表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
790/791

影響

 偽黒ジャケットが行った地盤破壊は、前も言ったように、偽黒ジャケットと鎧の男の場所のみならず、第一防衛基地全体に影響を及ぼした。


 それすなわち、同じく第一防衛基地周辺で戦闘を行っていたグリードウーマンと藤崎橙子にも、被害が及ぶことを意味していた。


「あなた……この記憶はっ……!? これは……!?」


 地面がガコンと下に揺れ、股が寒くなる感覚を覚えると、すぐさま地震と思われる揺れが発生する。


(こんなの新潟派閥に聞かされてない……まさか、東京側の?)


 ある程度何でもして良いとは言われたが、少なくとも、地盤が割れ、地震が起こるとは聞いていない。そもそもこちらは我々の領土。つまり、東京側の仕業の可能性が高い。そう踏んだ私は、先ほどまで交戦していた橙子を見る。


「な……何なのこれ……!?」


(あいつも動揺している……)


 つまり、東京側からしても、これは不足の事態。そこから考えられる結論としては……


(まさか、このタイミングで地震の自然発生?)


 現時点でこのような混乱を招くのは、双方にとってプラスがない。だとすると、こう考えるのが自然だ。


(まさかこちら側で、自分たちの基地をぶっ壊すやつがいるとは思えないし……あ)


「待て!」


 割れた地面の影に隠れ、私から見えなくなった瞬間、飛び上がって木々を移動し、猿のように移動して逃げようとする橙子に向かって飛び上がり、一気に近づいて、飛び蹴りを行う。


 橙子は頭を下げることで回避するが、私も空中でくるりと回転し、近くの木の枝に着地する。


 足との摩擦で気が焦げる匂いがする。木の皮が足をピーラーがわりにして捲れ上がる。


「やっぱり。ヘンテコな能力はあるみたいだけど、身体能力は私に及ばないようね」


「…………」


 結果としては外れてしまったものの、橙子は何回も木から木に飛び移ってやっとなのに対し、私は飛び上がって一発で橙子まで移動できた。


 身体能力の差は明白。テクニックでは同等。ならば、わざわざ人間レベルの戦闘にとどまらず、人外レベルの戦闘をすればいいだけの話。


「そのヘンテコ能力はよくわからないけれど……あなたの弱点は割れたわ」


「……ッ!」


 こうなってくると、橙子は間違いなく、1歩前に出れば、足を踏んでしまう位の距離感で戦ってくる。そう思って橙子の次の手に注目していたのだが……


「……は? 逃げ……た?」


 なんとまさかの逃走。有利にも、不利にもなっていない状況下で。天敵から逃げる脱兎のように、私に背中を見せて逃走したのである。


「てめっ……待て!」


 もちろん、それを逃すわけもなく、木の枝を犠牲に飛び上がり、すぐに橙子の元へとたどり着く。


「ッ……」


「なん!? ちょこまかと……!?」


 そうなると、またすぐさま私から距離を取り、逃走。逃走。逃走。完全な逃げの一手。


「……はぁ?」


(なんで……? まだまだ始まったばかりなのに!)


 理解不能な行動に頭に血が上った私は、らしくなく大声で叫んだ。





「お前ッ!! なんで逃げる!! 何故戦わない!! この腰抜けが!!」





 すると、橙子の体がピタリと止まり、首がこちら側に動こうとしたが、それを振り切るように頭を振り、また逃げ出し始めた。


「なん……!! ぎ、が、ががが……!!」


 ありえない。ありえない。ありえない。理解不能な感情と、彼の障害になるであろう女を止められない悔しさ、そして何より、目の前にご馳走があるのにフォークで刺せないむず痒さが、言葉となる前に喉奥から上昇し、うめき声となって口から溢れ出す。


 どう考えても戦えないほどのダメージは負っていない。なのに。


 そのもどかしさが溶けたのは、橙子を追い、木の枝に着地した時だった。



「痛……目に何か……」



 先ほどまで橙子がいた木の枝に着地すると、目に何か、水のようなものが入りこんだ。


「しみる……雪の雫じゃ、ない……?」


 明らかな違和感。目を伝う感覚神経が、脳に向かって痛みの信号を発していた。


 つまり、これは雪ではない。もっと別の場所から発生した目に染みる液体。





「……汗?」





 もどかしさが、疑問に変わった。

 ブックマークよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ