血が香り始める
次の日、第一防衛基地を壊滅させたのをリアルタイムで確認した東京派閥は、黒ジャケットが新潟派閥の送り込んだ尖兵だと仮定し、次の日の早朝、大至急で隊を組み、新潟派閥の第一防衛基地へと向かわせた。
その数、合計400。軍隊の総数の3分の1以上が、新潟派閥侵略のために送られた。
その中には、派閥の最高戦力である四聖の1人も含まれている。絶対に落とすと言う覚悟が感じられる。
しかし、新潟派閥も馬鹿ではない。深夜に起きた異変に、次の日になってすぐ気付いた。
知らず知らずのうちに壊滅している東京派閥側の第一防衛基地。
荒らされている防衛ライン。
遠くから見ても何かがあったのは明らかな、防衛基地があったはずの場所にあるクレーター。
ただ、新潟派閥にとって都合の良いことが起きたのは事実。そして、誰の仕業なのか、ピンときた人物は新潟派閥に複数人存在していた。
その複数人は総じてこう思った。
黒ジャケットの仕業だ……と。
しかし、こちらにとって都合の良いことが起きたということは、相手はその遅れを取り戻そうとするはず。つまり、今日からすぐにでも、直接衝突が始まることを意味していた。
それに気づかない亮介とロカではなく、軍に指示し、第二防衛基地から第一防衛基地に100の軍隊を援軍に向かわせた。
その中には第二防衛基地でスタンバっていた犯罪者たちも在籍している。つまり……
「君は……国境での戦いぶりか! うむ! いい機会だ!」
「それはこっちのセリフ……次こそ、私の手で引導を渡してあげる」
四聖の1柱、鎧ムキムキ男と偽黒ジャケット。イロモノ同士のマッチアップが行われようとしていた。
さらに、別の場所では……
「こんにちは。おばさん……ここはスーパーではないわよ?」
「オホホ……ありがと。でもいいのよ? 散歩しに来ただけだから……」
グリードウーマンと、かつて田中伸太が憑依した体の宿主、藤崎剣斗の母、藤崎橙子が相対していた。