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龍の背に乗って

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「おかーさんー! ご飯は〜?」


 ここは何の変哲もない一般家庭の家。自宅はローンを組んでようやっとの思いで買った一軒家。一軒家を変えるほどの財力と働き口がある分、ほんの少し位はお金があると言っていいだろう。しかし、裕福と言うわけでもない。その程度の一般家庭。その夕飯どきの風景だ。


「ははっ……今日は雪が積もったからな……お父さん疲れちゃったよ……」


「はいはい。ちょっと待ってて……はい! 今日は暖かいシチューよー」


 テーブルの真ん中に座る息子らしき人物と、その両脇に座る母親と父親。父親は昼間、息子の雪遊びにずいぶん付き合わされたらしく、笑みを浮かべつつもしんどそうに体の重心をテーブルに傾けているが、それとは対照的に、母親はせっせと体を動かし、器に入れたシチューを食卓に並べた。


「じゃっ! いただきま――――」


 後は両手を合わせ、食への感謝を伝えるだけ。それだけだったはずなのに。


「どわっ!?」


 ジェット機が通り過ぎるような音が、間近で何度も何度も響き渡る。その音が止んで、いや通り過ぎたと言ったほうが良いか。そこから少しして、地面が小刻みに振動する。照明が落ちるほどの振動ではないが、人生経験の薄い子供が驚いて体制を崩すには、十分な振動だった。


「――っ!! だめ!」


 バランスを崩し、地面に頭から激突しようとする。息子を助けるため、母親が手を伸ばす。当然、手を伸ばしたのは母親だけではない。父親も助けようとしている。ただ、単純に疲れている父親との差が反応速度に出ただけだ。


 結果的に、母親の手は息子の頭を守り、助けることに成功したが、災難はまだ終わらなかった。


「ひ、ひゃぁ……おかあさん……」


「ちょっと……あなた! なんでこんな……外から……」


 細かい小さな揺れは収まることを知らず、外から聞こえるジェット機の通過音らしき音は鳴り止むことを知らない。混乱しているが故に、母親の言葉は説明が足りなかったが、そこは夫婦。母親の言葉の意図を即座に察知し、近くの窓のロックを解除して、もう真っ暗な外を覗き込んだ。


(近くで飛行機でも墜落したのか? だとしたら、めんどくさいことに……)


 しかし、周りを見ても、飛行機が墜落した落下後も、そこから広がる火の手も見当たらない。ただ、その爆音は、明確にそこ()にいることを伝えていた。



「龍……?」



 雪が降りしきる冬の空。そこには、星1つない暗闇を切り裂く龍がいくつも空を飛んでいた。









 ――――









 冬の空は星空が満天! ……と言うわけでもない。


 星が見える夜と見えない夜があるのには、雲が関係しているらしい。何でも、見えないだけで夜にも雲が存在し、それが星を隠しているからだと。


(……ま、星を見てる余裕はないんだけどね)


「お、おい……女……あとどれぐらいだ……」


「んー!? 何でしょうかー!?」


「後!! どれくらいで着くんだ!!」


 星1つない夜空の中、私たちは龍に変身できる兵士たちの背に乗り、埼玉派閥の空を駆け抜けていた。


 新潟派閥は兵士の中に血縁関係者が多いことから、スキルが似通った能力者が多い。そして、その似通った能力というのが、その名の通り龍に変身することができる『龍化』と言うわけだ。


「おそらくはー!……後……15分ほどでしょーうかー!!」


 龍の背と聞くと、特別感があって羨ましいと思われるかもしれないが、その実、乗り心地と静音性は皆無に等しい。そのせいで風を切る音が爆音すぎて、先ほどからこうやって、会話のたびに大声を出すと言うありえない手間をかける手間となった。


(それでも、飛行機に乗るよりは速いからいいんだけど!けど……にしてもね……)


 龍の背に乗る犯罪者たちの表情を伺う。マシな人もいるにはいるが、そのほとんどの表情は固い。これから戦場に行くことを理解している人の顔だ。パニックになっていない分、さすが犯罪者と言ったところか。


 同情なんてしない。こいつらは所詮捨て駒だ。代わりの駒なんていくらでもいる。死んで当然、生きて帰ってきたら再利用(リサイクル)しよう。その程度の存在。


(問題は彼の方よ……黒ジャケットは最後の最後まで来なかった……何故? 約束を反故にされた?)


 しかし、ここまで来てしまったものは仕方ない。彼がいないからと言って、絶対に作戦を達成できないと言うわけではないのだから。100パーセント成功できたはずのものが70パーセント程度になっただけ。


(帰ったら1度連絡ね……うん。そうしよう。いや、しましょう)

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