FC 飛龍の拳 奥義の書
FCのマイナーゲームをやってみた感想文です。
これはとんでもない無理ゲーです。
攻略サイトも無かった当時、このゲームをクリア出来た人っているのでしょうか?下手したらFC魔界村よりクリア難易度が高いんじゃないでしょうか。
だいぶ前になりますが、飛龍の拳3 五人の龍戦士 をクリアしたとき、このゲームもめちゃくちゃ話が長くて、一回クリアしたらもう二度とやりたくないって思ったのですが、飛龍の拳ってFC1作目からひたすら話が長いっていうのは伝統だったんですね。ダブルドラゴンの発展途上版でしょ?くらいに思っていましたが、全然、いつまで経っても話が終わらないので正直驚きました。おそらくですが、もっとチョロッと気軽に格闘パートだけやりたいって人が多かったから、後に格闘パートだけの『飛龍の拳スペシャル ファイティングウォーズ』が出たのでしょう。格闘パートが非常に良く出来ているのに全然メインになっていなくて、道中の謎解きが難解というか、攻略サイトが無かったら絶対に見つからない、なんのヒントも目印も無い場所に先に進むアイテムとか謎解き要素が隠れていて、何をどうしたら良いのか初見で分かる人なんていないだろうっていうところが惜しいです。しかも、道中のアクションステージは制限時間230秒で、キーアイテムを見つけ出さないと一方通行で無限ループという鬼仕様。ゴールのドアが開かなければ、その先にスタート地点があるという悪夢のような横スクロールアクションです。ゴール地点で残り70秒くらいでスタート地点に戻されたって、そこからなんの目印も無いキーアイテムを捜してもう一周して戻ってくるなんて出来るわけないのに、なぜこんな仕様にしたのか、スクロールがバックしないからゴール地点で扉が開かないまま数十秒死を待つだけにするか、スタート地点にループするかしか選択肢が無かったんでしょうが、結果的にどっちもダメです。キーアイテム探し、制限時間あり、戻れない横スクロールアクションというこのシステム自体バグなんです。それを無理やり辻褄合わせたこんなゲームでも売れたんですから、当時の大らかさって凄いと思います。
ゲームの大まかなストーリーは2部(3部)構成。となっていて、一部は少林寺での修行編、二部は格闘技世界大会編となっています。(一度世界大会で優勝すると、決勝で戦ったフーズ・フーという龍の牙の親玉が影武者だったと判明。それまで集めてきた奥義の書を本物のフーズ・フーに全部奪われ、何も技が無い状態で少林寺に戻されます。そこから本物のフーズ・フーに「持って来い」と言われた4つの水晶玉を探しながらもう一度世界大会を勝ち抜いていく事になります。なので、ほぼ第3部構成)。
少林寺編は謂わば練習パートで、画面の下半分にFCのコントローラーが映されて、印が出たボタンを素早く押す練習を繰り返し、練習した技を実践形式の試合で使い3人倒せばクリアとなります。操作方法を最初から知っていれば習っていない投げや飛龍の拳でも最初から出せるので、慣れた人にとって練習試合はただただダルいパートでもあります。
ここで3人目の『元涯』という少林寺の貫主に勝つと奥義の書『心』が貰え、世界大会へと向かう事になります。
世界大会に出場するには3回の予選トーナメントで優勝しなければならないのですが、予選トーナメントの会場がそれぞれ違い、主人公は少林寺からの道中を含め各会場に徒歩で向かい、その道中が横スクロールアクションとなります。大体、街中に敵が多過ぎたり、会場に入るキーアイテムが街中のどこに隠されているかなど全くヒントも目印も無かったり、ジャンプが十字キーの上だったりして、ステージ自体は短いのにクリアさせる気がないんじゃないかと思うくらいの投げやりです。キーアイテムの水晶に至っては4つ目がバグっていておかしな場所に突然現れて、取っても消えないままだったりします。そんなどこにあるか全く分からないバグアイテムは取らなくてもステージは抜けられトーナメントも最後まで進んでしまい、取りこぼしがあったらエンディング途中で最初からやり直しになってしまいます。これネタバレですが、水晶玉の一個は最初のアクションステージに隠されているのですが、これをスルーしてしまうともう後戻り出来ないため、その後延々と世界大会を勝ち進んで途中で『あれ?水晶一個無いけど大丈夫?』って思った時にはもう遅く、やっとの思いでラスボスを倒しても裸にされてスタート地点に戻されるしか先がありません。最初からやり直した方が早いです。
また、キーアイテムの水晶以上に『奥義の書』を出現させる条件が難しく、予選と本戦のトーナメントで戦う15人の相手のうち5人の特定の相手を特定の技で倒したり、一瞬出る青い印に攻撃をクリーンヒットさせると選手に化けていた龍の牙の構成員『牙闘士』というフーズ・フーの手下が姿を現し、そいつらに勝つと奥義の書を一冊づつ取り返せるという流れになるのですが、何も事前情報無しで誰にそんなルーチンを行えばいいのかどうやって分かるのでしょうか。青い印に至っては、特定の攻撃パターンを2度繰り返すと現れるとか、もう今となってはドラクエのランシールバグを見つけるよりも困難です。しかも、決勝トーナメントの敵の印の切り替わりなど、人間の動体反射を超えているような速度で、当時の高橋名人とか毛利名人とか、ハドソンの全国ゲームキャラバンの猛者なんて人がいかに常軌を逸していたか、それくらいゲーム一筋で熱中しないとハッキリ言って全く対応出来ないくらいの鬼畜難易度となっています。このゲームは単純に一般人にはクリア不可能だと思いました。そう考えると当時のゲームってやっぱり凄いですよ。こんな無理ゲーをある種の感や瞬間的な先読みでクリアしてしまう人がいたのですから。クリアされたら開発者の負け、このゲームをクリア出来る人は何人現れるか、そんな開発意識を感じます。
アクションゲームなので大したストーリーも無いですが、大体は以下のようになります。
龍飛峰という山の奥に寿安老師という老人が住んでいました。
寿安老師は昔は拳法の達人でしたが年老いたため山奥に隠居して奥義の書を執筆して暮らしていました。ある日、老師は山の中に赤ん坊が捨てられているのを見つけ、その赤ん坊を拾い『龍飛』と名付けて育て、一緒に暮らすようになりました。この龍飛がこのゲームの主人公であり、後のシリーズでもずっと主人公の龍飛な訳です。捨て子だったんですね。
しばらくそんな二人の穏やかな暮らしが続き、老師が奥義の書を6巻まで書き終えた時、突然『龍の牙』を名乗る集団が現れ、老師を殺して奥義の書を奪い去って行きます。その時、龍の牙たちの姿が見えた老師は咄嗟に幼い龍飛に一冊の奥義の書を持たせ「コレを持って少林寺に逃げろ」と言って裏口から龍飛を逃がし、自分は殺され奥義の書五冊も強奪されましたが龍飛と一冊の奥義の書だけは難を逃れて少林寺に逃がす事だけは出来ました。
龍飛が逃げ込んだ少林寺は、かつて寿安老師の弟子だった元涯という人物が貫主を務める、拳法を教える寺で、寿安老師が書いた奥義の書を持って逃げ込んできた龍飛を匿い、老師の仇を仇を討ちたいという龍飛の願いのため、龍飛に拳法の修行をさせて鍛えました。
それから数年後、あの龍の牙の総統フーズ・フーが寿安老師の奥義の書五冊を読んだ事で自ら世界最強の格闘家であると宣言し世界中から挑戦者を募りました。そこで、異種格闘技戦の世界大会を開催し、優勝者がフーズ・フーに挑戦出来るというイベントを行う事となり、少林寺にも世界大会への出場者募集の知らせが来ました。
この辺りがゲームスタート地点です。
龍の牙に老師の恨みを晴らす絶好の機会なので龍飛はここで、元涯が解読した奥義の書の奥義『心』を伝授してもらい世界大会への予選へと向かいます。
と、まあ、ここまではそこそこストーリーがしっかりしているのですが、ここからいきなり目的の軸がブレます。
少林寺でもフーズ・フーも『曼荼羅』というタペストリーみたいな物を完成させたいというのが真の目的のとなっていて、主人公もいつの間にかそれに加担させられています。
その曼荼羅には多くの空白部分があって、道中でボスを倒すと貰えるメダルや、6冊の奥義の書、4つの水晶玉をはめ込んで完成となる飾り物のようで、まあ、全部揃って完成しているって事は格闘家で最強っていう証になるのでしょうけど、龍飛にしてみれば寿安老師の仇を討つためフーズ・フーを倒せれば良いだけの話であって、フーズ・フーに言われるままに水晶玉を探しに2周目を回る事も無いと思ってしまいます。
実際、水晶玉は4つ揃えないとバッドエンディングで振り出しに戻され、メダルは持っていないとアクションステージの出口のドアが開かないのでストーリーを進めていく上でどうしても集めなければならないのですが、老師の仇討ちというストーリー本筋とは全く関係のない曼荼羅作りのためのアイテムです。ゲームタイトルにもなっている奥義の書に至っては主人公に防具が付いたり服の色が変わったりして見た目が徐々に戦士っぽくなっていくだけで、性能は変わらないという体たらく。奥義の書ってファッション誌?
後半の流れは曼荼羅のパーツを全部集めてフーズ・フーの元に持って行って、身なりも全てキチンと整えて行かないと戦ってもらえないという、なんかいいように使われてる感のあるストーリーにいつの間にか刷り替わっています。
エンディングも龍飛がトロフィーを持って飛び跳ねて喜んでいる絵が映され「やったー、優勝だー」とセリフが付けられ、元涯が「よくやった。もう教える事は何も無い。」で終わり。エンディングがあっさりし過ぎてるとか以前に、何のために戦ってきたのかとか、曼荼羅はどうなったの?とか、全部吹っ飛ばして「やったー」の一言で終わらせるって、潔良すぎて頭おかしいでしょう。
まあ、そんな大らかな時代を感じされてくれるゲームではありますが、ABボタン二つでこれだけ多彩な技を出せる格闘ゲームを開発したのは本当に凄いアイディアだと思いますし、実際に格闘パートは面白いです。以降、シリーズ化されていく飛龍の拳の主人公龍飛の出生から幼少期、少年時代の物語という点でも、当にエピソード1な作品なので、他の飛龍の拳作品をプレイした事のある人には面白いと感じるストーリー内容になるかと思いました。
シリーズ原点としての前半の話の流れはとても良かったです。