プラスアルファがすぎる
ちょい短め
第一防衛基地の陥落という偉業。俺の戦争デビューはこれ以上なく華々しい結果となった。
そして、この戦争は、いつものように潜伏して行動する必要性がない。昨晩ハカセが言ったように、東京派閥側が俺の存在を想定していない理由がないからだ。
しかも、東京派閥は国境線の戦いで俺の存在を確認している。そこからも、俺かあのジジイがやったと思うのは明白であり、俺の存在が意外でもなんでもない。
なので、ベースとなるキャンプ地に帰る時以外は、人目を気にせず行動していいと思っていたのだが……
「ハカセ、やりた――」
「駄目じゃ」
「ハカセ「駄目じゃ」まだ何も言ってな「駄目じゃ」……へーい」
と、このように、新潟第一防衛基地の戦いを遠くから観察するということになっていた。
「「「「ウオオオオオオーー!!!!」」」」
「負傷した者から下がれ! まだ動ける者で後をやる!!」
「そんなんで止められるかよオオーー!!」
「みんな作戦通りに……ああクソッ! なんで言うことを聞かない!?」
「惨殺惨殺惨殺惨殺惨殺惨殺惨殺惨殺惨殺つうううぅぅぅーー!!!!」
「やだっ……死……ひっ……」
「死んでたまるかっ……くっそおおおおおおおおお!!!!」
「オラ行けっ! 死ぬまで戦ええエェェー!!!!」
(おーさすがさすが……犯罪者も参加してるだけあって、昨日狂った叫びも聞こえるなぁ)
絶え間なく人の声が聞こえ、自然界に似合わない赤の液体が散布し、複数人の人間が槍や剣、銃。はたまたスキルで互いの体、場所を傷つけ合う惨状をただ見つめているだけ。
昨日、あれだけ派手なことをしておいて、次の日になったらこれ。あまりにも落差がありすぎて風邪になりそうだ。しかも今の時期は冬。刻々と時間が経つたびに雪が地面に降りかかり、寒さで手がかじかんでくる。
目の前に餌を見せびらかせられ、お預けを食らっているこの状況。今の俺にできるのは、ハカセに強請ることと、できるだけ戦場を見ないように、降ってくる雪を一つ一つ眺めること。ただそれだけだった。
――――
龍ヶ崎亮介にとって、この戦争における犯罪者集団の投入は、様々な思いが混濁した上での判断だった。
犯罪者の力など使いたくない。新潟派閥の力だけで勝ちたい。父の期待に報いたい。
そんな気持ちを粉々に砕き、新潟派閥の存続のため、何より勝利のために自分のプライドを折った。
言葉にするだけなら簡単だが、それをぶっつけ本番でやるのがいかに屈辱的か。
そうして送り込んだ犯罪者たちのおかげか、第一防衛基地の戦いは、新潟派閥有利で物事が進んでいた。




