スキルの発現
「よっ……とぉ……」
化け物を綺麗さっぱり始末すると、すぐさま荒れに荒れた地面に降り立ち、抱き上げていたグリードウーマンを適当に投げ捨てた。
「きゃっ……ち、ちょっと……! 私だって女の子なんだからもう少し優しくしてよ!」
「うるせぇ。これから俺の問いに答えろ」
今聞きたいのは女からの文句ではない。グリードウーマンしか知らず、俺は知らないことだ。
グリードウーマンも俺の真剣な雰囲気に当てられて、女らしい表情からいつもの表情に切り替わる。
「……何よ」
「とぼけるなよ。お前も大体見当はついているはずだ……注射器だよ注射器。あれは一体なんだ?」
「……なんで私なら注射器の正体を知ってると思ったの?」
見当違いな発言ばかりだ。さっきも言ったが、俺の聞きたい言葉はそれではない。
「単純な話だ。さっきの女が持っていた注射器。あれと同じものを昔お前も持っていた。使った後の症状で化け物のような姿になるのも酷似しているし、何よりお前の反応が疑問と言うより、何かを思い出したような反応をしていた。お前は間違いなくあの注射器の正体を知っている」
ここまで言って初めてグリードウーマンは諦めの感情を表情からあらわにさせた。どうやら話す気になってくれたらしい。
「……あの注射器自体はそこまで特別なものではないわ。少し頑丈なだけの注射器。問題なのは中身の液体よ」
(そこまではなんとなくわかる)
「中身の液体の効力は単純な肉体強化だけじゃないわ。後もう1つ、特別な効力があるの」
「それは?」
「……それは人間を巻き戻す効力よ」
「人間を……巻き戻す?」
人間を巻き戻す。それは俺の聞きたかった言葉ではないと同時に、確かに俺の聞きたかった言葉でもあった。
(てっきり、スキルを強化するとかだと思ったんだけどな……)
「人間にしかスキルは宿らないってのは当たり前のことだけど……逆に言うと、なんでスキルは人間にしか宿らないと思う?」
「……? そんなもん教科書で習っただろ。西暦2040年、突如として世界中の人間が――――」
「いいえ違うわ」
「ハァ? でもそう言われてるだろ」
「それはスキルが発現した年じゃないのよ。正しくは再び発現した年なの」
(……まさか)
そこまで聞くと、俺の脳は1つの結論にたどり着く。しかしそれはあまりにも、龍なんかよりも夢物語すぎて、逆にあまり信じたくなかった。
しかし、次に放たれるグリードウーマンの言葉で、俺の信じたくないという願いは音もなく砕け散った。
「スキルが真に発現したのは旧石器時代……約30万年前から20万年前。私たちの先祖、ホモ・サピエンスが生まれた時よ」




