第三の戦い
第一基地の戦いにおいて、新潟派閥が有利を築いている要因は、大部分に犯罪者たちの大立ち回りが挙げられる。
グリードウーマン。偽黒ジャケット。田中伸太が変身する本物の黒ジャケット。そこら辺のネームがある犯罪者は当然だが、中堅どころも充実していた。
「ふんっ! ははっ! 噛みごたえない奴らばっかりだねぇ!」
「あんただけーじゃーできてねーわよ……ほーら、次そこー」
特に、神奈川派閥の一件にて、黒ジャケットに開放された上で、チェス隊から逃げ出した生き残りであるこの2人は大きな成果を上げていた。
神奈川派閥の大事件から手を組み始めた2人は、監獄時代からの仲ということもあり、2人でプラスどころか、2倍、3倍のポテンシャルを発揮していた。
現に今も、痩せ細った青髪の女の指示のもと、剛腕から振るわれる拳で地面を浮き上がらせ、銃弾の雨をガードしていた。
「はははっ! やっぱこの依頼を受けたのは大正解だったなぁ!」
「そうーね。それに、東京は神奈川の同盟国。間接的にはなーっちゃうけれーど、仕返しできるっつーわけだね」
「そしたら今のその場しのぎ生活とはおさらばさ! どっかで商売しようぜ!」
2人が参戦した理由は、神奈川派閥への嫌がらせもあるが、本命の理由は、今の生活から脱却するためだった。
神奈川派閥ではかなり有名だった2人だが、他派閥での知名度はそこそこかそれ以下。神奈川派閥では当然商売はできないので、日銭を何とかして稼ぐ生活をしていたのだ。
2人で商売をすると決めていた彼女らにとって、大きな資金源となるこの依頼は最高の一言だった。
「まーね。でも……そこのやつに勝ってからーね」
そう言って、先ほど吹き飛ばした、砂煙の中を指刺す。
指差した先、ちょうど砂煙の中心、そこからメスを入れるように、靴のつま先が現れる。
「!」
足首、ふくらはぎ、太もも、そこから胴体、顔と姿が露わになる。
「なんだい。ただの男じゃないか」
どちらかと言うと幼く、少年のようなイメージを想起させる顔立ちに加えて、体の大きさも人並み程度。服もジーンズに、パーカー1枚とあまりにもラフだ。戦争中の服とは思えないし、先ほどまでの兵士たちとも当然服装は違う。
「……いーや……あれーは……」
青髪の女は、もともと神奈川派閥における裏社会の首領を張っていた。なのでかなりの情報通であり、ここ数年の牢獄に入っていた分を含めなければ、大派閥の有力な兵士はもちろんのこと、各派閥の兵士まで頭の中に入っている。なので、目の前の青年がなんなのか、何者なのか、少しして理解できた。
「四聖……親玉のコーマがきたーね」
「あれがか?」
「えーえ」
「ふーん……」
女が指差した先には、あまりにも街中の少年すぎる風貌の男。あまりにも戦争している最中とは思えないが、2人は青年に対して警戒を崩さない。
こういうのが1番強く、そして怖いのだと、神奈川派閥で嫌と言うほど思い知らされたからだ。
「に、しても喋らねぇなぁ……おーい! 何か言うことねぇのか?」
「…………」
「チッ、マジで喋らねぇのかよ。つまんねー奴」
「まーいーじゃない。今更聞くことなんてーないんだし」
「……ま、そりゃそうだ。んじゃ……強いんだろ? あんた」
発言に答えるように、青年は構えを取る。構えの形はスタンダードなボクシングタイプ。おおよそ場数を踏んだ兵士とは思えない。が、そんなことはプロレスラー並みの体格を持つ女にとってどうでもよかった。
自分より知識人である青髪の女が、「あれは四聖だ」と言った。それだけで、あの構えも別格のものに映った。
「あたしとやろうやぁ!!」
第一防衛基地のど真ん中。誰よりも基地に近い場所で、多くの兵士の目に止まる戦いが始まる。




