作戦 その1
新潟派閥には今、東京派閥に反旗を翻すため、日本中から集められた屈強な雇われ兵士たちがたむろしていた。
正確に言うと、土地的に東京派閥から最も近い場所に存在しているC市である。そこに急造の犯罪者軍団専用の軍事拠点を立て、少しの間滞在させた後、拠点のすぐ側に集合させたのである。
元々が犯罪者のイカれ集団のため、雇われるのを生業としている名のある者も居るにはいるのだが、本当に強いのか疑ってしまう者も多数いる。俗に言う玉石混合と言う奴だ。
こうならないために、龍ヶ崎ロカが参加者を厳選していたのだが、現実は非常なもの。玉だけでなく、石も入れないと、人数が足らない状況になってしまったらしい。
(むう……でも、構わないわ。このくらい想定内。全然受け入れられる)
普通ならば、厳選したのが無駄足になってしまったことで、少なからずショックを受けても良いはずだが、龍ヶ崎ロカの表情は曇らない。なぜなら、これらの石を全く気にならなくさせるほどの玉。ダイヤモンドを見つけているからだった。
だからこそ問題ない。だが、彼1人でどうとでもなるとも思わない。
だからこそ、この犯罪者たちを出来る限り厳選し、出来る限り強い犯罪者を予算内で集めたのだ。
(ふふ……これなら勝てる……! 東京派閥に風穴を開けるのよ……!)
事実、彼女の目論みは正しい。今現在、東京派閥は異能大臣の情報シャットアウトによって、新潟派閥よりも明らかに準備不足。そこに彼を投入すれば大きな戦果を持ち帰ってくるのは間違いない。彼女がここまで自信満々になるのも仕方がないと言えよう。
だから、何が起きようと問題ないのだ。
「…………」
問題ないのだ。
「…………」
問題……なかったはずだった。
「……こない……なんで……なんで来ないのよぉ〜!!」
そもそも、彼が来ないと言う点を除けば。
――――
「来ない……なんで……? 悪い条件じゃなかったはず……じゃあなぜ……? 私が連絡を見るのを忘れた……? いや、そんなはずは――――」
指定時間になっても、彼が、私のダイヤモンドが来ない。その現実に直面した私は、犯罪者たちの前にも関わらず、その場でしゃがみ込み、ぶつぶつと言葉を呟いていた。
「……おい! いつまで待たせんだよ!」
「もう10分は経ってるよなぁ? そろそろ話、進めてもいいんじゃねーの?」
「金貰ってるっつってもよォ! 文句言う権利ぐらいはあるよな? 早く死ねぇと目ん玉くり抜くぞオラァ!!」
実力がある程度あるとは言え、結局は犯罪者。冬の寒さ関係なく、外に出て待たされていると言う事実に腹を立て、安っぽい言葉を使ったヤジが飛び始める。
(チッ……黒ジャケットのおまけ風情が……てめえらなんかあの方を呼ぶための建前で使っただけなんだから、黙ってろよ……)
「……はっ!」
心の中とは言え、正しい言葉遣いを使ってしまった自分を恥じる。はっきり言ってこんな奴らならどうなってもいいのだが、このままバラバラになってしまっては、黒ジャケットのカバー要因に加えて、私の努力が本当の本当に無駄になってしまう。
(しょうがない……やるしかない……)
「……わかりました。少し予定は狂いましたが、本筋を変えるつもりはありません。これより、作戦名『破裂の槍』の内容をお伝えします」
ただ遅れているだけ。そう思い込み、作戦内容を説明し始めた。