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襲撃 その1

 投稿じゃああああああ!!!! ウシャアアアアアア!!!!

 俺が叫んだのと、空から無数の光が降り注いできたのはほぼ同時だった。


 全くの同時、射出と叫びが同じでは、他の人の耳に入る頃には光に打ち抜かれている。


 つまり、時間など最初から存在していなかった。俺たちにできるのは、心に帯刀していた剣を抜くことのみ。


「宗太郎!!」


「わかってる!!」


 向かってくる光の線。手を抜く余裕はない。



「「魔剣捻出!!」」



「村雨!!」



 俺は鞘を持った日本刀を。



「ストームブリンガー!!」



 鋭く大きい、まるで槍のような大剣を。



「弾くぞ!!」



「だからわかってるって!!」



 剣の銀光と、光の金光が衝突する。甲高い金属の音が鳴り響くが、それも一瞬で、金の光は銀の光に押し負け、光の線を2つに割き、その軌道をねじまげる。

 

 その後に起きる爆風と、地面や防衛基地にぶつかって起きる地鳴り。衝撃によって積もっていた雪が隆起し、砂煙ならぬ雪煙になって、この場所への攻撃を体のしびれとなり伝えてくる。辺り一面雪景色だった場所は、ものの一瞬で戦場へと変わった。


 目の前は風に乗った雪で真っ白に染まり、1歩前の視界もわからない。ただ、その中を流れる光の線を、俺は確実に視界に捉えていた。


(威力は問題じゃない……が、この数は……!)


 1個1個の光は小さく、簡単に弾ける。その簡単さは逆に驚くレベルで、文化祭での黒ジャケット戦で幾度となくぶつけられた瓦礫よりも脆弱だ。


「っ……チィ! どんだけくんだよ……!?」


 隣で宗太郎がぼやいた言葉の通り、問題なのはその量。数千数万じゃない。数億単位で振り注いでくる。


(右に3。左に2。右斜め上に3。左下に8つ。真下に12。右に10。真上に――――)


 あまりにも数が多すぎて、思考を回してはいられない。あまりにも数が多すぎる。多すぎるのだが、自分たちの周りだけなら、どうにかできない脅威じゃない。依然として余裕はないが、このまま行けば凌ぎ切れる。


 そんな時、顔に何かが付着し、頬を濡らす。


「んあ……?」


 雪が肌に当たるのとは違う感覚がしたので、思わず刀持ってない方の手で濡れた部分に触れた。


「おい……! そんなことしてる場合かよ!」


 宗太郎が光の線を弾きながら、隣で文句を垂れるが、今の俺には、そんな事は耳に入らなかった。頬に当たった感覚が、他とは少し違っていたからだ。


 水分で濡らされた感覚がしたから雪ではない。では、光の線で雪が溶けた水かと一瞬思ったが、妙に暖かい。人によっては、暑いと言い切れる温度だ。


 こんなことを言っているが、別にそんな重大に捉えているわけではない。ただ単に他とは違う感覚に違和感を覚えて、反射的に確認したくなっただけ。


(右下に6。上に7。正面に8……ッ!?)


 しかし、それはあまりにも強く。


「これ……は……」


 これは戦争だと伝えていた。


「血……」


 雪と真逆の、暖かい血。目の前が真っ白の世界の中で、確実にどこかに死人が出ている。1歩先が戦争になっていることを強く訴えかけていた。


 瞬間、風がさらに吹き上がる。光の線の攻撃がより過激になってきた証拠だ。雪が風に乗って、吹き荒れる姿はまるで吹雪。俺たちは登山でもしているのかと錯覚させてくる。


 しかし、変化は風が強くなっただけではなかった。白く光る雪の中に、赤いつぶつぶが混じって飛び散り始めたのだ。


「これって……!?」


 宗太郎も異変に気づいたらしく、凝らしていた目を大きく見張り、大きく動揺する。


「宗太郎!! 動揺するな!! 気を強く持て!!」


「……く、わかってる! わかってるけど……!」


 宗太郎の目からはまだ動揺の感情が見て取れる。だが、手が止まらない程度には落ち着くことに成功したようだ。


「とにかく弾き続けるしかない! 気張れよ!」


 そこからはひたすらに光の線を弾く作業だった。1歩先すら見えない真っ白な世界の中で、目の前に、突如として現れる光の線を反応で弾く。そこに思考の余地はなく、見えたから弾く、感じたから剣を動かす。幾度となく現れる赤い差し色に悪寒が走る。その繰り返しだった。


 それからどれだけ経っただろうか。光の線が段々と少なくなり、風が弱くなってくると、村雨で当たり一面に水を飛ばし、空中に浮遊した邪魔な雪を叩き落とす。


 水で余分な雪が地面に落ち、視界の先が見えるようになると、俺はすぐさま村雨を鞘に戻し、抜刀の構えを取る。


(この状況……基地の外にいた人たちは生きていないだろう……なら、この先にいる影は間違いなく敵のはずだ!)


 襲撃を引き起こした人物に一太刀浴びせるため、心の中の炎を燃やし、刀を握る握力をめちゃくちゃに強める。


(不穏な影が見えたら……斬る!! 必ず!!)


 俺の思いに呼応するように、ゆらりと見える不穏な影。見るだけで冷や汗が大量に吹き出る感覚。こいつが元凶なのだと確信する。



「食らえ!!」



 抜刀。刀身を抜いた鞘から水流がほとばしり、体を動かす以上に水が蠢く。その様子はまるで刀に命が宿ったようだ。



 剣と体が水に乗り、影との差を一気に縮める。



 抜いた刀はまだ加速する。流れる水流は薄く細くなり、鋭利な刃物のように――――



(取った!!)



 結果的に言うと、この一閃は直撃することになる。



「……何だよもう……雄馬くん?」



「桃……鈴……様?」



 何度も見てきた可愛らしい手のひらに。


 





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― 新着の感想 ―
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