決定した事項
否定の言葉を受け止める覚悟の準備をしていた新人に向けられたのは、予想通りの否定の言葉……ではなく、意外にも賛同の言葉だった。
「……その意見、採用しましょう」
「……っ! 大臣! それは……!」
その場の流れで採用という言葉を使った異能大臣に、その他の重役が待ったをかける。
「彼の言う通り、タイミングとしてはこれ以上のタイミングはないでしょう。投入するべきですよ」
「"彼女"は我々にとっての切り札です! ここで使うのは時期尚早ですぞ!」
重役の言葉に、他のメンツもうんうんと頷く。
異能大臣とその他でここまで意見が食い違うのには、それぞれの価値観に違いがあるからだ。"中身"と"器"に焦点を置いている異能大臣と、"彼女"に焦点を置いているその他で食い違いが起きてしまっている。
しかし、今の東京派閥は異能大臣の絶対政権。完全なる独壇場だ。ここで好き勝手やらない精神を持ち合わせていない。
「いいえ。だからこそこのタイミングなのですよ。それに、私は"彼女"を出すなんて一言も言っていません」
「え……」
「"彼女"は素晴らしい女性です。そして、素晴らしい女性には……」
異能大臣はスマホを取り出し、ポチポチと画面をタップする。
「ナイト様はつきものでしょう?」
『型式シリーズ。起動』