行動しかない毎日
次の日、その日はいつもと違い、とても気持ちの良い朝だった。いや、朝がいいわけではない。俺の気持ちが晴れやかだから、朝が輝いて見えるのだ。
「はーい。朝で……なんだ、起きてるんですね」
「まぁな……できてる?」
「朝ご飯はできてますよ……あ」
朝ご飯ができてるかどうかの確認を取った瞬間、袖女の足元から黒い影が駆け抜けた。
「ワンワンワン!!」
正体は当然ブラックである。いつもじゃれついてきているが、今回は首元をいつも以上に舐め、特別じゃれついてきている。昨日の夜は1人で居たくて、無理矢理突っぱねたため、次こそは離れてたまるかと躍起になっているのだろう。
「はいはい。悪かったな……今日は連れて行ってやるぞ」
「ワンワン!!」
しっぽの振りが途端に強くなる。前から思っていたが、やっぱりこいつ、人間の言葉を理解してるんじゃないだろうか。
そこからは特段特別なことはなく、顔洗いと歯磨きをし、朝飯を食べ、冬用の少し厚めの着替えをし……
「行ってくるわ」
「ワン!」
「はーい。いってらっしゃい」
袖女の声を受けながら、いつもの黒いジャケットを羽織り、外の世界へのドアを開いた。
――――
ザクザクザク。足の音が聞こえる。
2ヶ月ほど前とはまるで違う。そこまでしっかりと振り積もってはいないが、所々白いところがある地面に、薄く張った氷を砕きながら歩くのは、なんだか少し気持ちが良い。
ブラックは俺と対称的で、ブラックは素手……? 素足なので冷たい地面が嫌なのか、いつもよりも早く足を上げ、早歩きっぽい挙動をしていた。
「くっくっく……ん、ここだな」
早歩きをしているように見えながらも、普通に歩く俺と同じペースで進むため、少し変な動きをするブラックにクスリとしながら、俺は目的の場所へたどり着いた。
「おお……ほんとに鍋専門店だ」
そこにあったのは、なんと鍋専門店。しかもただの鍋専門店ではない。俺らのような兵士の英気を養うため、軍事基地に特別な許諾を得て配置された24時間営業の鍋専門店なのだ。
「予約を撮ってくれてるはずだけど……「早く来過ぎじゃぞ」……悪い。鍋が楽しみでな」
そして、そんな人気店の予約を取った人物はもちろん俺ではない。
「くくく……嘘をつけ」
「本当だよ……ハカセ」