新潟派閥へと到着
山々とビル街を飛び越え、上空を飛行しはや数時間。ついに新潟の大地が見えてきた。
「お、あれが……」
新潟派閥には、大阪派閥の賑やかな雰囲気や、神奈川派閥のように男女比がおかしいことになっていると言った特徴的な事は無い何ら変哲のない大地。よく言うと、誰でもすぐに馴染める所だ。
ある一点を除いて……
「龍……普通に飛んでんなぁ……」
鳥の代わりに龍が空を飛んでいる。その一点を除いて、本当に馴染み易い所だ。うん。
そんなこんなで、俺はついにたどり着いた。
戦争の火蓋を切った派閥。その本拠地、新潟派閥へと。
――――
俺はすぐさま関所に着地し、関所の人間に事情の説明と、先に袖女とブラックが到着しているかどうかの確認を取ると、警備員の注意喚起を受けつつ、ついに堂々と新潟派閥の大地へと足を踏み込んだ。
しかし、俺には新しい大地にたどり着いたときの高揚感はなく、その気持ちに応えるように、新潟派閥もどこか暗い真剣な雰囲気を醸し出していた。
「……うん。予想通りだな」
戦争を吹っ掛けた側の国なのだ。陽気だったら拍子抜けしていた。これくらいの雰囲気でなくては困る。
(さて……関所の人間から聞いたところによると、袖女は既に軍事基地の一室を借りて、滞在しているらしいが……どこかなっと)
正確には、軍事基地ではなく、仮として作った軍事拠点らしいが、俺から見たら充分な出来だ。1つの町内と言っても過言ではないサイズと規模感のため、どの施設が宿泊施設なのかもわからない。
そこらの人たちに聞き込みをしながら探してみるか。そう思った時、横から女性の声が聞こえた。
「あの……お疲れ様です。黒ジャケット」
振り向くと、そこにいたのはスーツを身に纏った女性の姿だった。髪は赤く長いのに、アホ毛一つないことから、しっかりと手入れがされてあるのがわかる。さらにプロポーションも素晴らしく、理想的なボンキュッボン体型だ。
「あんたは?」
「あなた様に協力依頼を出させて貰いました。龍ヶ崎ロカと申します。作戦指揮を担当しておりますので、これからも関わる機会はあると思います。どうかお見知りおきょ……置きを、お願いします」
(噛んだ……)
噛んだ。絶対に聞き間違いではない。間違いなく噛んだ。女の顔が赤く染まる。
それにしても……龍ヶ崎ロカ。だったか? なんともまぁ良い女だ。このグラマーな体型に加えて、この顔面偏差値。それに加えて、初対面の相手だと緊張して噛んでしまう恥じらい属性付き。なんともたまらん。
「……? どうかしましたか?」
「あ、いや……ごほん。なんでもない。それで? そんなお偉いさんが、俺に何のようだ?」
いかんいかん。ついつい自分の世界に入ってしまった。お偉いさんの前でぐらいはしっかりしなくては。
「またまた、ご謙遜を……この日のために集めた戦力の中でも、あなたは特別お強いんですから、そんなあなたに作戦指揮を取る私が話に来るのは当然のことでしょう?」
「ああ……そういう」
(こいつ……俺に取り入ろうとしてやがるな)
おおかた、上の人間に関わりを持ちに行けとでも言われたのだろう。あまりにも見えすいている。
(いくらいい女を差し出されたところで、そう簡単に俺を操れると……)
「どうですか? この後、作戦の総括を行うのですが……今日の夜、2人きりでお食事でも……」
「あ、行きま――――」
目の前の女の、媚びた顔と声色に、思わずはっきりと、行きますと言ってしまいそうになったその時、右手から何か、握られた感覚がした。
(ちっ、いいところで……誰だ?)
実際に誰かに握られているのだろう。その方を向くと、そこには黒いジャケットを着た俺とそっくりの、戦場で見たあいつがいた。
「……その、覚えてる?」
(んあ? 声高――――)
……あれ? もしかして、こいつ女?
(……なんかテンション上がってきたぁ!)