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魔法使いの召喚詠唱  作者: 煙草の吸い殻
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02話

 2階から校庭を眺めていると、年下の子達が登校してくる。

 私達…私とアリスちゃん以外には、2グループある。

 どっちも4人ずつで、みんなでワイワイしながら登校している。アリスちゃんと二人だけで登校するのも楽しいけど、ああやっていろんな人と話しながら登校するのも楽しいんだろうな、なんて思うこともある。去年までは上の学年の人がいたから、もうちょっと賑やかだったんだけど。

 …なんて、言ったら北小学校の子達に笑われちゃった。

 北の子達からしたら、4人なんてのも少ないらしい。

 私は生まれた時からここに通ってるから、4人も集まれば十分賑やかなんだけどな。


 だけど、別にアリスちゃんとの登校が不満なわけじゃない。

 1人で登校してた時よりは勿論楽しいし、アリスちゃんの話は面白い。一緒に過ごしてるはずなんだけど、見えてるものが違うのかな。って思うくらいいろんなことを発見する。

 それを全部私に教えてくれるから、アリスちゃんが楽しいことは私も楽しい。

 アリスちゃんに会えてよかったな、と思ってる。


「ゆいちゃーんっ!」

「んえっ」


 不意に背中から抱きつかれる。当然この教室には私の他はアリスちゃんしかいないから、アリスちゃんだ。

 突然抱きつかれたり、驚かされたり。そんなことをアリスちゃんがよくやるから、私もつられてアリスちゃんにいたずらしたりするようになる。今朝、玄関で仕掛けたいたずらだって、最初はアリスちゃんにやられたから。


「なんか、"たそがれ"てた?」

「ん?アリスちゃんに会えてよかったな〜、なんて」

「ん、私も!」


 と、笑顔で返すアリスちゃん。

 こっちもつられて笑顔になる。影響されやすいな、なんても思う。

 けど、今は私、それで楽しいからいいかな、って。


「新学期で"なーばす"になってたの?」

「なーばす…?」


 アリスちゃんの好奇心?はいたずらだけじゃなくて、なんでもに向けられる。

 アニメ、漫画、小説、スポーツ、ゲーム、他にも、料理とか裁縫まで、なんでもだ。

 だから、時々私の知らない言葉を使う。使い方も意味もわからないし、アリスちゃんもわかってるか怪しいけど。


 そのまま他愛のない話、昨日見たテレビとか、宿題の話とか。6年生の勉強の話とか。

 そんな話をしているうちに、ちょっと昔の話になってくる。


「初めて会ったのいつだっけ?2年生?」

「うん。2年生の春だよ」


 私がアリスちゃんと初めて会ったのは、2年生の春の、魔法体験の時間。

 私達の学校は、魔法に関連する施設とかはないけど、一応義務教育だから2年生で魔法に初めて触れることになってる。

 その時の授業が、『私の国のアリス』。 

 『不思議の国のアリス』っていう、有名な童話。そこをモチーフにして、自分の好きな『アリス』を、自分の世界に『召喚』する。童話では『アリス』はうさぎを追いかけて不思議な国に迷い込んでしまうんだけど、その不思議の国が自分たちの国だったら。そして、『アリス』はどんな人なのか。


 魔法、っていうのは、イメージで。具体的な題材があれば、簡単に魔法を使える。例えば、炎を見ながらなら炎は簡単に出せるし、鉛筆を持ちながらならだと何もないより簡単に鉛筆を作り出すこともできる。

 本当はこの授業は、『アリス』っていう人形のようなものを作り出して、お話してみよう。っていう授業。

 まだ、本当なら2年生に人の召喚なんて難しいから、アリスのイメージを先生に伝えて、先生に召喚してもらう。

 私はクラスが1人だったから、先生も私だけを見てくれて。それに、私も、『アリス』を凄く具体的にイメージできた。


 当時の私は、今よりもっとお話が苦手で、同級生のお友達もいなかった。

 だから、お話相手が欲しかった。私より元気で、いろんなことに好奇心旺盛。悪戯好きだけどちょっとおっちょこちょいで、とっても優しい。他にも、いっぱいいっぱい『アリス』についてイメージした。


 先生はとってもその魔法が上手で、私のイメージ通りの『アリス』が生まれた。だから、その時がアリスちゃんと初めて会った時、ってことになる。


 でも、召喚する魔法、っていうのはそんな長くは続かない。その時はその授業だけ。その間だけいっぱい遊んで、お別れすることになった。けど、私の想像した『アリス』は、とっても優しくて、賢くて。私が自分と別れるのが悲しいことを分かって、泣いてくれた。

 けどやっぱり、その時は結局お別れになった。魔法はそんなに長く続かない。しょうがないことなんだ、って。今までの、その授業までの静かな私なら諦めれたんだと思う。だけど、『アリス』と出会って、その時すでに私は変わりはじめてたのかもしれない。


 その後、私は召喚の魔法をいっぱい練習した。ただ、『アリス』じゃなくて、その授業で召喚した『アリス』を召喚したかったから、もっと具体的なイメージが必要になる。一緒に遊んだ記憶とか、話したこと。全部ちゃんとイメージしないと、『アリス』は別物の『アリス』になっちゃう。

 先生にも、お母さんにも、お父さんにもいっぱい相談した。みんなびっくりしてたけど、恥ずかしいとか、そういうことはまったくなくて。

 それに、授業で遊んだ『アリス』との記憶は、とても鮮明に残ってた。とても難しいはずのイメージは、驚くほど簡単にできた。みんな驚いていたって、今だからわかる。当時はまったく気付いてなかったけど。


 どこまでも深く、具体的にイメージしたからこそ、1回で召喚は成功した。それに、あとで言われたけど、私は召喚の魔法の才能があるんだって。

 こうして、『私の国のアリス』は、『アリスちゃん』になった。

 初めて会った時、そして別れた時から。一週間くらいしか経ってなかったけど。

 でも、その間はとても長く感じて、だからこそ、またアリスちゃんと会えた時は、泣いちゃった。


 その後から、ずっと私はアリスちゃんと一緒にいるし、アリスちゃんはずっと私と一緒にいる。

 本当はアリスちゃんは私が召喚したから、私が魔法を時々かけ直さないといけないし、アリスちゃんと私は離れられないはずだったんだけど。お母さんが教えてくれて、『よりしろ』を変化させて、魔法をずっと続かせる方法を教えてくれた。結構難しいらしいけど、お母さんがやってくれて。『よりしろ』は完全に、人間の今のアリスちゃんになった。

 アリスちゃんはすぐにみんなにも受け入れられて、学校の一員。そして私の同級生になった。人数が少なくて日当たりも悪いこの学校が、アリスちゃんのおかげでちょっとあったかくなったような気がしたの。

 みんなアリスちゃんのことが好きだし、みんなアリスちゃんは友達だと思ってる。そして、ちょっと喋るのが苦手だった私も、アリスちゃんのおかげでみんなと遊べるようになったし、友達になれた。

 

 私は、そんなアリスちゃんと一緒にいれて、そして1番の友達であることがとっても誇らしいし、嬉しい。

 私が召喚した、とかじゃなくて。ただ、とっても凄い友達ができたことが嬉しかった。


 それからはずっと学校生活が楽しくて。

 2人しかいないこの学年も、賑やかで。

 小学校生活、幸せだった。最後の1年も、これからもずっとアリスちゃんと一緒に居れることが嬉しい。


「んー。今年も、よろしくね?」

「えっ!?そりゃそーだよ!よろしく!ゆいちゃん!」

アリスちゃんと出会いの話、そして魔法の話を少し書いてみました。

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