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第11話 ひとりで配信は不安

 焔ちゃんから配信のやり方を聞いた俺はひとりでダンジョンにやって来る。変身後のことも考えて、着替えもちゃんと持って来た。


 しかし不安だ。

 焔ちゃんから頼まれた以上やるしかないが、ちゃんとこなせるか心配だった。


「それにしても……」


 俺がダンジョンへ来れるようになるなんて。


 適性がゼロの俺は一生ダンジョンへ来ることなどないと思っていた。

 それがこうして魔物化もせずダンジョンにいる。


 嬉しいのかそうでないのかはなんとも言えないけど……。


 と言うか、魔物化していないというのも違う。

 変なトカゲ……じゃなくて、ドラゴンの怪物にはなってしまったし。


「あっと、もうそろそろ10時だな。変身をしておかないと」


 周囲には誰もいない


 配信を始める前に変身を……と思ったけど、


「どうすれば変身ができるんだ?」


 昨日は変身しようと思ってしたわけではない。

 どうやって変身をすればいいのか、よくわからなかった。


「うーん……あ、そういえば雄太郎さんが……」


 戦いの興奮がどうとか言っていたか。


 つまり戦いが始まらないと変身はできないのか。


「じゃあ魔物でも探すか」


 魔物と戦って興奮をしようと、俺は魔物除けのお香を消してそこらを探してみる。


「おっ」


 イノシシの魔物がうろついている。


 俺が近づくと、敵意を向けて睨んできた。


「よ、よーし。むんっ。……あれ?」


 魔物と向かい合うも変身ができない。


「ど、どうして……うわぁっ!?」


 魔物がこちらへ突撃してくる。


 これは逃げなければと俺は慌てて走り出す。


「な、なんで変身ができないんだ? あ、いや……」


 魔物と対峙するだけじゃダメだ。

 戦うぞ。倒してやるぞって言う気持ちを高めなきゃダメなんだ。


 逃げていても変身などできない。


 走る足を止めた俺は突撃して来るイノシシの魔物と、仁王立ちで向かい合う。


「こいっ! お前を倒して……うっ」


 心臓が熱い。

 この感覚は……。


「ぐおおっ!?」


 突撃してきた魔物を片手で受け止める。

 その手は黒い鱗に覆われていた。


「よしっ! 変身成功だっ! うおおおっ!」


 反対の手で魔物を殴りつける。


「ぐぎゃっ!?」


 一撃で魔物の頭は潰れ、その場へと倒れた。


「ふう……」


 死ぬかと思った……。


「しかし怖い見た目だなぁ」


 スマホのカメラで自分の顔を映して見る。


 竜の顔を無理やり人間にしたような顔だ。

 全身のほとんどは黒い鱗に覆われており、どこからどう見ても怪物であった。


「こんな格好でうろうろしてたら、デッツの怪人として通報されちゃうよ」


 滅多に人が来ない場所を焔ちゃんが教えてくれたから、誰かに見られる可能性は低いかもしれないが、やっぱり不安だった。


「あ、もう10時まで5分もないぞ。急がないと」


 俺は焔ちゃんから預かった撮影用のドローンを飛ばし、スマホを手に持つ。あとは配信開始をタップすればいいだけだ。


「き、緊張するなぁ」


 陰キャ歴30年の俺が配信とは言え人前で話をするなんて。

 しかも大人気配信者シルバーライトの前座だ。緊張しないわけがない。


「あ、あと1分……」


 スマホを持つ手が震える。

 やがて配信開始の時間となり……。



 ――お、始まった


 ――おーっす


 ――トカゲのおっさんキター!


 ――シルバーライトちゃんの代役がおじさんとか草


 ――なんだこのおっさん?(3回目)


 ――こんスパ【青スパ200円】


 ――こいつトカゲみたいな顔してんな



 始まった瞬間に昨日と同じくコメントが滝のように流れていく。


 これを拾って答えて行くのは大変そうだ。


「え、えーっと、こんにちは。今日はシルバーライトちゃんが急用なので、急遽、前座を頼まれました。よろしくお願いします」


 緊張しつつまずはあいさつをする。


「SNSでも告知があったと思いますが、シルバーライトちゃんが来るまで質問に答えようと思います。全部は無理なので答えられるものだけで」



 ――名前教えて



 名前を教えてほしい。

 そんな質問がたくさん書かれていた。


 もちろん本名を言うわけにはいかない。

 と言うことは……。


「な、名前はえっと……か、仮面ドラゴンブラックです……」



 ――仮面ドラゴンブラックwww


 ――安直で草


 ――そのまんまじゃん


 ――もっとこう……なんとかならなかったの?


 ――てかドラゴンだったの? トカゲじゃなくて?


 ――トカゲのおっさんでいいやん



 焔ちゃんがせっかく考えてくれたのに散々な評価である。

 ……まあ俺も安直だとは思うけど



 ――年齢は?



 次に多かったのは年齢である。


「年齢は30歳です」



 ――やっぱりおっさんやん


 ――いや、30歳はおっさんじゃないだろ


 ――↑おっさんおつ


 ――30歳とか鼻たれ小僧だろ


 ――おっさんだろ……。ここおっさん多過ぎ



 コメント欄で30歳がおっさんかどうかの議論が始まってしまう

 俺としても30歳がおっさんなのかは微妙に思うところだ。



 ――てか見た目はめちゃくちゃ怖いのになんか普通だなw


 ――どこにでもいる人みたい


 ――外見とのギャップがすごい


 ――おっさんとシルバーライトちゃんってどういう関係なの?



「関係は……と、友達ですかね?」


 他に思いつかないのでとりあえずそう答える。



 ――シルバーライトちゃんって10代後半くらいでしょ? 30歳のおっさんと友達とかあり得なくない?



「そ、それはその、まあいろいろあるというか……」



 友達はまずかったか。

 しかし他に答えようもなかった。



 ――これからもシルバーライトちゃんと組んで動画配信するの?



「まあその予定みたいです」



 ――ええ……。おっさんとかいらないんだけど


 ――30歳はおっさんじゃないっての


 ――おっさんとか以前に男はいらん


 ――いやこのおっさんは必要だろ。シルバーライトちゃんの安全のため


 ――おっさん必要派といらない派でファンが分裂しそう



 なんかコメント欄が荒れだしたな。


 まあ俺もシルバーライトちゃんのファンだからわかる。

 いくら強いとは言え、シルバーライトちゃんの動画に男が出るのは普通に嫌だ。しかしこれは焔ちゃんを守るためだし、必要だとは思う。



 ――おっさんはデッツに改造された怪人なの?



「えーっと……」


 これはどう答えたものか難しい。

 イエスと答えれば危険人物として認識されてしまうかも。しかしノーと答えたら、じゃあどこで誰に改造されたのかとなって、答えに窮することに……。



 ――本当の怪人じゃないでしょ。S級以上の探索者が怪人の振りしてるだけの演出


 ――デッツに改造された奴だったらヤバいだろ。怪人に見えるのは動画の演出だって


 ――そうなの?



 そうだと答えるべきか?

 けどS級以上の探索者ってそんなに多くはないし、あとで面倒なことになりそう。


 なんと答えるべきか?


 答える言葉を慎重に考えていると……。


「デッツに改造された極悪な改造人間に決まってるだろ」

「えっ?」


 近くから誰かの声。

 そちらへ振り向くと、そこには薄ら笑いを浮かべる相良。そして仲間の女2人が立っていた。

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