願ってもない機会
次の日。戦場となるであろう地帯をあらかた探索し終わり、位置的なアドバンテージを得た俺は、いてもたってもいられず、ブラックと外に出て、理由もなく軍事基地をぶらついていた。
「…………」
「……ワウ?」
もちろん、これにも意図が……あるわけない。ハカセから言われたことは一通りやった。英気を養うことも重要とは言え、進軍まであと5日以上ある。何もせずに休んでいるのは俺の性格が許さなかった。
(グリードウーマンあたりと模擬戦でもしてみるか? いや、今更あんな奴とやってもな……)
グリードウーマンだろうが偽黒ジャケットだろうが、もう俺にとっては相手にならない。そんな奴に時間を割くほど暇ではない。
となると、自主練ぐらいしかやることがないのだが……
「他に……俺とやり合えるぐらい強い相手は……」
『おい。伸太』
そんな時だった。周りに人がいない中で聞こえた声は、間違いなく遠隔で話しかけられていることがわかる。声色的にも、ハカセで間違いなかった。
「びっくりした……急に話しかけてくんなよ。驚くじゃないか」
『悪い悪い……で、伸太よ。今から時間はあるかの?』
「今から……? まぁ、暇ではあるが……何かあったのか?」
ハカセはかなりの仕事人で、用がある時以外は連絡をかけてこない。そんな人間が、こんな真っ昼間から連絡をかけてきたと言うことは、プラスだろうがマイナスだろうが、何か重要な事柄があったはず。
いろいろな可能性を頭の上に浮かばせながら、話を聞く姿勢をとり……
「龍ヶ崎震巻が相手をしてくれるらしいが……来る「すぐ向かう」……そうか」
気づけば人目もはばからず飛び上がり、ハカセの元へ向かった。
――――
数分後。飛び上がり飛行して向かったのは良いものの、肝心の居場所をハカセから聞いておらず、結局到着したのは数分後の話となった。
「ここがハカセから聞いた龍屋敷ってやつか……」
ハカセから聞いた場所には、ハカセに言われた通り、巨大な屋敷が建っていた。
100年以上前ならまだしも、現代に生きる俺からすれば、こうした和風の建物と言うのは、博物館に寄贈されていた小さな模型やそれを模したコンセプトの旅館等でしか見たことがなかった。
「どうしよっかな……」
目の前にあるでかい門。これを開ければ入れることは確実なのだが、無断で開けていいのかわからない。インターホンは無いのかと思って探したのだが、それらしきものは見当たらなかった。
(……ええい。ままよ)
怒られたら怒られたでいい。その考えのもと、両手で門をこじ開けようとしたその時!!
「……ハグ待ちか?」
もうなんか、ハカセが門開けてた……うん。
「アッ……ナンデモナイです……ハイ……」