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1)薬師如来とは何者だ!

  

 藥師琉璃光如來本願功徳經


 如是我聞一時薄伽梵遊化諸國至廣嚴城住樂音樹下……



 薬師やくし瑠璃光るりこう如来にょらい(バイシャジュヤグルヴァイドゥーリヤプラバタターガタ)の本願による功徳についての教え。


 私、こんなふうに聞いたんですよ。


 あるとき薄伽梵バカボン(世尊、ブッダの敬称のひとつ)は諸国に教化の旅をして、広巌城というところの楽音樹という木の下で、えらい比芻衆びくしゅう(ビクシュ、出家の修行者)のみなさま8千人ほど、また菩薩ぼさつ(ボ-ディサッタ、大乗仏教の修行者)・摩訶薩まかさつ(マハーサッタ、偉大な人々)が3万6千人ほど、また国王、大臣、婆羅門ばらもん(ブラフマナ、高位の聖職者)、居士こじ(民間の学者)、天龍・夜叉・人でないひとたちなどと一緒にいたんだけどさ。

 その数え切れないほどの皆さんは、説法を聞くためにその木を取り囲んでたんだって。


 と、その時!

 曼殊まんじゅ室利しつりー法王子ほうおーじ(マンジュシュリークマラプータ)が……



 曼殊室利法王子は「文殊もんじゅ師利しり童心とうしん」とも漢訳され、略して「文殊菩薩」という名前で日本でも知られています。

 文殊菩薩と言えば「三人寄れば文殊の知恵」ということわざもあるように智慧者で有名です。外見は「裕福な家の青少年ローティーン」といった姿だけど、すでに遠い過去から生まれ変わり死に変わりで悟りを開く寸前まで修行を済ませており、その智慧と神通力で人々を悩み苦しみから救ってくれる菩薩と言われております。

 図像ではしばしば獅子(ライオンの想像図)に乗った姿で表現されております。コンビの普賢ふげん菩薩(サマンタバドラ)は髪型が違うだけでなく牙のたくさんあるゾウに乗ってるから、両者の区別は容易です。


 文殊菩薩は中国の天台山(五台山)に住んでいるという伝説があったり、また「文殊菩薩に祝福された国」というような意味で「マンジュ」と称した土地が、漢字に音写されて「満洲」となったという経緯も伝えられてます。

(注:現在は「満『州』」と書かれることが多いのですが、本来は独立した民族名または国名だった「満洲」が、「満州=中国の州(行政区画)のひとつ」と誤解されがちだから「満洲」と書いて欲しい、との旨を満洲族出身という方がYoutubeでアツく語っておられました;)


 いずれにせよ文殊さんは、観音さんやお地蔵さんほど頻繁には菩薩像を見かけませんが、奈良の大仏さんの横(脇侍わきじ)にいたり、数々の大乗経典や『西遊記』などの物語にも登場したりと、比較的には有名な菩薩さんなのです。



 さてその文殊さんこと曼殊さんは、ブッダが何か話したくなっていることをピピピッとデンパで察して、片方の肩を脱ぎ右足(膝)を地に着き(当時の敬意をあらわす作法)、薄伽梵に向かって手を合わせてお辞儀して言った。


曼殊「世尊せそん(バカボン)、お願いがあります……さまざまなブッダの名前と、その方々の、よく業障を除こうとする本願・殊勝・功徳についてよく知って、像法ぞうほうの時代のひとたちに利楽があるようにしたいと思うので、そのへんを説明してほしいのです~」



 「像法」とは、「ブッダの教えが正しい形で残ってはいるけど変質が始まって修行の効果が出にくくなってる時代」という意味です。さらに完全に変質してしまったのが末法の時代、ということだそうで。



 さて世尊は曼殊童子(少年)に言った。


GJGJ(ぐっじょぶぐっじょぶ)、曼殊室利くん。キミは、大いなる悲しみ(同情)の心から、さまざまなブッダの名前と、その方々の、よく有情うじょう衆生しゅじょう、魂のある生き物さんたち)の業障ごうしょう(カルマ、過去の行いの報い)を除こうとする本願・殊勝・功徳について、像法の時代のひとたちに利楽があるようにしたいので、私に説明してほしいと言うんだネ。じゃ、キミのためにそのひとりを説明するから、よく聞いて内容を悟り、後でよーく考えてネ」

曼殊「すっごく聞きたいです、どうかお願いします~」


 ブッダは曼殊室利に告げた。


「ここから東方に、ブッダがいる世界だけで10恒伽沙ごうがしゃ(10,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000)個ほど向こうに、『浄瑠璃じょうるり』という名前の世界があってね。薬師やくし瑠璃光るりこう如来にょらい(バイシャ(薬)=ジュヤグル(師)=ヴァイドゥーリヤ(瑠璃)=プラバ(光)=タターガタ(如来))という、正等覚(最高の悟り)を得て行いが円満で世界のことを過去も今も全て知り天人にも人間にも先生である、ブッダ・薄伽梵がいるんだ。


「かのブッダ世尊・薬師瑠璃光如来は、悟りを開く前に本行ほんぎょう菩薩という名前だったとき、有情のみんなが求める所をすべて得られるようにと十二個の大願を起こしたんだョ。」



 大願とは……普通な神仏への願いごとではなく、「それが成し遂げられないうちは悟りを開いての成仏じょうぶつはしない」という、生まれ変わってもまだ続く、命がけ以上に厳しい誓いのことです。

 なお成仏とは、現代の日本では「浄土や天国に生まれ変わる」という方便的な意味で使われていますが、ここではそうではなく、もともとの「悟りを開いてあらゆる悩み苦しみから離れ、もうどこにも転生しないブッダ(普通名詞)に成る」とご承知おきください。

 浄土に生まれ変わればそこにいるブッダが「将来には悟りを開く」と保証してくれるから「成仏したと同じ」ということでそう言われているだけであって、本来の意味は違ったのです。

 仏教の最終目的は本来の方の「成仏」、つまりあらゆる苦しみがなくなってブッダに成ることであるのですが、大願はそれを後回しにしてでも実現したい、というシビアな願いなのであります。

 逆にいうと、薬師如来がブッダとなったということは、その大願がすでに成就してるということになるわけですが……。


 で、薬師如来の十二個の大願とは?


 

 ……つづく!

 


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