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15:決着のために

今になって思い返せば、私が酷い発作のような高熱を出す時にはたいてい理由があった。

楽しいことや、嬉しいことがある前後だったもの。


全てコントロールされていたのね。私がはしゃぎすぎたら戒めるように薬を与えられていたのだわ。


どうして。

もううんざりするほどこの言葉だけが浮かんでは消え、また浮かんでくる。


何度考えてもその理由だけがわからなかった。

優しい大好きなお母様。もしかしてモニクのことが嫌いなの?ううん、私だけじゃなかった。ミシェルは私よりも重い症状のようだから。


私は大人たちとフィンが話を続けている側で、ぼんやりと呆けていた。何が何だかさっぱりわからなくて。



明朝おじい様とフィンで毒草の処分に向かうことになった。できるだけ少ない人数で処理する必要があるから。私は邸でお医者様からもう一度診ていただくよう命じられて、おじい様とフィンが出掛けていくのを見送ったわ。


お医者様に診ていただくのも久しぶりのこと。私はここ何年もとっても健康だったから、今更心配なんて何もないのだけれど。お医者様は聴診器を当てたり喉を覗き込んだりした後、少し血を抜かせてもらいたいと仰った。もちろん構わないわ。調べてくださるのだもの。


今日できることが全て終わるまで、ずっとおばあ様が側にいてくださった。そんな心配そうな顔なさらなくていいのよ。おばあ様だって知っているでしょう?私が毎日どれだけ元気に駆け回っているかを。


小瓶に詰めた私の血液を大切に鞄の中にしまうと、お医者様は「わかり次第報告に参ります。」と言って邸を後にした。


それからどのくらい経ったかしら。フィンとおじい様がようやく帰ってきて、私はひどく安心したの。

2人は少し土で汚れていたわ。全部の草を引き抜いて、それから穴を掘って草を詰めて燃やしたのですって。燃やした空気を吸ってはいない?私は2人のことがとても心配だったけれど、きっとそんなことはちゃんと計算の上で処理したに違いないのだから。


私の心配をよそにおじい様もフィンも「こんなに腹が空くほど働いたのは久しぶりだ。」なんて笑いながら食事を頬張るもの。きっと何の問題もなかったのね。


4人での昼食を終えると、部屋の中にはまた私たち4人だけになった。

おじい様が使用人を全て下がらせたの。これから大切なお話しがあるのね。


「モニク、私は明日王都へ発とうと思う。娘のしでかしたことの始末を付けなくてはならないからね。モニクはここでばあばと待っていなさい。よいね?」


はい、わかっています。お母様はやってはいけないことをしてしまったの。私が元気になったからと言って許されることではないことも理解している。国の掟を破ったのですもの。

「わかりました。おじい様がお戻りになるのを待っているわ。」


おじい様はうんうんと頬を緩めて下さる。おじい様もとてもお辛いはずなのにね。おばあ様は目が赤い。


私はおじい様の本当の辛さも、おばあ様が目を腫らしている本当の理由もこのときは正しく理解できていなかった。おばあ様は2度と自分の娘、私のお母様に会えないことを既に悟っていたのだ。この時私もそれに気がついていたら、なんとしても一緒に王都へ向かったのに。


おじい様は今日中に領地のことをできるだけ片付けると言って、席を立たれた。


「あなた達は普段通り過ごしなさいね。」

そう言っておばあ様はご自分の部屋へ戻られた。


その場に残ったフィンと私。普段通り、急にそれが何のことなのかわからなくなって。

先にフィンが立ち上がった。

「モニの客間に行こうか。ここじゃなんだか落ち着かないだろう?」


そうね、もう今からじゃ遠出も無理ですもの。今日は邸の中で過ごしましょう。

そこで私はもうひとつ思いがけないことを聞かされることになった。


「僕もベロム伯爵と一緒に王都へ行ってくるよ。全て見届けてくる。夏が終わるまでには戻るから。」

まさかフィンまでが王都に行くとは思ってもいなくて、私はとても驚いたの。

だって一緒にいてくれると思っていたのですもの。ええ寂しいの。酷く寂しいのだもの。


「泣かないで僕のモニ。僕はモニの身に起こった全てを知りたいんだ。君がどんなに辛い思いをしてきたのか、どうしてそんな目に遭わなければならなかったのか、全てをつまびらかにしてみせるよ。」

フィンのことがとても頼もしく見えたわ。今までどこか可愛い弟のような気持ちが抜けきらなかったというのに、急に大人びて見えるのだから。


「うん、もう泣かない。私ね、昨日から何遍も何遍もどうして?って言葉ばかりが浮かんでいるの。お母様に直接会って聞きたい。でもね怖いの。私のことが嫌いだからって言われるのではないかと、だって大好きなんですもの。」


フィンはポケットからハンカチを取り出すと私のほほを優しく拭いてくれた。

「泣き虫モニも可愛いよ。今はたくさん泣いていいから。強がらないでいいんだよ。」


うん。泣かないって言った側から涙がぽろぽろこぼれ落ちるのだもの。泣き虫よね。

フィンの許可をもらって、私はもう一度思い切り泣いた。


ありがとう。せっかくの休暇を私のために使ってくれるのだもの。我儘は言わない。戻ってくるのをベロムで待っているわ。そして隠さずに教えてね。お母様が私のことを憎んでいるのだとしても。心の準備をして待っているから。

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