異変
「龍兵隊反応! ロストしました!」
「滞在させていた分の兵もロスト! 生体反応ありません!」
同時刻、新潟派閥の司令室では、急激に反応を減らした龍兵隊の存在に、防衛基地が建って以来の盛り上がりを見せていた。
「防衛基地に残った龍を送れないのか!」
「駄目です! 防衛基地までの通路に、東京派閥の兵士を確認しました! 送っても防がれます!」
とは言っても、良い方面での盛り上がりでは当然なく、各オペレーターの額には、大量の冷や汗が浮かんでいた。
「どうする……? どうやって……?」
そんな中でも、幸せを通り越して、青染めた顔をしているのは、この作戦を立案した本人である龍ヶ崎亮介その人だ。
龍兵隊のほとんどを失った挙句、東京派閥に侵入経路を掴まれ、最終防衛ラインまで兵を送ることすら不可能になってしまった。
今でこさ顔をつむかせ、ぶつぶつと疑問をつぶやくだけで済んでいるが、次の瞬間には狂乱状態になり、施設してしまってもおかしくない。
そのレベルのヤラカシをしてしまっていた。
(これで龍兵隊はせいぜい1部隊程度のみ……こっちの戦力は犯罪者を含めて精々1000を超える程度……か……)
こんな序盤も序盤、それどころか、序盤と呼べるのかどうかも怪しいようなタイミングで、総戦力の半分近くを失ってしまった。いくら周りも賛成して実行された作戦だったとは言え、やってはいけないとんでもないミスに、龍ヶ崎亮介の身体は潰れそうなほどの責任感に襲われていた。
「どうする……? 物量差じゃもう勝てない……親父がいるにしても、雑魚処理に力を使わせるのは得策じゃない……」
今にも鬱になってしまいそうな様子の亮介には、他人には近づきがたいオーラが纏わりついていた。それこそ家族でもない限り、触れたがらないほどの。
そう。家族でもない限り……
「……亮介」
「……ロカか」
家族なら、話は別だ。