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デビルアカデミア~ 悪魔学園の禁断の封印を解くのは俺だけでいい ~  作者: 雪沢 凛
第七章

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暴露 (6)

 タロスは周囲のやり取りにしばらく黙っていたが、ふと眉をひそめ、低く呟いた。

「……でも、ちょっと引っかかるな」


 ノックスはすぐにその反応を察し、落ち着いた声で問う。

「何が?」


 タロスは一瞬黙り、すぐに表情を整えて答えた。

「いや、気のせいかもしれない。ただの思い過ごしだ」


 しかし、その曖昧な態度が逆にアリアンの興味を引いたらしい。彼女は立ち上がり、両手をテーブルにつきながら塔のように前傾し、好奇心全開で質問を浴びせた。


「それより! ノックスのパパとカルマさんって、どうやって出会ったの? ロマンチックな話、絶対あるでしょ!? ね?あるでしょ?」


 タロスはその勢いに面食らったように一歩下がり、後ろの角が吊り下げられたライトにぶつかりそうになる。

 視線をノックスに送ると、どこまで話していいのかと無言で問いかけるような眼差し。


 ノックスは表情を変えず、感情の読めない声で答えた。

「父は学者で、今は学院の理事長でもある。母と同じ理想を持っていた。だからこそ、共に歩むようになったんだと思う」


 その言葉を言い終えると、ノックスは再びタロスを見やった。その目には、何かを託すような、あるいは探るような静かな光が宿っていた。


 タロスはノックスの意図を即座に理解した。アリアンとカスパに、(エン)がかつて悪魔狩人だったという過去を知られたくない――その暗黙の意図を受け取り、小さくうなずいた。


「……そういうことかもしれないな。俺も彼らのことを詳しく知ってるわけじゃないし、昔のことまではな」


 アリアンはその答えに不満そうな顔をしたが、それ以上問い詰めることはできなかった。彼女は席に座り直し、首をかしげながら呟く。


「つまり……思想が一致して惹かれ合ったってこと?なんか地味すぎない? もっとドラマチックな出会いはなかったのかなぁ」


 すると、隣のカスパがメガネを押し上げながら皮肉混じりに口を挟んだ。

「アリアン、恋愛小説の読みすぎだろ。人間の学者と魔族が思想を同じくするだけでも十分に珍しいことだよ。これ以上何を求めるんだか」


 アリアンはむっとして腕を組み、そっぽを向く。

「だって、せっかくのレアな組み合わせなのに、もっと語るに値するような出会いがあってもいいじゃない!」


 ノックスは彼女の言葉には反応せず、手元のサンドイッチを淡々と食べ続けていた。まるでこの話題は自分には関係ないと言わんばかりに。


 そんなノックスの様子にタロスは一瞬だけ視線を送り、小さく頷いた。その表情は、ノックスの態度を肯定しているようでもあり、何かを察しているようでもあった。


 そして彼は、ふと独り言のように呟く。

「――伝説ってのは、案外そんなに美しいもんじゃないさ」


 その言葉には、どこか含みのある重さがあった。

 ノックスは少しだけ眉をひそめると、ふと視線を食堂の壁に掛けられた時計へと移した。針はすでに午後の授業が始まる直前を指している。


「……今日の話はこれで終わりにしよう」


 淡々としたその言葉に、カイルが肩をすくめて笑う。

「そうだな、一気に詰め込みすぎても消化できないしな。続きはまた今度にしようぜ」


 アリアンは不満げに口を尖らせながら、悔しそうにぼやく。

「もっと聞きたいことあったのにー! 変な恋バナなんかしてないで、真面目に聞いとけばよかった……」


 カスパは本を閉じながら冷静に言う。

「知識ってのは、時間をかけて蓄積するものだよ。ノックスの言う通り、午後の授業に遅れたら元も子もないし」


 タロスは立ち上がり、ノックスに目を向けながら落ち着いた声で言った。

「じゃあ俺たちは先に戻る。ノックス、何かあったら、いつでも声をかけてくれ」


 カイルも立ち上がり、ノックスの肩をぽんと叩く。

「また時間作って、ゆっくり話そうな。逃げないでよ?」


 ノックスは眉をひそめて、無感情な声で答えた。

「いつ俺が逃げたって?」


「いやいや、今のはほぼ逃げ腰だったろ~?」

 カイルはそう言ってニヤリと笑い、タロスの腕を引っ張ってその場を離れていった。


 彼らの背中が遠ざかると同時に、食堂は再びいつもの喧騒に包まれていく。ノックスは席を立ち、食器を手際よくまとめながら、静かな動きで片付けを進めた。


 その様子を横目で見ながら、アリアンも自分のトレーを持ち上げ、小さくぼやく。


「うぅ……まだまだ気になることいっぱいあるのに……。こんなあっさり終わるなんて納得いかない!」


 カスパは彼女の後ろを歩きながら、軽い口調で返す。

「焦らなくていいさ。そのうち、ちゃんと見えてくるよ」


 ノックスは手元のトレーを一瞥し、その瞳に一瞬だけ淡い感情の揺れが走る。だがすぐに目を逸らし、食堂の外に差し込む日の光を一瞥して、静かに呟いた。


「……行こう。遅れるぞ」


-第七章 (完)-

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