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列車とパズル

作者: 柳澤
掲載日:2025/03/10

ガタン、ガタン…


少年は窓から外の様子を眺めた。

早朝とも夕方ともつかない曇り空。

どこまでも連なる山は、霧のせいでぼやけて見える。

列車はもう4時間も走り続けていた。

車窓から外を眺めてみても、しばらく同じような風景が続いていた。

少年は手元に視線を移し、パズルを解き始める。

長旅になることはわかっていたから、とびきり難しいパズルを持っていくことにした。


ガタン、ガタン…

カチャ、カチャ


少年は窓側に座っていた。

向かいの通路側の席では、同じくらいの年齢の少女が分厚い本を読んでいた。


ガタン、ガタン…

カチャ、カチャ、カチャ、ポロッ。

「あっ。」

コツッ。


パズルが床に落ちた。

向かいに座る少女の足の間に転がっていった。


少年は動揺した。

少年が何を望んでいるか少女にはわかっていたが、少女は本から目を離さなかった。

あきらめた少年は少女に話しかけた。

少女はようやく本から目を離した。



少年からは、落ち着きがなく、気弱な印象を受けた。

焦げたような髪色に、見開いた目の下にはクマがあった。

少年は足元に視線を移した。

「すみません、それをとってくれませんか」

少女はパズルを手に取った。つやつやして、少しあたたかい。

小さいながら精巧で、張り巡らされた途切れ途切れの木目に、

少女は不思議と心を惹かれた。

しばらくそれを眺めてから、思わず手を動かし始める。


ガタン、ガタン…

カチャ、カチャ


カチャン!


解けてしまった。

少女はパズルを少年に返し、再び本に視線を戻した。


パズルを受け取った少年は、先ほど目が合った少女のことを考えていた。

少女は刺繍の入った黒い眼帯を付けていた。

短く整えられた白い髪に、飄々とした雰囲気は年齢よりずっと大人びた印象を与えた。

何より彼女は難しいパズルをあっという間に解いてしまった。

そのことが少年にはショックだった。


パズルは解けてしまった。


ガタン、ガタン…


まだしばらく旅は続きそうだ。


ガタン、ガタン…


パラ。

本のページをめくる音が聞こえた。


少年にはそれがとてもうれしいことのように思えた。

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