チクタクチクタク
「……お前たちも来ていたのか」
「俺らもそう思ってるよ。ったく、俺だけだと思ったのによ……」
俺、騎道雄馬は先日、ラインであの方に呼ばれ、あの方が入院されている病院の部屋の前にたどり着いた。
他に誰が来る等の話はなかったため、自分1人だと思っていたのだが、いざ来てみると騎士団の残り3人が群がっており、今に至る。
「お前たちもあの方に呼ばれたのか?」
「ああ……少し前まで面会拒否されてたのにな」
宗太郎が答える。その間は少し怪訝そうな顔しており、あの方が俺たちを呼んだわけが読めなそうにしていた。
実際俺もわからない。今のあの方は療養中。動ける状態ではないし、少し前まで意識も朦朧としていた。だからこそ、ラインが来た時は驚愕したし、少しでも早く駆けつけようと言う思いと、会うのならそれ相応の身だしなみをしてからにしようと言う思いがぶつかり合いながら家を飛び出したのだから。
「そんなことどうでもいいでしょ。私たちの疑問は、すぐに晴れるよ」
「……そうだな。では行くとしよう」
意を決し、騎士団の代表として、俺は失礼しますと声をかけた後、ゆっくりと自動スライド式のドアを開けた。
「……あ! いらっしゃい」
そこにいたのは、いつもと変わらぬ笑顔を浮かべ、自分たちを歓迎してくれるあの方、桃鈴様。そして――――
「どうも、皆さん。お久しぶりですね」
異能大臣が、そこにいた。
――――
怪訝な表情をしながら、みんなは僕のベッドの横に隊列を組むようにして立つ。みんなしばらく合っていなかったけど、顔色は悪そうではないのが何より。むしろ良くないと困る。これから僕の目的のために働いてもらわないといけないのだから。
「ありがとね。僕のお願いを聞いて、集まってくれて」
「もちろんですよ! 桃鈴様のためなら、たとえ火の中水の中!」
胸を右手でどんと叩き、鼻息を荒らげながら優斗くんは返事をする。本当に扱いやすいなぁ。
「……私も桃鈴様のお声がけはうれしく思うのですが……」
雄馬くんが続けて言葉を出すが、優斗くんと違い、最後の方に少し言葉を濁し、言葉を濁した原因である人物に目を向けながら、その先の言葉を溢した。
「……なぜ、異能大臣がここに?」
異能大臣。外務大臣と内務大臣が原因不明の死を遂げた今、1人で東京派閥を切り盛りしている実質的なトップの人間だ。
「ふふ……改めてご機嫌よう皆さん。自己紹介は……必要なさそうですね」
「話を逸らさないでいただきたい。私はあなたがなぜここにいるのかを聞きたいのです」
「いやはや、全くその通りで。ですが、私もわからないんですよね」
「……何ですと?」
「そうだよ。異能大臣はみんなとおんなじなんだよ」
続けた僕の言葉に雄馬くんは目元をピクリとヒクつかせ、表情を歪ませる。
「……同じ?」
「そ、同じ」
何も変わらない。異能大臣もみんなも、僕からしたら利用させてもらうだけなんだから。何も変わらないのだ。
「異能大臣はね。僕が呼ばせて貰ったんだ」
まだ、足りないけどね。