表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/64

犠牲と、罪状



前回同様、胸糞・グロ要素が含まれています。

生々しい描写はしておりませんが、苦手な方はご注意下さい。




  *


『実験からアイデアを得た私は、【疑似子宮】の魔法を安全で効率的な形に改良する事に成功した。子宮を作る位置を調整し、出産用の孔を別に作成する術式を組み込んだのだ。これで家畜の死亡率は大幅に低下し、国の機関で認可を受けてこの魔法は国中の畜産農家で無事使用される運びとなった』


 自分達の乗る馬車の馬が、普段口にしている肉が、このような実験の果てに開発された術式を使って生産されたものかも知れないという事実に、王子は吐き気を催した。しかしシルヴィアの手前、醜態を晒す訳にはいかないと、必死で胃の痙攣を抑えて唇を引き結ぶ。


 しかしながらアクアの告白はこの程度で止まるものでは無かった。


 ──アクアの犠牲となった生徒は八人いると、彼は言った。先程の【疑似子宮】の男子生徒はまだ三人目なのだ。


『次の生徒も男子だった。私は彼に【乳房生成】の魔法を施した。これも雄で成功すれば乳の増産が見込める魔法なのだが、研究が行き詰まっていたのだ。結果、その男子生徒の胸の筋肉はズタズタになったが、そのお陰で私は改善点を発見することが出来たのだ……』


 それからもアクアは次々と罪を告白していった。


 五人目の女生徒は、乳房の数を増やされた。増えた分の乳房は後で切除したものの、乳腺が歪つに広がり肉を引き攣らせ、痛々しい痕が残ったという。


 六人目は子宮を増やされた。体内に三つ作られた疑似子宮は内臓を圧迫し、また皮膚や筋肉は急激に膨らむ子宮に無理矢理に引き延ばされた。腹どころか背中まで至る醜い肉割れは何をしても消えず、また圧迫された臓物が骨盤を歪ませ、彼女の下半身を無様な体型へと変貌させてしまった。


 七人目は鶏の卵を産めるよう体内に鶏の器官を移植された。一つの家畜から乳も卵も採取出来るならば便利だろう、という考えの元に研究された魔法らしかった。結論から言えば、彼女は一人では何も出来ない身体になってしまった。腐った食品を摂取したかのような酷い嘔吐下痢を発症したのち、段々と手足が動かなくなっていったのだ。何をしても萎えた手足は力を取り戻せず、ついに彼女は寝たきりとなってしまったそうだ。


 ──そこまでの話を静かに聞いていたアメリアは、無言で頷くと少しだけ瞳を伏せ、そしてゆっくりと目を開いた。その紅い瞳はいつもと同じく凪いではいたが、少しだけ、ほんの少しだけ憂いと哀しみにも似た揺らぎが見えたように、ゴールディには思えた。


『さて、アクア・マリーネ。それでは最後の一人、……アズラ・ライトの件についてお聞かせ願えますか』


 アメリアの声が静かに響く。


 ああ、とスティールは溜息をついた。アズラ・ライトとは先日、校舎の尖塔から飛び降りて死んだ女生徒の名だった。


 彼女の遺体は異様だった。校内で最も高い場所から地面に叩き付けられた所為で身体がバラバラに砕けていたのは当然として、血肉や臓物以外に気味の悪い白く蠢く何かが大量に周囲に飛び散っていたのだ。


 それを目にした者達は皆、彼女が特殊な病気に冒されていたか、はたまた奇妙な呪いを掛けられていたのではないかと噂した。


 ──しかし裏の事情を知る者達は、それらとは異なった見解を持っていた。


 つまり、魔法研究の実験台にされたのでは、というものだ。


 スティールはアクアのそれまでの妖しい噂を聞き及んでおり、アズラ・ライトの件もアクアが関わっているものと睨んでいた。それで独自に調査を進めていたのだが、どうやらアメリアも同じ事を考え、同じ結論に至ったのだと得心した。


『さあ、──己の罪を述べるのです。偽ることなく、──全てを此処に』


 アメリアの美しく澄んだ声は、総てを見守る女神の如く厳かに、響き渡った。


  *





お読み下さりありがとうございます。

クズ教師の告白、続きです。

全員分の内容を考えるのは少し苦労しました。でも苦労の甲斐あってか、割とリアリティある物を思い付けたのではないか、と我ながら思っています。


七人目の掛かった病気はギラン・バレー症候群ですね。鶏の器官を体内に植え付けられたので、カンピロバクターなどの菌に冒されたのが原因かと。

この世界では前にも述べた通り医療は発達しておりませんので、菌やウイルスといったものも当然知られてはおりません。ですのでそういったものが由来の病気は謎のまま、瘴気などが由来だと考えられています。


次回もお楽しみに、なのです。


宜しければご感想やご意見など頂けるととても嬉しいです。

またブックマークや★評価、いいねなどで応援して頂けると励みになります。

どうぞ宜しくお願い致します。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです! [気になる点] 人体実験やりすぎな件と、失敗しすぎな件。 [一言] 『身体の要求』だけでもガッツリゲス教師で、嫌悪感は充分かと。 『人体実験』はメインだけで良かったのでは。 …
[気になる点] 落ちこぼれで下級貴族の子女とはいえ、複数人が不具者となっていれば流石に問題になるのでは? 強固な後ろ楯がいたのでしょうか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ