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折衷案の真相

 ここからはさっさと行きますよー! 濃厚なものを食べた後はあっさりいきたいですよね

 少しの時が経ち、新潟派閥の最終準備も終え、ついに出陣すると言うことになり、新潟のピリつきも最高潮を迎えようとしていた。



 そんな中、俺はと言うと……



()()()()だと!? ふざけんなぁ!!!!」



 違う意味でピリついていた。



 時は数分前、戦争前はさすがにということで、日々の鍛錬を一旦取りやめ、家で体を休めていると、俺個人に龍ヶ崎ロカから電話が来たのが始まりだった。


『もしもし……急なのだけれど、時間を貰えるかしら』


 声色が妙に暗い。何か……おそらく、龍ヶ崎ロカにとって良くない何かがあったのだろう。


 集団での行動は報連相が大事だ。聞かない手はないと言わんばかりに二つ返事で承諾すると、どうやらあちらから来てくれるらしく、準備でき次第向かうと言った。


(楽で助かる……)


「……女ですか? ねぇ、女ですよね?」


 スマホから女の声が聞こえ、ハイライトのない瞳で詰め寄ってくる袖女を適当にあしらいながら、来客が来るのを待った。









 ――――









「……失礼します」


「邪魔するぞい」


 待つ。と言ったが、実際には数分も待たず、インターホンを鳴らし、龍ヶ崎ロカと……なんと、龍ヶ崎震巻が正装で入ってきた。


 龍ヶ崎ロカはともかく、龍ヶ崎震巻が和服でないことに、驚きと、それ以上に、これから話されることがそんなにシリアスなことなのかと身構えてしまう。


「……粗茶ですが」


 リビングにあげ、テーブルに掛けさせると、いまだに少し不服顔な袖女に茶を出させ、対談の準備を整えた。


「……あんまり長引いても面倒だ。単刀直入に言え」


 さっさと済ませろと言う俺に、龍ヶ崎……もういいや。ロカはコクリと頷き、口を開いた。


「……実は、あなたの処遇……使い方が少し変わったの」


「と、言うと?」


「…………」


(こいつ……)


 意を決して話し始めたロカだったが、肝心なところで黙ってしまった。正直言って腹が立つ。さっさと話せってんだ。


 早く言えと急かそうと、口を開きそうになったその時、なかなか離さないロカに変わって、震巻が結論からきっちりと話し切った。


「前線で使う予定じゃったが、変更で後方に待機することになった。すまん」


(……なに?)


 衝撃の一言。もともと俺は犯罪者集団と同じく、前線に配置されるものとばかり思っていたからだ。


「……なんでそうなった?」


「それは……言えないわ」


 ロカの返答を聞き、俺は少し思案する。


 この戦争は新潟派閥にとって、派閥人生をかけた一大ミッションのはず。絶対に成功させたいからこそ、俺やグリードウーマンに声をかけているのだ。そんな俺に対して、戦争直前に後方待機の命令が出ると言う事は……


(こいつら……内部で揉めたな?)


 それしかありえない。十中八九、新潟の上層部の連中の誰かが俺のことを気に入らなくて、俺を下がらせろとか駄々をこねだしたのだろう。


(龍ヶ崎震巻は東京派閥の強さを知っているから無い……となると、戦争を知らない大臣か若い奴の仕業か……)


 俺は大きくため息をつく。新潟につき、戦争の準備も滞りなく進み、直前のところで、こんな止まり方をするとは思わなかった。


「あ、安心して! 後方待機なのは最初の方だけで、時間を見てちゃんと予定通り前には出します!」


「…………」


 ロカが慌ててフォローの言葉を入れるが、俺にとってはそれすらも怪しい。内部で、しかもこんな直前で降ろされて、最終的にはちゃんと戻すと言われてもって感じだ。


「……確証はあるのか?」


「あ、えっと……」


「問題ない。約束を破ったその時は――――







ワシがそいつを焼き殺す」







(……よし。言質はとった)


「……なるほど。なら安心だ」


 その後、ロカは何度も何度も俺に謝ってきていたが、口だけの謝罪等必要ないと言わんばかりにあしらい、とっとと帰らせた。


「では……」


「邪魔したの」


「ああ……来てくれてありがとう」


(これ以上奴らがいてプラスはない……それに、欲しかったものも手に入った)


 ロカと震巻が帰ったのを確認すると、袖女に向き直り、確認を入れる。


「おい。ちゃんと()()()か?」


「ええ……録音は取れましたよ。あなたの処遇は不満ですけど」


 袖女はそう言いながら、ポケットに隠していたボイスレコーダーを取り出す。


「安心しろ。俺も不満だ」


 俺の気づかない間に、体はいつの間にか握りこぶしを作り、プルプルと振るわせている。気づいた時にはもう遅く、息を大きく吸い込み……





 そして、冒頭に戻る。

 







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