輝き、放つ場所
初めて彼を見たのは、何ヶ月も前の神奈川、東京派閥の同盟会議をテレビで見た時だった。
テレビの画面に映りこみ、記者のインタビューを受けていたのは、やはりといったところか、神奈川派閥のチェス隊や大臣たち。そして桃鈴才華だった。
実際、記者たちの判断は正しい。事実として、私自身も彼ら彼女らを目当てにテレビを食い入るように見ていたし、同盟が発表された時は、私や私の両親、そして隣の家の家庭も盛り上がっていた。
そして、いよいよ各派閥の代表である2人が近づき、同盟締結の握手をしようとした瞬間、その瞬間、夜空の星々をバックに彼は現れた。
天井を突き破り、黒いジャケットを翼のようにはためかせ、現れた姿はまるで鴉のよう。
そこから始まる獅子奮迅の戦いは、決して無双とは言わずとも、チェス隊に桃鈴才華たちと言った各派閥屈指の実力者たちに向かっていく姿は、テレビを見ていたすべての若者の心を奪った。
無論、その中に私も含まれていた。
親はなんたる奴だと憤慨した。親だけじゃなく、大人はみんなそう言った。でも、私は必死になって、彼は何者なのかを調べた。なぜなのかは正確には言えない。ただ、単純にカッコよくて、ほんの少しの憧れを抱いてしまったのだ。
彼に影響されたのは、私だけではなかったようで、みんなこぞって調べ始めて、彼が黒ジャケットという裏社会の人間であると特定した。
周りの大人たちは変わらず、黒ジャケットを批判し続けたが、近頃の若者は言い聞かされただけで止まるほど、従順な子供ではなかった。
ファンたちがファンクラブを作った。更には黒ジャケットそっくりな黒いジャケットを作り、解説動画を動画サイトにアップした。
世間は空前絶後の1大ブームと言えるほどではないものの、若者の中でどんどんと彼の存在が広がっていく中で、私は思ってしまったのだ。
"黒ジャケットに会って、話してみたい。隣で戦ってみたい"と。
ただ……
(こんな出会い方……聞いてないぃぃ……)
俺……いや、私の前には、黒いジャケットがたなびいていた。
――――
遅刻して急いで向かったら、どこぞの全身緑タイツが俺にそっくりな奴を殺そうとしていたので、一旦止めておいた件について。
(何が一体どうなってるんだ?)
そりゃあもちろん、俺が遅刻したのが悪いんだが……これは一体どうなってるんだろうか?
(ま、防衛基地を攻めてるって事は、まず間違いなく
、先手を打とうとしているんだろうが……新潟側に隊服を着た兵士が見当たらない……と、言う事は……)
俺たち犯罪者は捨て駒か。
「あ……」
「あ……?」
「く、黒ジャケットが……2人……?」
(ああ……それもそうだな……けど……)
「まずはお前からだ。鎧ムキムキ男」