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そして、一ヶ月

 新潟派閥内で行われた戦争会議。そこから2ヵ月の時が経った。


 月は1月初頭。冬真っ盛りで雪が積もりに積もり、厚着をしていないと凍死してしまうんじゃないかと思うレベルで冷え込んでいた。


 普通の子供なら、積もった雪を使って雪だるまや、かまくらを作って遊び倒すところだが、新潟派閥と東京派閥がそんなことをするわけがない。雪で遊ぶどころか、雪を血で真っ赤に染める側なのだから。


 まず、新潟派閥は2ヶ月と言う準備期間で、兵士の更なる強化、補充を行った。


 単純に新潟派閥から兵士を生み出すのでは非効率なので、今回の戦争の全指揮を任せられた龍ヶ崎亮介に龍ヶ崎ロカが進言し、ロカの指揮(タクト)の下、裏サイトに求人を貼り付け、立候補してきた犯罪者たちの選別を執り行った。派閥内で1から兵士を作り出すよりも、非公式ではあるものの、経験に裏打ちされた実力がある犯罪者の方が、安上がりかつ簡単に戦力を増やすことができると考えた結果である。


 裏社会で拡散された新潟派閥VS東京派閥の戦争の噂は瞬く間に広がり、大阪派閥だけでなく、日本中に伝播し、我先にと立候補者が続出した。


 無論、新潟派閥VS東京派閥など、いくら裏社会の人間と言えど、力の差は理解している。あの東京派閥とは戦いたくないと感じる者もいた。しかし、それ以上に、"あの東京派閥"と戦える。そう聞いて心踊らない人間は、裏社会に限って少数派だった。


 その結果、新潟派閥は事前の予想よりも、はるかに戦力が増大した。それこそ、()()()()ができるんじゃないかと思えるほどには。


 しかし、そこまで時間が経ってしまえば、東京派閥も流石に気づく。新潟派閥が何かを仕掛けてきていると。


 正確には、東京派閥が動きに気づいたのは1ヵ月前。新潟派閥が裏サイトで人員を募集してすぐのことだった。いくら異能大臣が下に情報が流れるのを抑えていたとは言え、新潟派閥から漏れ出る反逆の匂いは抑えきれなかったのである。


 東京派閥を守る防壁、そのさらに奥にある防衛基地の人員強化、傘下に置いている派閥に向けての厳重化要請。


 しかし、対応に遅れてしまったのは事実で、兵士を出撃させ、新潟派閥の動きに対して警戒を厳重化したのは、2ヶ月と言う準備期間の終わり頃だった。


 戦争と言うのは不意打ちが肝心だ。派閥と派閥の境界は昔ほどの効力を持たず、進軍する時にわざわざ周りに『出発します!』なんて宣言はしない。


 だから今がチャンス。東京派閥を守る防衛基地に攻め込むにはうってつけの機会だ。そして、それには、この戦争だけのインスタントな関係である犯罪者たちを送り込むのが好ましい。



 つまり、早速我らが主人公、田中伸太の出番。



 ……の、はずだったのだが。





「……こない……なんで……なんで来ないのよぉ〜!!」





 田中伸太は未だ、不自然なほど新潟派閥に合流することなく、戦争の火蓋が今、切られようとしていた。

 

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