四聖との初戦
出会ってすぐの接近戦は、目潰しを使ったパンチをさらにおとりに使ったブラックの刃に軍配が上がった。
(最初にダメージを入れれたのがでけぇな……)
「よくやった」
「ワン!」
褒めの言葉にうれしそうに反応するブラック。本当に感情を顔に出す。かわいいやつめ。
(止められたときのために、ブラックをフードの中に隠しておいたのが上手くいったな)
できれば、1対1でやりたいところだったが、今は戦争中で別にこいつに思い入れもない。この後、基地内にいるやつらを皆殺しにしなければならないのだから。
(だから悪ぃな……)
「容赦はしないぜ?」
一方、落ち武者は胸の切り傷を着物で拭き取っている。
「……しょうがあるまい」
少しすると、拭いても拭いてもこぼれる血に諦めがついたのか、首元が赤く染まったまま、こちらに向き直った。
「先の斬撃……その子犬が?」
俺の肩に乗っているブラックを指差しながら、質問を投げてくる。
「答える筋合いはねぇが……ま、そういうこった」
「ワウン!」
「ほう……?」
落ち武者はブラックをジーっと目を細めて眺める。そこまで珍しいのだろうか。
(……あ、そういや、動物のスキル持ちは大阪派閥の特権だったか……東京派閥からしたら珍しいわけだ)
ブラックと一緒にいたから逆に気づかなかった。ブラックの方がレアケースなのだ。
「天晴れな太刀筋……拙者の体に……美しき傷……よもやそな子犬が……世界とは……なんと広きことか……」
ため息を1つ。そこから落ち武者の雰囲気が変わる。
「して……確信した……お主らが……この騒ぎの元凶……違いない……」
(……本気ってとこか?)
真夜中で暗いはずの世界で、落ち武者の周りにだけぼんやりと発光しているように感じる。否、本当に発光しているのだ。強者同士の戦いにおいて、「〇〇のように感じる」なんてものはない。黒ジャケットとしての戦歴の中で学んだことだ。
そのままおもむろに鞘から刀を抜き、刀身を露わにする。
「……して、2人まとめて…………斬らせてもらう」