こう言うので良い
防衛基地は今、無数にあるうちの3つを破壊されている。その内訳は犯罪者たちが破壊した最初の基地と2つ目の基地。そして、3つ目は……
「……ふうん。こんなもんかしらね……でも、彼はいなさそうね」
新潟派閥が襲撃した地点から見えない程度に離れたところで破壊された基地。全身タイツの女、"グリードウーマン"が破壊した基地であった。
そう。新潟派閥が募集して、集めた犯罪者の中には、グリードウーマンも含まれていたのである。
グリードウーマンは自分が、犯罪者の中では、随一の実力者であることを自覚している。そしてそれと同時に、彼こと黒ジャケットが、自分を超えた存在であることも自覚している。
自分に誘いが来たのだ。黒ジャケットに来ないはずはない。そう考え、新潟派閥の誘いを受けたのだが、集合場所に黒ジャケットは居らず、今に至る。
(うーん。せっかくだから、東京派閥の料理を味わおうと思って、途中まで着いてきてはみたけれど……ま、予想通り、激安バイキングのようなものね)
グリードウーマンにとっては、名のある兵士でもない限り、激安で行けるバイキングのようなもの。腹を満たせるものにはなりはしない。
(と言うか、集合したところからちょっと怪しかったのよね。彼の姿が見えなくて……もしかしたら何か考えがあって、変装しているのかも、と思ったのだけれど……)
「はぁ……もう帰っちゃおうかしら」
グリードウーマンにとって、黒ジャケットがいないのならば、新潟派閥に参加している意味はない。東京派閥の兵士たちの味見もしたし、もう帰ってしまおうか。そう考えたその時だった。
『〜……!! ……は! お…………何!?』
「……ん?」
自分の足元にあった食べ物だったものの残りカスから、何か、明らかにそこからはしない、人の声のような音が聞こえた。
残りカスに付着した赤いタレに触れないよう、人差し指でゆっくりと胸ポケットを弄ってみると、そこにはやはりといったところか、通信用のトランシーバーが入っていた。
『〜!! ぎゃあ! ――を、ギギッ』
「向こうのようすね……ま、カオスなのは間違いなさそ」
向こう側が、いまだに戦闘中だと言うことをグリードウーマンは確認するが、その顔は晴れない。なぜなら、彼女は既に東京派閥の兵士の味を知り、その味が大したことないとわかっているからだ。しかも、行ったところで、今自分がいるところよりも食べられる量が少ないことは明白。
だった。
『なんっ――――黒ジャケ――――』
ノイズ混じりの通信の中で、望んだ彼の通称を聞いたから。