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三つ巴

 はっきり言おう……この展開、悪くない。


(男で生まれて……よかったって、今初めて感じてる――――)


 今、ここまで俺が生を感じてる理由は、たった一つしかない。


「横から口出ししないでもらえます? 私が話しているところなのですが」


「そっちこそ何? 誰に話しかけようと私の勝手でしょ」


 俺を巡り、両腕を胸に包まれながら、女が言い争うという、絶景がそこに広がっていたからだ。


「屁理屈言わないでください。彼のパクリ風勢が……大体、集められた傭兵の1人でしかないあなたと、今回の作戦の指揮を取っていた私……どちらの方が有意義かなんて、あなたのような馬鹿でもわかると思ったのですが?」


「ふん。馬鹿で申し訳なかったね。けど、この男は私に借りがあるの。早く出会ってるのはこの私。あなたよりも仲がいいってこと! さぁ! 老けたババアは帰った帰った!」


 老けたババア。そう言われた瞬間、龍ヶ崎は顔を真っ赤にし、声を荒らげて言い返す。


「なっ……! ば、ばばあ!? ババアですって!? 失礼な!! まだ23です! まだまだ若いんです〜!!」


「はっ! 23だろうがなんだろうが、私たちからすればババアですよババア! ねっ、黒ジャケットさん!」


「……え? あ、ああ……ま、まだまだ若いんじゃないか? さすがに……」


 困惑した表情を見せつつ、当たり障りのない返しをする。一見、戸惑っていそうに見えるかもしれないが、それに反し、脳内は人生の絶頂を感じていた。


(はああァァァ〜!! たまらん!! 非常にたまらん!!)


 腕に当たる柔らかい感触を感じながら、自分をめぐって言い争う女共を眺めるのが、こんなに素晴らしいと思わなかった。どことは言わないが一部分に非常にキく。


(んふふ〜……ここからどうしようか……正直、ずっとこのままでも良いのだが、ヒートアップしてくるとめんどくさそうだし……)


 女の争いはしんどいと聞く。こちらは戦争から帰ってきた身であり、正直疲れは溜まっている。女に囲まれているとは言え、それだけで体力回復はしない。ベッドがあったらそっちを優先してしまうかもしれないぐらいだ。


(つまり、俺の目指すべき最高路線は……この女2人、どちらかを連れ込みながら、ベッドインすること!! これだぁ!!)


 これだ。これしかない。女の感触は味わっていたい。しかし疲れを癒すためにベッドには入りたい。その両方を1度に叶える完璧過ぎる作戦。とっさに思いついた俺はやはり選ばれし存在なのか。


(どっちか1人、どっちか1人でも……)


 客観的に考えて、どちらの方がお近づきになりたいかと言うと、それは龍ヶ崎の方で間違いはない。地位的にこれから先、融通が効きそうだ。


 だが、自分の本能に従うのなら、俺はお姉さん系グラマラスよりも可愛い系グラマラスの方が好み。俺のコスプレをしていたこの女は、体こそ、グラマラスとは言えないものの、黒いフードから覗くその顔には、可愛らしさを感じる。


(どうする……やはりここは性癖に……いや待て! 俺も初体験なんだ。ここは優しくリードしてくれそうなお姉さんをセレクトするべきなのでは……)


 モーター並みに回転する脳は、オーバーヒートを気にせず、回転を続けていき…… ついに結論にたどり着いた。


(……何を日和っているんだ。最初からわかっていたじゃないか)


 顔が可愛い系で、俺のファンである偽黒ジャケット。セクシーでお姉さん系の龍ヶ崎。どちらも魅力的な女性であることに違いは無い。



 そんな2人に言い寄られる。なら、男として、漢としてやることなど、一つしかない。



()()必要なんかない……俺に必要だったのは……両方を食う度量だった!!)



 俺は行く。飛び込む。男なら行かずにはいられない未開の大地へと。



「2人とも、ここは冷静になって。両方とも俺と一緒に――――」



「な〜にしてるんですか〜?」



 時が止まる。



 顔から一気に脂汗が吹き出し、頬を伝ってアゴから落ちる。聞き覚えのあるその声はとても可愛らしく、しかし、長年の付き合いから、明らかに怒っていると、感じ取ることができ、おそるおそる声が聞こえた方を振り向くと……



「ごーはーんー……できてますよ〜?」



 般若がそこにいた。

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