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第3話 アイドルホムラの正体

俺は死んだんだ。

 二度と目覚めることは無い。


 そう思っていた俺の瞼が開き、眩しい光を瞳に浴びた。


「……えっ?」


 知らない天井を見つめて放心する。


 俺は生きているのか?

 それともここがあの世?


 よくわからないまま、俺は天井の照明を見つめ続けた。


「あれ? 生きてるの?」


 誰かの声が聞こえた。女の子の声だ。

 見えるのは知らない天井だが、この声は聞いたことがあるような……。


「えっ? き、君は……」


 声のしたほうへ顔を向ける。

 そこにいたのは、手術台のような場所に座るホムラちゃんの姿だった。


「ど、どうして君がここに……? い、いや、やっぱり俺は死んだんだ。目覚めたらホムラちゃんがいるなんてあり得ない。たぶんここは天国……」

「死んでないから安心して。ほら。足もあるでしょ?」

「あ、足? あ、本当だ」


 足はちゃんとある。

 しかし足があれば死んでないというのもなんか古い気が……。


「じゃあ本物のホムラちゃん? けど、ホムラちゃんってもっとクールな印象だったと思うけど……」


 目の前にいるホムラちゃんからは普段のクールさを感じなかった。


「あれはキャラ。ホムラはクールビューティで売ってるアイドルだからね。本来のわたしとは違うの。あ、これ言っちゃダメだからね」

「は、はい」


 本当のホムラちゃんはクールではなく、明るい普通の女子高生という感じだ。しかしこっちのホムラちゃんもかわいいので俺は好きだった。


「てかおじさん、お腹刺されてなかった? どうやって生きてたの?」

「いやどうやってって……」


 そういえば腹に食らった傷が無い。

 痛みも無く、完全に治っていた。


「あれ? どうして……?」

「おじさん、そこに倒れてる連中に変な注射打たれてたよ。それが原因じゃない?」

「そこに倒れてる連中って……うわっ!?」


 手術台みたいなベッドの下には、手術服を着た連中が倒れていた。


「これって……」

「わたしが倒したの」

「ホムラちゃんが?」


 こいつらが弱かったのか?

 しかし意外にもホムラちゃんは武闘派なようだった。


「けど変な注射ってなんだろう……」


 傷が治っているのはよかったが、なにを注射されたのか不安になってきた。


「と言うかここって……どこ?」


 見たところ手術室のようだが……。


「ここはデッツのアジト」

「デ、デッツのアジトっ?」

「そう。わたしたちはコンサート会場からここへ攫われて来たってわけね」


 そうホムラちゃんは冷静な声音で教えてくれる。


「さ、攫われて来たって……なんで俺まで?」


 理由は知らないが、奴らはアイドルを攫うのが目的だ。

 アイドルとは真逆と言っていい俺なんか攫ってどうしようと言うのか?


「さあ? そんなのわたしが知るわけないでしょ」

「それもそうだね……」

「てかおじさん大丈夫なの? 適性ゼロなんでしょ?」

「えっ? どういうこと?」

「ここたぶん、地下東京外のダンジョンだよ。デッツのアジトって普通のダンジョンにあるって聞いたことあるし」

「じゃ、じゃあ……」


 ここには瘴気がある。


 俺は慌てるも、もう遅いだろう。

 しかし身体に異常は無い。どこも魔物化などしていなかった。


「だ、大丈夫みたい」

「そう。もしかしたらアジト内は換気システムが充実しているのかもね。さっき打たれた注射にもなにか瘴気を無害化する治療薬でも入ってたのかも」


 恐らくそうだろう。

 そうでなければ俺は今ごろ魔物化しているはずだ。


「それよりもわたしそろそろ行くけど、おじさんはどうするの?」

「えっ? 行くって?」

「ここにいるアジトのボスを倒して、攫われた人たちを救うの」

「ええっ!?」


 この子は一体なにを言っているんだ?


 デッツはDGも手を焼く犯罪組織だ。

 多少は強いみたいだけど、アイドルで女の子のホムラちゃんがアジトのボスを倒すなんてできるわけはない。


「気を失った振りをしててね。こいつらがわたしになにかしようとしたから、ぶっとばしてやったの。で、今がチャンスってこと」

「チャ、チャンスって……」

「変身の」

「変身?」


 またまた意味の分からないことを……。


 あまりの恐怖に頭がおかしくなってしまったのではないかと心配になってきた。


「おじさんさ、わたしのファンでしょ?」

「えっ? いやその……俺は警備でコンサートに行ってて……」

「握手会に来たの覚えてるし」

「そうなの?」


 俺みたいななんの特徴も無い男をちゃんと覚えていてくれるなんて……。


 やっぱり好き。

 ホムラちゃん大好き。ますますファンになっちゃう。


「うん。わたしのファンならさ、わたしの秘密は絶対に守ってくれるよね?」

「秘密? って、本来の性格のこと?」

「それとは違う秘密。まあそっちもだけど、バラしたりしたら、握手会もコンサートも出禁にするからね」

「そ、それは困るよっ! うんうんっ! 絶対に秘密は守るっ! 俺だけ知ってるホムラちゃんの秘密とかすごい嬉しいし、絶対に誰かへ言ったりしないよっ!」

「よろしい。じゃあ変身するね」

「ふぁっ!?」


 ホムラちゃんはおもむろに服の胸部分を開いて美しいたわわな谷間を披露したかと思うと、そこからペンダントを取り出す。


 おっぱいの谷間から物が出てくるところなんて初めて見た……。


 そんなことよりホムラちゃんの谷間という素敵なものを目にした俺は、眼福眼福と、ご満悦な気分であった。


「シルバーァァァチェェェェンジっ!」


 ペンダントを握りながらホムラちゃんがそう声を上げると、


「わあっ!?」


 姿が一瞬で変わる。


 銀色のスーツに、同じく銀色の仮面。銀色のミニスカート。そして胸元には露出した大きな谷間。

 背中にはメカメカしい羽根の付いた、俺の知っている正義の味方がそこにいた。

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