアンは彼女の様子を見て、顔に心配の色を浮かべた。


「怪我してるの? その血……」


 セレナは手を軽く振り、淡々と、しかしどこか安心させるような口調で答えた。

「私のじゃない。あの魔獣たちの血よ。」


 アリアンが何か言おうとしたが、セレナはすでに視線をノックスに向けていた。その目には、かすかな緊張が宿っていた。

 そんな中、アイデンが静かだが威厳のある声で口を開いた。


「ノックスを休ませよう。俺たちは別の場所で話す。」


 しかし、その言葉を遮るように、ノックスが口を開いた。声はかすれていたが、その意志は確かだった。


「何を話すにしても、俺も聞いておきたい。」

 彼は痛みに顔を歪めながらも、無理やり上半身を起こした。


「やめて!」とアリアンが慌てて彼の元へ駆け寄り、肩を支えた。

「横になって、無理しないで!」


 ノックスは弱々しく笑みを浮かべながら、軽い調子で言った。

「大丈夫だよ、そんなに心配しなくても……」


 だがアリアンは下を向き、唇を震わせながらぽつりと言った。

「ごめんなさい……私が……撃った……私、どう償えばいいか……」


 ノックスは一瞬驚いたように彼女を見つめ、やがて小さく笑った。

「君の射撃の腕前、俺が一番よく知ってるよ。狙って当てるなんて、無理だろ。」


 その冗談にアリアンは戸惑いながら顔を上げ、ノックスの顔に浮かぶ微笑みを見て、胸が締めつけられるような思いがこみ上げた。

 ノックスは手を伸ばし、そっと彼女の頭を撫でた。優しく、温かい手のひらが、彼女の緊張をわずかに解いた。


「気にするな。君は……よくやってくれた。」


 アリアンの目に涙がにじんだが、必死にこらえてうなずき、小さく声を絞り出した。

「……うん。でも、もう無茶はしないで。」


 ノックスは小さくため息をつき、視線をセレナに移した。

「にしても……お前の作戦、危うく俺を殺すとこだったぞ。」


 セレナは眉をひそめもせず、腕を組んだまま冷たく答えた。

「殺すつもりはなかった。イアンはお前の力が目的、命までは取らないと分かってた。ただ……人道的じゃないことはするだろうけど。」


 ノックスは低く鼻で笑い、呟く。


「死ぬより辛い目にはあったがな。」

 その言葉には、淡々とした調子の裏に、にじむような怒りと痛みがあった。


 アイデンが空気を変えるように、一歩前に出て口を開いた。

「そろそろ話してくれ、セレナ、ノックス。何が起きたのか、はっきり聞かせてもらう。」


 セレナはアイデンをじっと見つめ、目に一瞬の躊躇がよぎった。ノックスは彼女を一瞥し、数秒沈黙したあと、ゆっくりと言葉を選ぶように話し始めた。


「単純な話さ。俺とセレナは、ある協定を結んだ。すべてはイアンに本当の目的を吐かせるための芝居だった。」


 アイデンの眉がひそめられ、視線が鋭くなる。

「目的……とは?」


 ノックスの表情は沈み、セレナを一瞥したのち、再び皆を見渡して言った。

「イアンが狙っているのは……俺の力。そして、セレナの力でもある。」


 彼は一瞬言葉を切り、静かながらも張りつめた声で続けた。

「……正確に言えば、俺とソレイアの“力”だ。」


 その言葉が放たれた瞬間、医療室の空気が張り詰めるように重たくなった。誰もが言葉を失い、沈黙がその場を支配した。

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