表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

757/783

ハカセの目的

「生涯においての目標?」


 生涯においての目標といざ言われると、少し悩んでしまう。俺の生涯の目標は当然復讐だが、いざ思い返してみれば、ハカセの目的は全くわかっていなかった。


 東京派閥で初めて出会った時も、神奈川派閥で一緒に暴れた時も、ハカセは協力してくれるだけだった。


(よく考えてみると、かなり気になってくるな……)


 袖女と一緒に新潟派閥へ行ったのと一緒だ。いざ気になってくると、どんどん膨らんでもう止まらなくなってくる。


「知りたい。んでなんなん?」


「なんで急に口調が変わった……? まぁ良いわ。単刀直入に言うと、ワシには東京派閥に忘れ物をしに行っておるんだ」


「ほう?」


(忘れ物……?)


「それを取り戻したい。それがワシの……生涯の目的じゃ」


 忘れ物と言う単語だけを聞くと、そこまで大したものには聞こえないが、俺が知らないことをいくつも知っているハカセのことだ。その忘れ物と言うのも、とんでもなく重要なものなのだろう。


(そうか……だからいつも、東京派閥関連の情報を調べていたのか……)


 別の体に憑依した時も東京派閥に居たし、今回も東京派閥の情報を調べていたらしい。目的を知った後だと、東京派閥に対しての執着心にも納得がいく。


「じゃあ、良かったなハカセ。あんたは幸運だぜ」


「……? 何が……」


 ペストマスクで表情は見えないが、きょとんとした顔をしているのが雰囲気でわかる。


(当たり前だろ……)


「知ってんだろ。俺も東京に恨みがあるんだ……俺が叶えてやるよ。その願い」


 ハカセには目標を叶えても返し切れない位の借りがある。俺の復讐のついでに、忘れ物なんていくらでも取りに行ってやる。


「……ブッ、ブハハ!! こんな老人を口説いてどうすんじゃ! クハハハハハハ!!」


 ハカセはひたすらに笑い続ける。笑って、笑って、笑い続けて……ついにそれは止まった。


「ククク……まぁ、ありがたく受け取っておくわ」


「おう。ありがたく受け取っておけ」


 ハカセの雰囲気が柔らかいものに変わる。やっぱりハカセと最後に話せて良かった。



 袖女のまじないに、ハカセとの最後の談笑。戦争の前に、これ以上無いほどの時間を貰った。



 最悪の未来なんて想像できない。その間逆だ。最高の未来しか思い描けない。



(……ん? 負けフラグか? これ)



 ……まぁ、問題ないだろう!









 ――――









 ……ああ、楽しい。



 戦争の前だと言うのに、ワシは楽しさと言う感情を抱いてしまっている。



 成金野郎のボディーガードにひぃひぃ言っていたフツメンが嘘のように。



(息子がいれば……こんな感じじゃったんじゃろうか……)



 今は、こんなにも頼もしい。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ