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第18話 ガンジョラの動きを封じる焔ちゃん

「んがあああっ!!!」


 そのすごいスピードを維持してバイクは走る。

 やがて前方へ大勢の姿が見えた。


「お、おい人だっ! 人がたくさんいるから止めろっ!」

「フジの豪速球は急に止まれんのやーっ!」

「ああもうっ!」


 俺は脚を伸ばして地面を擦る。

 スピードは少しずつ落ちていき、ようやくと止まることができた。


「死ぬかと思った……」


 もう絶対にターボは使わせない。

 これじゃあ背中の天国を堪能できん。


 それはともかく、


「なんか人がすごいたくさん集まってるなぁ」


 ダンジョンの一角には探索者たちがわらわらと集まっていた。


「そりゃそうだよ。日時と場所が動画の概要欄に書いてあったんだもん。野次馬も集まって来ちゃうよ」

「まあそれもそうか」


 焔ちゃんの言う通りであろう。

 到着した俺たちを野次馬たちは待ってましたという視線で見つめていた。


「おお、シルバーライトちゃんとトカゲマンが来たぞ」

「仮面ドラゴンブラックだろ。間近で見ると結構、怖いなぁ」

「シルバーライトちゃんは動画で見るより背が低いな」


 俺たちが歩き出すと野次馬たちは道を開く。

 その先に見えたのは……。


「うん?」


 1人はガンジョラという怪人。

 それを10人ほどのDGが囲んでいた。


「あー先にDG来ちゃったかー。まあそうなるよねー」



 ――そら怪人がここに現れますって動画の概要欄に書いてたらね


 ――自明の理


 ――けど子供が人質だし、DGも手出しできないだろ



 その通りで、あのガンジョラという怪人は石化された子供たちをいつでも破壊できるのだ。戦力で勝っても倒すことは難しいだろう。


「お、シ、シルバーライトちゃーんっ! 待ってたよーっ!」


 焔ちゃんを見つけたガンジョラが大きく手を振る。

 嫌みを込めて手は俺が振り返してやった。


「てめえに振ったんじゃねーっ! このトカゲ野郎ーっ! じょらーっ!」

「ああ、そうかい」


 動画で見た通り岩の塊みたいな怪人だ。

 あの見た目通りかなり頑丈なのだと思う。


「てめー待ってろよっ! こいつら片付けたら次はてめーだからなっ! じょらじょらじょらーっ!」

「……」


 奴を倒す作戦は焔ちゃんから聞いている。

 しかしうまくいくかどうか……。


「この怪人っ! 子供たちを元に戻して投降しろっ!」


 DGがガンジョラの投降を促す。

 しかし無駄だろう。


「いやーだよ。つーか、てめえら如き倒すのに人質なんて使う必要もねーの。人質は使わねーから遠慮なくかかってこいよなー」

「このっ! だったらっ!」


 DGのひとりが斧を振り上げ、ガンジョラの頭へ落とす。……が、


「なっ!?」


 ガンジョラはビクともしない。

 ヘラヘラ笑いながらそこに立っていた。


「おいおいなんかしたかー? 痛くも痒くもないぜー。じょらじょらじょら」

「な、なんて頑丈な奴……っ」

「じょらじょら。ほら仕返しだっ!」

「うごぁ!?」


 ガンジョラは身体から取った岩を投げつける。

 それを当てられたDGは壁際まで吹っ飛ばされた。


「クソっ! 一斉にかかれっ!」


 DGが一斉攻撃を始める。

 しかしダメージを与えることはできず、ガンジョラはただ笑っていた。


「じょらじょら。DGなんてこのガンジョラ様からすれば子供も同然だぜ。くらえぇっ! じょらーーーっ!」

「ぐわあああっ!?」


 ガンジョラの吐いた灰色の息がDGたちを石化していく。

 そして全員が石にされてしまった。


「DG10人が簡単にやられちまった……」

「あいつふざけた奴だけど、めちゃくちゃつえーぞ」


 俺も同じ感想だ。

 DGになれる奴は下層の強力な魔物も倒せるような奴ばかりだ。それを10人相手して余裕で倒せるのはかなりの強さだと思う。


「さーて、次はお前だぜトカゲ野郎」

「石っころにトカゲ呼ばわりされたくないな」

「んだとこの野郎っ! てか、シルバーライトちゃんから離れやがれっ!」

「嫌だ」

「こんの野郎っ! 食らえっ!」


 ガンジョラは自分の身体から岩をとって俺へと投げつける。

 しかし当たっても俺の身体には傷ひとつつかなかった。


「むう、さすがはブラックドラゴンの改造人間か。この程度じゃかすり傷ひとつつかねーな。けどてめえは俺に攻撃ができねーぜ。少しでも攻撃しやがったら、石化したガキどもはみんな粉々だからなーっ! じょらじょらじょらーっ!」



 ――おっさん大ピンチ!


 ――どうすんだ?


 ――まあシルバーライトちゃんは大丈夫そうだし安心して見てられるわ


 ――おっさんはおしまい


 ――これおっさんも石化するだろ



「しかし痛めつけてやろうと思ったが、これじゃあ難しいな。しかたない。コメントの期待に応えててめえを石化してやるぜっ! そんで捕まえてやればゼラムス様もお喜びだぜっ! じょらじょらっ!」

「ちょっと待ってっ!」


 と、そこで焔ちゃんが声を上げる。


「えっ? ど、どうしたのシルバーライトちゃん? 今からこんなトカゲ野郎は石化して、君の目を覚まさせてあげるから……」

「ガンジョラさん、わたしと握手しませんか?」

「あ、握手っ?」

「そう。しかも両手で」

「うおおっ! シルバーライトちゃんと握手できるなんて最高だぜーっ!」


 飛び上がって喜びを表したガンジョラは、ズシズシ歩いて焔ちゃんのほうへ行く。


「じゃあ両手で握手ね」

「うんっ!」


 差し出されたガンジョラの両手を焔ちゃんが掴む。


「ふふ……ドラゴンブラックさんっ!」

「おうっ!」

「えっ?」


 今ガンジョラの両手は握手で塞がっている。

 つまり額の窪みを押して石像の破壊はできないということだ。


「シ、シルバーライトちゃんっ!」

「あれ? 手、離しちゃうの?」

「うおおっ! 離さなきゃいけねーのに離せねーっ! 握ってくれたシルバーライトちゃんの手を離すなんてできねーよぉーっ!」


 嬉しそう喚くガンジョラ、

 チャンスは今しか無い。


 口から火を吐いたときのように、何か特殊なことがやれそうな予感がして俺は離れた位置から拳を引く。


「シルバーライトちゃん離れてっ!」

「あ、うんっ!」


 俺の言葉で焔ちゃんがガンジョラから離れる。それと同時に俺は引いた拳を突き出した。


「こ、このっ! 頭のボタンを……うおおっ!?」


 突き出された拳から鱗が1枚剥がれて飛び、それが横に回転しながらガンジョラの頭へと向かって行き、


「じょらーっ!!!?」


 ぶつかってガンジョラの頭を粉々に砕いた。

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