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第19話 倒したはずのガンジョラが……

「うおおっ! やりたがったっ!」

「おいおい一撃かよ」

「てかなんださっきの攻撃? なんか飛ばしたの?」


 ……俺もなんだかよくわからない。

 なにかやれそうな気がして拳を突き出したらこうなったのだ。


「やったねドラゴンブラックさんっ! わたしの作戦大成功だったでしょ? てかさっきの技はなに?」

「さっきのは……なんか鱗が回転しながら飛んで行ったの」

「鱗が? じゃあドリルウロコパンチだね。今度から使うときにドリルウロコパーンチって叫んでね」

「えっ? あ、はい……」


 ニコニコ顔の焔ちゃんから言われたら嫌とは言えない。



 ――すげーあんな頑丈な奴、一撃で倒しちまったよ


 ――やっぱこのトカゲ親父つえーわ


 ――ぐあークソザコ怪人! トカゲも倒せねーのか!


 ――トカゲじゃなくてドラゴンだし


 ――これにて一件落着か



 コメント欄にもある通り、一件落着だ。


 ガンジョラの頭が破壊されたことにより、石化されたDGたちが元に戻っている。今ごろは子供たちも元に戻っていることだろう。


「はーい! 大勝利しましたー! 倒したのは仮面ドラゴンブラックさんだけど、作戦を考えたのはわたしだからねー! ブイ!」


 焔ちゃんはドローンカメラに向かってVサイン。


 そんな姿がかわいらしく、俺は微笑ましい気持ちで眺めていた。


「ほら、ドラゴンブラックさんもっ!」

「えっ? わあっ!?」


 俺の腕を抱いてふたたびカメラに向かってVサインを決める。

 抱かれた腕は大きなお乳に挟まれていた。


「ドラゴンブラックさんもVサインっ」

「お、おふ、おふ……あい」


 沸騰しそうな頭で俺もVサインする。

 しかし意識はカメラではなく、柔らかい谷に落ちている腕のほうに集中していた。



 ――うわああああ!!


 ――おっさんの腕がシルバーライトちゃんの谷間に!?


 ――死ねええええ!!!


 ――うらやまけしからん


 ――ああああああああああ


 ――いやしか女ばい……


 ――なんでえええ!!!


 ――ふう【赤スパ1万円】


 ――なに抜いとんねん



 当たり前だがコメント欄は大荒れだ。

 俺の脳内も腕を挟む柔らかみに乱されて大荒れ状態だった。


「シ、シルバーライトちゃん、そろそろ……」


 離れてくれないとコメント欄の荒れが収まらない。


 そう言おうとしたとき、


「じょらーっ!」

「えっ? うおっ!?」


 声を聞いて振り返ると、頭を砕かれて倒れていたガンジョラの身体が立ち上がっていた。


「シ、シルバーライトちゃんから離れろぉ! じょらー!」

「し、死んだんじゃ……」


 頭は砕いた。それなのになぜ生きているのか……。


「えっ?」


 そのときガンジョラの胸に両目が現れる。

 そして腹には口が現れた。


「じょらじょらーっ! 誰も頭が弱点なんて言ってないぜっ!」

「なるほど。頭より身体のほうが本体だったか」

「そういうことだっ! おらーっ! もうゼラムス様の命令なんてどうでもいいぜっ! てめえを粉々にしてやるぜーっ! くらえーっ!」

「うおっ!?」

「わわわっ!?」


 身体を丸めて岩石となったガンジョラがものすごい勢いで転がって来る。

 俺は咄嗟に焔ちゃんを抱きかかえてそれを避けた。


「シ、シルバーライトちゃんに触るなてめーっ!」

「このっ」


 俺は焔ちゃんに離れてもらい、岩石と化して襲い来るガンジョラを両手で受け止める。


「じょらーっ!?」

「これで終わりだっ! それっ!」


 俺はそのままガンジョラを持ち上げて上空へと放る。そして、


「すー……ごおおっ!!!」


 口から炎を吐き出す。


「じょらああああっ!!!?」


 業火を浴びたガンジョラは断末魔を上げ、そのまま完全に焼失した。


「今度こそ終わりだな」


 跡形もなく消え去った。

 今度こそ勝利である。


「やったぁっ!」

「ふわっ!?」


 焔ちゃんが今度は抱きついてくる。



 ――こんにゃろー!


 ――てめー!


 ――殺す!


 ――死ね


 ――おっさんさぁ……



 そしてやっぱりコメント欄は荒れに荒れた。


「な、なんかこれから大変なことになりそうだな……うん?」


 大阪1号が俺の側に来てライトを淡くチカチカ光らせる。


「お前からはフジの魂を感じる。気に入ったで」

「フジの魂? なんで?」

「なんでもや。これからよろしゅーな」


 なんだかよくわからないが大阪1号には気に入られたようであった。


 ……



 ……配信が終わって俺たちは雄太郎さんの家へと帰って来る。


 ガンジョラの頭を破壊したことにより子供たちの石化は解かれ、今回の件は一件落着となった。……のだが、


「なんかさぁ、ドラゴンブラックさんを出すなって動画のコメ欄とかSNSに書かれまくるんだよねー? なんでだろ? ドラゴンブラックさんちょー格好良いのに」


 シルバーライトの動画やSNSはめっちゃ荒れた。

 怪人はちゃんと倒したのにどうして……? なんて、気付かない鈍感は焔ちゃんくらいだ。どう考えても原因は俺と焔ちゃんの距離である。


 俺は嬉しいけど、距離感がめっちゃ近い。

 もしかしてお父さんかなんかと触れ合う感覚なんだろうか? それだと納得できるけど、ちょっと悲しい。


「たぶんまだまだドラゴンブラックさんの格好良さが知られていないんだね。よーしっ! ドラゴンブラックさんの人気を上げるために、もっともっと活躍してもらおうっ! 甚助さん、がんばろうねっ!」

「う、うん」


 活躍すれば活躍するほど焔ちゃんは喜び、その度に抱きついたりしてきてドラゴンブラックの人気は落ちていくような気がする……。


 それに焔ちゃんが気付くことは当分なさそうだった。

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