第66話 ぶつかり合う意思
「第3、第4ブロック突破されました!
リンドウ司令官、このままでは」
「これ以上敵が入らぬよう、通路を爆破。
落としてください」
「そ、それでは私達の退路は……分かりました。
最期までやりましょう!」
伊忌島陥落はもはや時間の問題という最中。
島上では、海風が吹き抜けていた。
その風の中、彼らは対峙している。
「本当に、しつこいな。ラインハルト…!」
「てめえこそ、ガキにしては根性あるじゃあ……ねぇかッ!」
ハリヴォロスが一気にアマテラスへ向かって距離を詰める。
「はやい!」
「そらそうよ!小細工なんてぇモンは無ェ!」
連結された斧を振り下ろすが、ヒヅルも間一髪避ける。
……が、回避を読まれて思い切り蹴りがブチ込まれる。
受け身を取るものの、すぐ下ろされる刃にセイバーで対抗する。
「さっさと死にな!ちっぽけな正義を抱えながらよお!
誰のために、何のために戦ってるかも分かってねえガキが!」
何の……ため。
最初は家族の復讐のためだった。
でも、みんなの言葉を聞いて僕は…。
「 僕は、この国を守り照らす希望になりたい!そう思った!」
「それが甘くて、ガキだって何度言ったら分かんだテメェはよお!」
ヒヅルは、片手しか無いアマテラスが押し切られる前に、後ろに飛ぶ。
飛びながら日照を構える。
それに対しハリヴォロスも肩アーマーを展開して、機関砲を撃ちまくる!
「くっ、、、!」
日照に命中し、2砲門とも爆発前にパージせざるを得なくなる。
「でも今は!
この瞬間も戦争で亡くなる人達を、1人でも減らしたい!
この世界を守れれば!」
左手を振りかぶり、斬るフェイントからハリヴォロスの腹を思い切り蹴る。
反応できず、直撃が入る。
「がぁッ.....ッッッ.!ガキがナマ言ってんじゃあねえ!」
ハリヴォロスの頭突きにより、両者のけぞる。
「守るだあ?
国を守ってなんになる!必死に戦って!守って!
それでてめえは最も大事な人を守れんのか?
どうなんだよ!」
その言葉には、今までのナメた態度や余裕ではない、強い恨みと怒りがこもっていた。
「ヒヅル!クルゾ!」
「分かってる!!」
機関砲の雨を、即座に空へ逃れる。
「どれだけ国に尽くそうが!己の命を賭けようが!
国が兵士達の大事なモンや人を守ってくれんのか!?いーや違うなあ?」
投げられた片方の斧が、アマテラスのウィングを捉え突き刺さる!
「ウィングスラスターパージ!機体ヲ軽クスルゾ!」
ラインハルトの言葉に、ヒヅルは怒りを覚えていた。
そんなのは、ただの八つ当たりではないか。
「だからお前は九重を裏切り、滅ぼすと!」
「そうよ!それが俺よ!
何もできねえ弱い国は奪われるだけだろうが!!!」
怒りに、手が震える。
体が勝手に動く。
脳が止まる間もなく、再び彼に切り掛かる。
反射で動くその体は、低姿勢からハリヴォロスの片手前腕を切り飛ばす。
そのまま跳躍し、顔面に蹴りが炸裂する。
「沢山の人が殺されたんだぞ!お前が"ゲーム"と呼ぶ八つ当たりのせいで!
お前が過去にぶつかる意思がなかったために!
悲しむ人間が沢山いて、何とも思わないのかよ!!」
「分かったら何なんだよ!変わんねえよ!!」
再びセイバーとアックスで殺陣が始まる。
そうだ。この男は、過去に大切な人を失ったことから立ち直れず。
今もその八つ当たりをしているだけなんだ。
「そんなんてめえも同じじゃぁねえか!
そうよ。俺とお前は変わらねえ、結局自分のために戦ってるだけだ!
これっぽっちも大差ねえだろうが!!」
過去の自分を思い返す。
そうだ、確かに。
あの時までは、家族の復讐のために帝国を滅ぼそうとした。
希望になると言う、自分のためでしかない理由だけで戦おうとした。
でも、今は違う。
自分のように誰かを失う人を無くしたい。
誰かのために戦いたい。
本気でそう思っている。
刃を躱し、弾いては互いに決め手が入らない泥沼の戦いが続く。
「……ラインハルト。お前は哀れだ」
「よく聞こえねえなぁ」
「お前は哀れだ!
過去から立ち直れず、引きずったまま!
生きてきたその姿が!
本当はそれに気づいて、責任から、自分の人生からも逃げてるだけのくせに!」
ラインハルトがより強く、歯を食いしばる。
それはまるでうなりを上げる狼のような形相だ。
「この俺を、この世界を分かったつもりかあ?たかが十数年しか生きてねえ野郎がッ!
思い上がるんじゃあねぇーーーーッッッ!!」
ラインハルトがついに押し返し、拳と蹴りを入れヒヅルを吹き飛ばす。
その衝撃で、ラスト1本のビームセイバーから手を離してしまった。
自ら斬り落とした右腕を眼下に、空を放物線を描いて飛んでいく。
「うぐッッッ……過去に、お前に向き合って。少しは分かるさ。
じゃなきゃ……お前は今頃、敵味方構わず弾を当てたり、味方ごと僕を撃ち抜いていたり
しただろうさ。
本当は身近な誰かの死なんか、もう見たくも無いのが!!」
ふらつきながらも着地をする。
左前に、アマテラスの右腕だった鉄塊がしっかりとカービンを握りしめて転がっている。
「口は達者だが。
もうお前さん、絶望的なんじゃあねえか。
その馬鹿でかいビーム砲一本、他に武器もねぇのによ」
「……まだ、あるさ」
「あぁ?」
「お前に無くて、僕にあるものが!!」
島上に海風が吹き抜ける中、両者は睨み合い、動きを止めるのであった。
【ライナーノーツ】
1 タイトル元ネタ:「ぶつかり合う魂」→遊戯王の魔法カード。
2 機体について




