事後会議
袖女の案を一旦は保留にし、少し気まずい感じで帰路についた俺たちだが、帰る途中、龍ヶ崎が言っていたことを思い出した。
今回の戦争、その一旦の終わりに、事後会議を設けると言っていたのだ。
大部分は遅刻でほぼ参加していないとは言え、最終的に参加して、ある程度の戦果を上げている。龍ヶ崎の発言的に、俺の力はかなり期待されているみたいだし、参加しないのは新潟派閥に悪印象を与えてしまう。
龍ヶ崎と言う女には興味ないが、新潟派閥と言う一団体にはご贔屓にしてもらわないと困る。
時間を見てみるとかなりギリギリ。どうやら女3人の争いが少々時間を送ってしまう結果となったらしい。
なので、俺たちは大急ぎで引き返し、認証を済ませて防衛基地にある会議実にたどり着いたわけだが……
「うわぁ〜……お堅いなぁ……」
と、会議が始まった途端そんな小言をつぶやいてしまう。それほどにこの会議は、俺が想像していたものとかけ離れていた。
よく考えてみると、俺は今の今まで、団体で動いたという経験がほとんどない。東京派閥、神奈川派閥、大阪派閥でも、ハカセや袖女、ブラックの助けがあったもののそれでも個人と言い切れるレベルのものだ。
「……ってか、これじゃ会議と言うより事後報告って感じだな」
そして、俺にとっての懸念点がもう一つ……
「まぁ、そんなもんですよ。作戦の大部分なんて、お偉いさんが勝手に決めることですからね」
「あー……団体はめんどくさいんだな」
(なんでこいついるんだよ……)
袖女がなぜか、なーぜーか、俺の隣にいると言うことだ。
(いやなんでだ……全くわからん……)
大阪派閥にいた時にお前も連れて行くとは言ったが、それはこの戦争が長くなることを懸念して、身の回りの世話役として呼んだだけで、戦わせる気は微塵もない。どうせ俺が全部解決する。なので、袖女にとって、これは聞く必要のない会議。行く前にそれを説明したのだ。
『いやです。それでも行きます』
何度言ってもその一点張りで、離れることを許してくれなかった。袖女には昔から引っ付き癖というか、とにかくとにかくひっついてくる癖があったが、最近はそれが過激化している気がする。
(ま、そういうところが可愛いところでもあるんだが……)
今回ばっかりは頼むからやめて欲しかった。おかげで周りからの恨みがましい視線がやばい。中には袖女のことを知っている輩もいるらしく、それらしき言葉が聞こえてきた。
嫉妬の視線で刺されまくる俺であったが、袖女に向けられた視線も少なくなかった。良い女を見る男の視線がほとんどなのは間違いないが、少し、と言うか約2人分、嫉妬の視線が混じっている。
「はぁ……」
「……なので、次の進軍は1週間後。この進軍が本格的なものになる。皆は準備を怠らないように!!」
今回の戦争そのものの総指揮を取る確か……亮介と言っただろうか? その男の言葉を皮切りに、みんなゾロゾロと退出し始めた。
俺も移動するとしよう。そう考えて席を立つと、袖女が一気に俺の片腕を抱き寄せ、胸に抱いた。
「おい……!」
「いいじゃないですか。どうせ注目されてますし、見せつけちゃいましょうよ」
こうなったら袖女は引かない。共同生活でわかっていることだった。
……それに、こういうのは初体験だ。ほんの少しだけ、何というか嬉しかった。