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車の中で

 ガタンゴトン。装甲車が揺れる。


 昨今の整備された道路の上ではとてもじゃないが感じられない揺れ。整備されていない道路を進むジャリジャリとした音。吸って吐くとわかる。空気の綺麗さ。意外にも今までにない体験で、俺の心は浮きに浮きまくっていた。


「戦争前とは思えんの……」


「ウウ?」


「しゃーねーだろ。こういうのは初めてなんだ」


 ハカセに呆れられるが、俺はそんなこと気にせず、窓の外を眺める。


 窓の外はそこまで景色と言えるものではなく、木と葉っぱの上に積まれた雪で覆われているだけだが、それでも俺には目新しく見えた。


「戦争の景色は慣れてるけど、こういう自然はあんまり触れてないから……楽しいもんだな」


 視察に行った時はスピード重視で、景色を楽しむことなんて頭になかったが、いざ見れる余裕が生まれると、これもなかなかオツなものだ。これが終わったら装甲車丸ごと借りて、袖女と一緒に回るのもありかもしれない。


「ところで……聞いてなかったが、視察の結果はどうじゃった? 何か収穫はあったか?」


「そりゃアリアリのアリだよ……な? ブラック」


「ワウ!」


 袖女とのあれやそれやで爛れた性活……生活を続けていた俺ではあるが、だからといって、戦闘面のことをおろそかにしていたわけではない。むしろそっちがメイン。ブラックとともに練り上げた作戦は、必ず実を結ぶはずだ。


(今回の戦争は集団戦……なら、尚のこと刺さる……!)


 集団で立てた作戦は、イレギュラーが起こりすぎて刺さりにくい。だが、俺とブラックのみならイレギュラー要素が少なくなる。全く持って問題ない。


「アリアリではあるんだが……」


「……話は聞いておる。災難だったな」


 ハカセにも後方待機の件は伝わっていたようだ。


「全くだぜ……ま、しょうがねぇがな」


「にしても、じゃ。新潟派閥は愚かな派閥ではならん。奴らが、直前にそんなことを言ってくるとは……」


「仲間割れでもしたんだろ?」


「いや……それだけでは……ううむ……」


 考え込む姿勢を取るが、俺にとっては理由なんてどうでもいい。とにかく今が肝心だ……が、おそらくこれが最後の休息となる。少し世間話をしたくなった俺は、ハカセに今までのことについて質問した。


「そういうハカセは何してたんだ? ちょっとは聞かせてくれよ」


「新潟内部への潜入と、そこから東京派閥の情報を抜き取っておった」


 普通に爆弾発言。思わず顔が引き攣る。


「ハカセ……そんなパッと行っていいことじゃないぞ……?」


「オヌシに隠しても仕方あるまい」


 そう言いながら、ハカセはバッグの中から水筒を取り出し、開け閉めを繰り返しながら、あくまで独り言のようにつぶやいた。


「……仕方ない……じゃから、オヌシには話しておく。ワシの……ワシの、生涯においての目的を」


 一世一代の戦争の前に、ずっと謎だったハカセの目的が明らかとなる。

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