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底辺男のミセカタ 〜ゴミスキルのせいで蔑まれていた俺はスキル『反射』を手に入れて憎い奴らに魅せつける〜  作者: 筋肉重太郎
大阪編 第八章 進展

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黒犬

「ちっ……あんな奴に……」


「……正直、良い気分ではありませんね」


 会議が終わった後、外務大臣である私と内務大臣は集まり、近くの飲み屋で一緒に飲んでいた。


「まぁ、田中伸太が怪しいと言うのは、異論ありませんが……」


「あんな奴の言う通りになるのは癪だ」


「ですね……」


 通常、今回の1連の騒動は、東京の外と中の動きを決める私たちに権限がある。しかし、現実では、何の権限も持たない異能大臣の案が採用された。

 そんな事をやられてしまっては、内務大臣と外務大臣の意味がないではないか。


「こうなったら……外務大臣殿、我々だけで田中伸太を捕まえてしまう……というのはどうでしょう」


 俺もそれを考えていたところだ。我々2人だけだと、動かせる兵士は限られるが、高校生1人潰すならば十分な数の兵士を動かせる。少し前の私なら、その話にすぐに飛びついていただろう。



 だが、今回ばかりは事情が違った。



「……しかし、もし異能大臣の言う通り、レベルダウンを壊滅させるほどの後天性スキルが発現していたとしたら……」


 限られた兵力では、殺すどころか、捕まえることすら難しい。


 そう言葉を発そうとしたその時。


「問題ありません。私に1つ案が……」


 私は内務大臣に手招きされ、内務大臣の口に耳を近づける。


「……っ! なるほど……!!」


 耳に入り込んだ1つの案。それは、私の脳ににゅるりと入り込み、脳内に革命を巻き起こす。


(それならば、我々2人だけでもできないことは無い……)


「どうですか? この案を使って……あの異能大臣をぎゃふんと言わせると言うのは」


 答えなど決まっている。


「やりましょう……準備が出来次第すぐに」




 2人の大臣の手により、田中伸太捕縛作戦が始動する……









 ――――









「ワン! ワンワン!!」


「…………」


 何この犬。


 今、俺は道路のど真ん中で、不思議な不思議な真っ黒い犬と対面していた。

 その犬は小柄でチワワと同じ位のサイズ。耳は立っていて、鋭い歯がキラリと光っている。

 犬種は知らんが、そこそこ珍しいのではないのだろうか。


 そんな犬は、尻尾を振りながら、こちらをじっと眺めていた。


「……ワン!」


 失礼、鳴いてはいた。


(なんだこいつ……無視するか)


 100人の人間がこんな現象に直面した時、すべての人間がそうするであろう行動をとる。犬がかわいそうだから拾うなんて、そんな主人公みたいな行動は取らない。何か利益がないとな。


 とっとと不動産屋に行くとしよう。









(……ついてきやがる)


 なんだこいつは。俺の歩いた後を小動物みたいにちょこちょこついてくる。あ、小動物だったわ。


 このまま不動産屋にもついて来られては、凄まじいほど迷惑だ。俺の楽しくも有意義な、大阪ライフを邪魔されてしまっては困る。


「……しゃーないか」


 俺は足を止め、くるりと黒い犬、略して黒犬と呼ぶことにしよう。黒犬のほうに振り返る。


「おいお前、とっとと家に帰んな」


 話しかけてみたが、話が通じているのかいないのか、全くと言っていいほどわからない。俺の目の前で座っているだけだ。


「……ちっ」


 こう言うのは大抵飯をねだっている。目の前で座ることによってご機嫌をとっているのだろう。がめつい犬だ。


 だが、飯をやらないと離れないのは事実。


 長引く前に、ドッグフードでもやって帰ってもらうとしよう。


 そう思い、ポケットの中の財布に手を伸ばすと……


「……んあ?」


 ポケットに人差し指さえ入れれば、その存在を確認できる財布。


 ……だが、感じない。


 ポケットに入れた手から、その財布の感触を感じることができなかった。


「は……は!?」


(……落とした)


 やってしまった。これからの計画を無に返す最悪の行為。どんなに計画を立てようと、実現できる力がないと意味がない。子供が考える妄想のように、全てが意味のない空想物語になってしまう。


(……どうしよう)


 俺は交通量の多い歩道で、直立で立ちつくしていた。


(考えろ。財布がまだあったタイミングを考えるんだ……

古着を買った時はまだあった。金を払っていたからな。温泉に行った時も、入り口で金を支払っていた……つまり、財布を落としたのは温泉から帰ってきた頃だと言う事……)


(…………詰んだかもしれないな)


 俺がそう思った理由は単純。既に温泉施設から出て、30分近く経過してしまっている。つまり、その分歩いた距離も多い。探すところが多すぎる。それどころか、既に拾われてしまっているかもしれない。


「……終わった」


 どうやって生活しよう。このまま野宿生活なのだろうか。そう思っていたその時。


「ワン!! ワンワン!」


「……あ? なんだよ……飯はないぞ?」


 黒犬は俺のズボンの裾を引っ張り、強く反応していた。そのまま俺のズボンを手繰り寄せ、財布が入っていたポケットの位置まで到達する。

 俺も黒犬の動きに合わせ、黒犬がやりやすいようにしゃがんでいた。


「スンスン……」


(……?)


 ポケットの位置まで到着すると、急に黒犬は匂いをかぎ始める。まさか匂いで財布まで到達しようという魂胆なのか。




 ハッハッハ、そんな漫画みたいな展開が起きるわけないだろう。もしそんなことができたら、この犬を飼ってやってもいいね!!


 そう思っていると、黒犬は俺のポケットから鼻を外し、道路の匂いを嗅ぐように、今まで歩いた道を逆走していく。



(……まぁ、ついていってもいいだろう。時間に追われているわけでもないし、まだ不動産屋が閉まる時間じゃないしな)





 まぁ、この茶番に付き合ってやるとしよう。





 この茶番に…………





 このちゃば…………






 茶番………………






 ……………………………………………







 その時、俺の前にいた黒犬の口には。






 俺の財布が存在していた。



「スウーッ……」


 さっきの話、なかったことにならない?





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