さらば、神奈川派閥
やっと終わったあああああああ!!!! 神奈川潜入編、いかがでしたでしょうか! これから先も応援していただけるととてもうれしいです! よろしくお願いしまーす!
黒のクイーンは、ついに地に付した。
顔面が半分以上えぐりとられ、残りもう1つの目も白目を剥き、下品な顔をしてしまっている。
しかし、だからといって面白いかと言われたらそうでもない。左からまるごと半分顔が消し飛んでしまっていたからだ。
(血の量も半端じゃないな……早く応急処置をしないと……いや、応急処置をしたとしても……)
このエグレ具合を見るに、間違いなく脳もいくばくか欠損してしまっているだろう。となると、血を戻したとて……
(……いや、関係ないか。どちらにしろ死ぬなら都合がいい。確実にトドメをさせるように、頭部の完全な破壊を……)
と、その瞬間、背中からザフリと、自分より一回り小さいものが後ろからぶつかってきた。
「なんだ……袖女か」
「なんだじゃないですよ……もう」
背中から抱きつかれているため、袖女の表情はわからないが、声色が震えているのを考えると、泣き顔になっているのだろう。黒のクイーンが倒れてホッとしたと言った感じだろうか?
(ま、こいつからしたら、別次元の世界だっただろうからな……しゃあないか)
しかし、ずっとこのままでいるわけにもいかない。黒のクイーンが倒れたとは言え、増援が来ないとは言い切れないのだ。決着がついたのなら、とっとと逃げるが吉。
「……おい。離せ」
黒のクイーンの顔を潰してとっとと帰りたいのだが、袖女がなぜか抱きついて離れてくれない。
「……や」
「ん?」
「やぁ……」
袖女は体から離れず、声とともに顔をぐりぐりと横に擦り付ける。どうやら離れたくないらしい。
「はぁ……おいブラック。肩」
「ワン!!」
俺の声を聞いたブラックは、了承の一鳴きをすると、俺の体にひょいっと飛び乗り、肩に体を置く。客観的に見るとマジで某ネズミを肩に乗せた少年だなガチで。
そして次に、背中に抱きつく袖女を一旦強引に振り解き、正面から抱いてお姫様抱っこで持ち上げる。
「あっ……ん……」
無理矢理振り解かれ、一瞬、寂しそうな声を出したものの、抱っこされた時には寂しそうな声は鳴りを潜め、くすぐったそうな声を出した。
1つ言わせてくれ。喘ぐな。変な気分になるから。
「あー……飛ぶぞ? 家に帰ったらメシと……後、スマホも買いに行くか」
悶々とした気分を紛らわすため、先ほどまでとは全く関係ない世間話をしながら、空を飛ぶために大地を蹴り……
撃ち込まれた光線を避けながら、神奈川派閥を後にした。
――――
先程まで黒のクイーンと黒ジャケットが戦っていた関所跡。そこから少し離れた被害のない都市の高層ビルの頂上にて、チェス隊の隊服を着た女が電話をしていた。
「……これでよかったのですか? 外れてしまいましたけど」
『問題ないよ。当たらないのは想定済みだからね』
「そうですか……では……斉藤様を助けてくれるのですね?」
『もちろんだよ。もう既にうちのお抱え医療班をそっちに向かわせてる。何かしら後遺症や後は残るかもしれないけど、そこは理解してね? 君から連絡をかけてきたんだからさ。黒のルーク』
「ええ。ありがとうございます。異能大臣」
黒のルーク。天地凛は、スマホの電話を切り、粉々になった都市を遠目に眺めながら、たった一言だけを、空に溶けるように呟いた。
「全ては神なる天皇の下へ……」
神奈川派閥での長い長い旅路は、終焉を告げた。
まだまだ続くよ。どこまでも。