新潟行動
……新潟派閥。
それは、中堅派閥の1つとして挙げられ、今は東京派閥の参加に置かれている派閥。
他と比べて土地が広く、海に面しているため、資源も豊富。が、土地の広さに比べて人口はそこまで多くなく、大派閥と比べて優秀な人材が生まれづらい。戦力で見ても、資金力で見ても、むちゃくちゃにすごいわけではない。どこにでもある中堅派閥だ。
……今は。
今の新潟派閥は、確かに中堅派閥だ。しかし、昔はあの東京派閥にも負けない。むしろライバル同士と言えるような大派閥の一つだった。要するに『昔は凄かった』系派閥なのである。
では、何故新潟派閥は落ちぶれ、東京派閥の支配下に置かれたのか?
それは新潟が誇る『越後の龍』が戦場を退いたからである――――
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「――と言うのが、我が新潟派閥の歴史です」
「知っとるわ。てか、聞き飽きたんだよ。毎回毎回会議の前に言いやがって」
場所は新潟派閥、龍屋敷……紅龍の間。
それは戦争黄金時代、途中退場したものの、たった1人で新潟派閥に多大な影響を及ぼし、一時期は大派閥にまで押し上げた『越後の龍』の功績を讃え、建てられたものである。
東京ドームよりも広い土地に建てられ、屋敷にしても広すぎるその建物は、もはや屋敷と言うより城。すべての部屋をくまなく回るのに3時間はかかるのだ。
新潟本部よりも間違いなく大きい龍屋敷の部屋の一つ、紅龍の間では、龍屋敷の家主『越後の龍』を含めた親族たちによる戦略会議が行われようとしていた。
「我が新潟派閥の歴史は大事なんです! いいですか? そもそも、新潟派閥の強さは、新潟県と呼ばれた時代からさらに遡った戦国時代、越後の頃から――――」
「はいはい。わかったわかった」
茶色のスーツを着込み、ホワイトボードを使って新潟の歴史を説明しようとする女に対し、対比するかのように、パーカーをラフに着込んだ気だるげな男は、手で「あっちいけ」のハンドサインを送りながら対応した。
「……で、歴史は良いとして、今回の戦争。戦略はどうするんだ? 親父」
男の目線の先。そこにはヒゲを蓄えた老人が腕を組んで座り込んでいた。実年齢は80を超えているにも関わらず、なぜか上裸であり、二の腕や大胸筋はあり得ないほど隆起している。何なら大胸筋は常にピクピクしている。顔を見たら明らかにおじいさんだとわかるのに、首から下を見ると、若々しく見えるのがとても不思議だ。
その男こそ今回の戦争の中心人物であり、新潟派閥を代表する兵士。
「ん……んあ? ……ふぁーぁー……お前に全て任せる。ワシは適当に暴れりゃそれでよい」
『越後の龍』龍ヶ崎震巻。新潟派閥を代表する伝説の兵士である。