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輪廻創世 アルヴァーナ  作者: ひやニキ
Chapter6 氷原のスター・フィールド
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第93話 冷たい群体鳥

「西の平原からリペアされた混成部隊!?」


ミランダが怪訝な声を上げる。

幽鬼のように成り果てた味方の機体が混じっているその様子に、ブリッジの一同が不気味さを覚える。


「空は新型の機影あり。やっぱり私も出ます!

ヒヅルを助けに行かないと!」

「…………。!!待ち給え、フィリス!」


目をつぶって何かを考えていたジェイが突然に声を上げる。

ただならぬ戦闘状況から、老練な彼は何かを察知したのだろうか。

緊張の糸が張り詰める。


「出撃はまだだ、乗機にて待機。出撃準備中のジェゴ隊もだ。

キャッフェ、CICを交代してやってはくれぬか」

「はいはい分かってるわよん、オジサマ」


キャッフェが気だるそうに席に着く。

ジェイは鋭い眼光でミランダに振り返る。


「艦長、この周辺のマップを出してはくれぬかね」




「さーて、敵さんはどうかね。レイブン君」

「囚人部隊と交戦開始。機体はバツ付きと狼、そして新型ですね。

日本のサムライに酷似しています」


カンナギから南の森林地帯。

ホーセズが本隊を隠しながら、ヒヅル達の様子を観察してる。


「西を回って攻撃すれば、帝国本土がある西から部隊が来ると思うだろう。

まさか南から撃たれるとは思うまいよ。

次、ロプス隊!遠距離狙撃で狙い撃ってやれ!

エンジン部をぶち抜いてやりな!

……ん?どうした、レイブン君」


一番の部下の顔を見やると、未だ複雑な感情が顔に張り付いている。

双眼鏡も、強く握りしめている。

作戦に異があるのか、それとも自分が前に打って出られない歯がゆさなのか。

ホーセズにはその心中が察せない。


「確かにあなたは身分の違いやレッテルなど気にしない。

ゆえに、孤児であった私も引き取っては育て、そして騎士にまでしてくださいました。

しかし、やはり残虐な重犯罪者を使うというのが、騎士として正しい精神なのでしょうか」


若い。

その一言だけをホーセズは思うばかりであった。

戦争には最低限のルールはある。逆にそれ以上はない。


「騎士道精神の高潔な戦い方は、私も好きだがね。

だが、それで部下を守れなくて何が将の器かね」


若者には甘言。

今はそう言っておけばよいのだ。

そう、今は。




カンナギ上空のアマテラスに、ついばみ群れるようにバーロックが襲い来る。

ヒヅルが次に振り向くと、巨大な影がクローを広げ襲いかかってきた。

オーガルドとバーロックを組み合わせたような、グロテスクな影。


「脚ならこっちだってッッッ!!」


すかさず、くるぶしから伸びる脚部ナイフを前方へ展開。

関節部を狙って蹴り上げる!

更にそのままの勢いで空中でクルリと周り、ビームブーメランを下方を飛ぶ別機体に投げ当てる。


「2機、撃墜!ガアッッ……!」


不意に背後から衝撃を食らう。

早い!新型か!


「他2機、散開!上下左右から囲い込め!

グレイ・エンジェルのスピードで撹乱する間に撃て!」

「あいよ、軍人サン!」

「三度の飯より殺し、ってね」


右手にレイピア、左手にショットガン。

4枚の大型ウイング、前腕と脛部にバーニアを持つ機体が仕掛けてくる。

外見から、ビスクドールの空中戦発展機か。



「ヒヅル、バスターソードダ!」

「勿論!リィロン、奴のショットガンの射程だけ計算お願い!」


レイピアの突きを、左の背から抜いたバスターソードで弾く。

その間に別小隊と散開した2機がマシンガンを仕掛けてくる。

多勢に無勢、加えて思った以上に新型機が強い。


どうする、どうするヒヅル……!


【ライナーノーツ】

1 タイトル元ネタ:邦画「冷たい熱帯魚」。現実の事件を元にしたエログロ映画なので気になっても心臓の弱い方は調べない方がいい。

2 機体について:グレイ・エンジェル→灰色の天使。ドールが生命を持ち、薄汚れた天使に。


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