拠点作り
そこから数日経ち、決戦の群馬派閥、山岳地帯。
お互いに姿は視認している。だが、なんとお互いに攻撃することはなく、お互いが見えていないかのように、淡々と準備が進められていた。
これには複数の思惑が存在するが、その中でも1番の理由はお互いの安全地帯の確保だった。
戦争は近くに安全地帯があってこそ。これは戦国時代から変わらぬことだ。
スキルと技術を併用し、両者とも第一防衛ライン、第二防衛ライン、第三防衛ライン、最終防衛ラインを作り、一ラインずつに拠点となる要塞を形成した。
……と、言うのは表向きだけの話。
実のところ、東京派閥は隠密部隊を、新潟派閥は忍び
たちを派遣し、どうなっているのかを確認しに来ていた。
だが、そこは両者とも最高クラスの武力を持つ派閥同士。侵入して来ようものなら、実力者がすぐにでも気配を察知し、始末されていた。
ならばと小型ロボットを送り込むが、それでも察知されてしまう。
ならばならばと、止めどなく行われる隠密戦の応酬。その結果は――――
新潟派閥に軍配があがった。
なぜ新潟派閥が勝利したのか、それには、新潟派閥にしかない『強み』が起因していた。
『本部に伝達! 敵の拠点となる要塞を発見!』
「よくやった"龍兵隊"。数名を残し、直ちに帰還しろ」
『了解!』
その強みとは、空を駆ける幻獣。龍の存在であった。
偵察ドローンや偵察部隊は、単純に察知して潰される。ならば、さらに高い位置。飛行できるスキル持ちでも、空気が薄くて飛行できない天高くから索敵すれば良い。
東京派閥もやろうと思えばできなくは無いだろう。しかし、もともとそれを可能にする手段を持っていた新潟派閥がいちはやくそれを可能にした。
よって、新潟派閥は最終防衛ラインに建設された拠点を見つけ出し、前哨戦のみならず、戦争前の情報戦でも勝利した。
しかし、それでも東京派閥の面々から余裕の表情は崩れない。
それは、自身の幅への圧倒的な自信からか、それとも。
「…………いる」
もう、全てわかっているからか。