不穏分子
龍ヶ崎龍ヶ崎言うのも怠いので、今回から強調したい時以外は「亮介」や「ロカ」と書くようにします。
龍屋敷では、ほぼ間近に迫った東京派閥との戦争に向けて、最終会議が行われていた。
出席メンバーは龍ヶ崎震巻を含め、龍ヶ崎ロカや龍ヶ崎亮介等、龍ヶ崎家の主力メンバーが多数出席している。
「では、作戦としては犯罪者部隊を前線に敷き、我らを含めた龍兵隊のブレスで一網打尽にすると言うことで……」
「龍兵隊はもちろんのこと、犯罪者部隊にはグリードウーマンや黒ジャケットがいますからね。前線の維持には期待ができますよ」
戦争に向けた作戦会議、その作戦を詰めているところだった。その中の1人、歴史厨の男が作戦を決めようとしたところで、龍ヶ崎ロカが待ったをかける。
「待って。いくら龍兵隊のブレスが強いと言っても、何回も撃てるわけじゃないわ。再発動時間が必要よ」
「……では、どうすると?」
「龍兵隊にも隊列を組ませましょう。前列の龍兵がブレスを吐いたらすぐに後列に下り、後列の龍兵が前列に立ってブレスを吐く。その間に後列に下がった龍兵はブレスを再発動する時間を稼ぐ……そうすれば、理論上は無限にブレスを吐くことが可能になるはずよ」
龍ヶ崎ロカの話を聞いた歴史厨は、キラリと目を輝かせる。
「ほう! 『長篠の戦い』方式ですね! 長篠の戦いと言えば、織田信長と武田勝頼の因縁がとても興味深く、その中でも特に――――」
「その話はいいわ……それより、他のみんなはこれで構わない? 異論は無いかしら?」
1人を除き、会議に出席している全員が首を縦に振った。
「亮介……? 亮介!」
その1人とは、龍ヶ崎震巻のこの1人であり、今回の戦争の総指揮を務める龍ヶ崎亮介であった。
しかし、当の龍ヶ崎亮介は心ここに在らずと言った感じであり、ロカに怒鳴られ、やっと気がついたようであった。
「はっ……! なんだロカか。どうした? そんな声を投げて……」
「なんだじゃないわよ。私が考えた作戦にあなただけ同意してないのよ。不満なところがあるなら言ってくれない?」
そこまで言われてやっと今の状況が理解できたらしく、隣の奴からこっそり話を聞くと、ようやく首を縦に振った。
「ああ……いいんじゃねーか? 良い作戦だと思うぜ。うん」
いつもなら、突っかかってきそうな亮介が変にもかが良いところに、ロカは違和感を感じた。
「……どうしたの? やっぱり、何か思っているところが?」
「いや……」
「引っかかる部分があるなら話せ。次、集まって話し合えるかわからんからな」
横から震巻が口を挟む。煮え切らない態度が鼻についたらしい。亮介も震巻の苛立ちに気がついたらしく、観念して話し始めた。
「……本当に作戦には、異論はねえんだ。ただ、1つお願いがあってな」
そう言いながら、ポケットからとある人物の映った写真を撮り出す。
「この、黒ジャケットを作戦から外したい」
亮介の言葉が周りに伝わった途端、会議に出席していた全員が、空気感が変わるのを感じた。