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ふわふわ

 すいません。テンポが悪いのは承知ですが、ここだけは濃厚に書かせてください。

 袖女が入ってきたせいで、うとうとしていた意識が一気に覚醒。先ほどまで半目だったまぶたはギンギン。アソコもギンギンになりそうだ。


 湯の波と足で何とか隠れてはいるが、いつばれてもおかしくない。もう絶対狙ってるだろこいつ。


「……狭いですね。もうちょい寄せれません?」


「無理だし、なんでお前のために体を寄せにゃならん」


 これ以上体を動かすとヤバい。いろんな意味で。


(隠しきれなくな――――)


 が、そんな俺の思いなど知らずに、袖女は水面も胸も揺らして、膝の上に乗ってきた。


「…………」


「んしょっ……と……」


 尻が柔らかいことは理解していた。男の尻も柔らかいと言えば柔らかいからだ。


 しかし、今、膝の上に乗っている尻は訳が違った。


 男のものとは比較にならないスベスベ感に加えて、白くシミ一つない桃尻。サイズも俺の1.5倍は大きい。他にも全然違うところはあるが、特に大きいのが肉感だ。


 男のダルみによる柔らかさと言えばいいのか、あのただの肉って感じが全くない。何と言うのだろう……尻についた脂肪を触っているのではなく、しっかりと尻を触っている感覚だ。


 ここまで長々と語ってきたが、何が言いたいのかと言うと。





「……あっ、おっき……」





 最高すぎ。





「へ、へ……へ……」


 リトル伸太がビックサイズになってしまったのを。その瞬間を目撃されてしまった俺は、完全に全てをあきらめた。


 若干、全身に入れていた力をふっと緩め、袖女に見られるままになる。


「わ〜……こんな風になるんだ」


「殺してくれ」


 思わず、といった感じで漏れた言葉は、男のプライドを完全に折りきり、感情をそのまま言葉として吐き出すに至った。


「恥ずかしがるんじゃありません……触っていいですか?」


「いや駄目無理」


 しかし、リトル伸太は否定とは裏腹にピクリと反応する。


「こっちは触って欲しそうですけど?」


「整理現象だよ。整理現象」


 頭が真っ白になっている俺には、袖女の言葉にアンサーを返すことしかできない。……リトル伸太は馬鹿みたいに反応しているのに。


「……もう、いいんじゃないですか?」


「何を?」


 袖女は目を細め、優しい笑顔を浮かべる。


「我慢しなくていいんじゃないですかって言ってるんです」


 なんだ。そんなことか。


「我慢なんてしてない。あの日から、我慢するのはやめたんだ」


 田中伸太から黒ジャケットが生まれた日。ハカセに解放された俺は、関係のない人まで殺して殺して殺しまくり、復讐のために全てを捧げてきたんだ。


 しかし、袖女はクスリと笑うだけで、優しい笑みを崩さない。


「確かに、あなたの態度は我慢してる人のじゃないですね……でも、私が言っているのは体の方じゃないです」


「何?」


「心の方ですよ」


 馬鹿なことを言うんじゃない。心も体も自由(フリー)だから、殺しができるんだ。


「違いますよ」


「何も言ってないぞ」


「顔が言ってますよ」


「……今の俺はそんなにわかりやすいのか?」


 袖女の言葉は俺の言葉で止まりはしない。袖女はどんどん言葉を綴る。


「……心を殺してるから殺せてるんですよ。殺しなんてして、心が無事なわけないじゃないですか」


「……それは」


 俺の心は傷ついているのかそうでないのか。その答えははっきり言ってわからない。



 人を殺して快楽を覚えたあの日。俺はそういう人間だったんだと思った。



 罪悪感で胸が痛むなんて一度もなかった。


 

「今更、人を殺すななんて言いません。だからせめて……」



 両手を広げて、一言。







「私で、ぜーんぶ吐き出して?」







 ぷつん。と、自分の中の何かが切れた音がして。



 気がつくと、汗と水と、なんやかんやでグショグショになったベッドの上にいた。





 

 おめでとうございます。

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