一話 妖の世
俺はアフ郎。
苗字がアフで名が郎だ。
頭は見事なほどのアフロでお父さんがアメリカ人のハーフ…って今はそんな事どうでもいいか…。
だって俺は妖の世へと迷い込んでしまったから。
1話 妖の世
「やばいやばいやばいここどこだよ!」
頭の整理が追いつかない。
学校の帰り道、親友の鶴崎と遊んでいた。
それで…何してたんだっけ…。
そうだ!小さな子どもが河で溺れているのを発見して俺たち2人は河に飛び込んだんだ。
そして気づいたらここにいた。
ここが何処かは分からなかったが、明らかに俺の住んでいる街では無かった。
怪しく光る提灯や見たことも無いような着ぐるみを着た人たち。まるで街全体で盆踊りでもしているような雰囲気だった。
取り敢えずここに居続けても埒があかない。
俺はこの『見慣れない街』を鶴崎を探しながら歩く事にした。
見れば見るほど不思議な街だった。
段々ここは日本では無い何処か、もはや地球では無い何処かなんじゃ無いかと思えてくる。
そんな事を考えていた時
「お兄さん、そこのお兄さん」
そう言って肩を触れてる。
慌てて振り返ると1人の女がいつの間にかそこに居た。
「な、なんでしょう」
「フフッ、ねぇあなたどうしてここにいるの?」
女の質問を不気味に思いながらも
「気づいたらここにいた感じっスね、ここがどこか教えてもらえませんか?」
「フフッ…」
俺がそう話すと、女は笑うだけだった。
そして後ろに下がりながらこっちに来いと手を振った。
俺は頼れる人もいない訳なので、女についていく。
女は早歩きで路地を進んでいく。
俺ははぐれないように女を追いかけた。
先ほどの場所からかなり離れたところで女は足をピタッと止めた。
「ここに出口があるんスか?」
「いいや、出口はこっちじゃない、私はね?」
女は振り向く。
「私は…ワ、タシは…ワタ、ワタワタ、俺はぁ…お前を喰らうためにここに誘い込んだ」
女の声が段々と低くなり、身体は崩れ落ちて化け物へと変わった。
「や、やだなぁ何の冗談っスか…心臓に悪い…」
女『だった』化け物はジリジリと近づいてくる。
「ほ、本当に勘弁して下さいよ…」
化け物の口ががばっ!と開いた。
「だ、誰か!!」
俺は足をばたつかせながら走ろうとした。
が、化け物に足を掴まれてしまう。
「久しぶりの肉…人間の…肉!!」
化け物の口が俺をつつみこもうとしたその時
「お辞めなさい」
凛と響く声があたりに響いた。
いつの間にか狐面を付けた少女がこちらを見ていた。
「ぅうるさい!!俺の食事を邪魔するな!!」
「そうですか」
「それではルール通り、貴方を排除します」
女の声が聞こえた後、女は懐から鈴を取り出して小さく揺らした。
それだけで化け物は苦しみ、終いには姿が跡形もなく消え去った。
俺は鈴を鳴らす彼女を美しいと思いながら見惚れていた。
俺は今日、初恋をした。