06:3年の年月
とても充実した3年間だったわ。一度健康を取り戻した私の身体は、思っていた以上に丈夫だったの。この3年間一度も熱を出していないのよ。たくさん遊んでたくさん本も読んで、たくさんお勉強もしたわ。
そしてお友達も何人かできたの。
その中で1番、と言っていいかしら。仲がよくなったのが、クレヴェンティエ公爵家の末息子フィンレー様よ。私より3つ年上のフィンレー様は、公爵家の別荘で開かれたお茶会で会って以降、夏も冬も欠かさず、このベロムへ来ている。別荘に滞在している間は2日と空けずに会っているのではないかしら。
今ではお互いをフィン、モニと呼ぶほどには親しくなっていて、すっかり友人と言っていいわね。でもね、3つ年上で私よりうんと背が高いとは言っても、まだ12歳。幼いでしょう、つい子供を見る目になってしまって。だって以前の私は婚約者もいる18歳の大人だったのですもの。
今年の夏もベロムに来ることは決まっていて、それもあと数日先のことらしい。先日届いた手紙にそう書いてあったの。~この手紙が届いたら出迎えの準備をしておいて~ですって。ああ楽しみだわ!
王都の家族とも、もちろん手紙のやり取りをしている。もうそれは頻繁に。
お父様もお母様も私がすっかり健康になったことを最初は信じられなかったようだけれど、とても喜んで下さった。初めて私が送った手紙を見た時は3人ともあまりの驚きで大騒ぎになったそうよ。ふふ、お母様が騒ぐ姿なんて想像できないわ。その場に私もいたらもっとよかったのに。
1日も早く会いたいが、元気でいることがそれよりも嬉しいと毎回書いてくれる。もちろんミシェルとも同じだけ手紙を交わしている。王都からの手紙は3人分がひとつの封筒で届くの。私はお返事を3人に書かなくてはいけないから大変よ。でもこんなに幸せな大変なら大歓迎。
ミシェルは変わらず女学校に通っていて、王都で流行の話をたくさん書いてくれる。学校の帰りにお友達と寄り道をすることもあるのですって。お母様と一緒に新しいドレスを選んだと書いていた時は、自分のことのように嬉しかったわ。以前はそんな余裕はまるでなかったのですもの。
そのミシェルが、アレン様とお会いした話を書いて送ってきたのは、私がアレン様にお会いした時期よりも少しだけ早かった。そうね、1年半ほど早いのではないかしら。お父様とお母様、3人揃って出席した夜会で初めて顔を合わせたのですって。それはミシェルにとって正式な社交デビューの日でもあって、忘れられない体験をいくつもした日だったと、何枚もに渡って書き綴られていた。
以前はお父様と私がレドイール家を訪ねたの。以前とは多少の違いがあっても、やっぱりミシェルはアレン様と結ばれるのね。アレン様はとても良い方だから心配はないわ。正式な婚約を結ぶのはミシェルが18歳になってからになるでしょう。その後のことはわからないけれど、きっとそう遠くない時期に2人は結婚するのだわ。そうね、3年先ってところかしら。2人の結婚式までには王都に帰らないと。アレン様、今度はお義兄様と呼ぶことになるのね。決して寂しく思ってはいないわ。本当よ。
だってね、今の私には夢があるの。
王都に戻って、看護の勉強がしたい。ミシェルだった頃には考えたこともなければ、叶うこともなかっただろう夢よ。モニクになって初めて気がついたの。今、私がこうして元気に過ごせているのはベロムの空気が私に合っていたということが一番大きいのだろうけれど、お医者様の存在も決してゼロではなかったわ。私がミシェルだった頃のモニクは何人ものお医者様が懸命に病因を突き止めようと、尽力して下さった。いつも側で見ていたからよく知っている。
女学校に通ってたくさん勉強して、看護学校へ行きたいの。どうかしら、この夢は叶うかしら。
恥ずかしくてまだミシェルにも話していない私の夢。
努力するとここに誓うわ。だって叶えたいもの。この人生は納得のいくものでありたいと強く思うから。




