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ト・ド・メ(ハート)

 空を埋め尽くす巨大隕石。それは宇宙の物質で構成されておらず、地球にて、人間が作り上げた人工物や家具。皮脂や皮そのもの。爪や垢で構成されている。


 本物の隕石よりは柔らかい物質で出来ているのは間違いない。が、それでも、空を埋め尽くすほどの質量が集まると話が変わってくる。


 今の俺の最高火力でも、壊す事は絶対に不可能。


 考えるまでもなく、直感と勘と感覚と予感と……何より経験が、瞬時に答えを導き出していた。


(なら……スキル持ちを先に潰せばいい)


 別々の物質がバラバラにならず、空中で固まって落ちてきているのは、スキル持ちのスキルによる接着で間違いない。ならば、落ちてくるよりも先に本体を潰せば、空中の隕石は崩壊を始め、霧散するはずだ。


 しかし、だからこそ本体である黒のクイーンは、本体である自分自身の肉体を隕石の中に埋めたのだ。


 隕石には敵わない。なら、先に本体を潰す。当たり前に導き出される自明の理。が、肝心の肉体は隕石の中にある。


 隕石を壊せないから本体をつぶしたいのに、隕石を壊さなければ本体に攻撃を通せないと言う矛盾。


 本来ならタイマンで出せない……否、出してはいけない。戦争用の奥義なのだろう。


「うれしいねぇ……」


 本来、人一人に出すべきではない必殺技を出してくれた黒のクイーンに対して、思わず歓喜の言葉を述べる。


 ただ、物理的にでかい一撃を受け止めることはできない。残念だ。非常に残念だ。俺にもう少し力があれば……


(……いや、仮に力があっても……)


 黒のクイーン(こいつ)は俺のものだとわかっていながら、袖女を傷つけた。そんな奴に敬意を払う必要は無い。


「袖女……そこから動くな」


 思わず口からそんな言葉が漏れ出る。どうやら俺は今から起きることを誰かに見せたくてたまらないらしい。


 俺は利き手である右拳を強く握り、闘力操作で自分の中にある闘力の全てを、反射を右拳に付与し。エリアマインドで右腕を振り抜くスピードを上げる。これらの行動全てを同時に発動する。いちいち言うのも面倒なので、これからは三重奏発動(トリプレットキャスト)と言うことにしよう。


 しかし、いくらスキルを三重に重ねようとも、隕石を破壊するには到底及ばない。1人が発動できるスキルの量としては破格だが、所詮3人分。そして、人間3人では、隕石を砕くことは叶わない。全くもって当たり前である。


 が……()()1()()()()()()なら…… 3人と言う人数は、十分な数だ。


 俺は先ほど黒のクイーンに触れた時、袖女のオーラの性質を真似て()()()()()を施しておいた。


 しかし、俺の闘力には体から離れた時、その形を保持する力は無い。昔、訓練所で試して実証済みだ。


 が、それは空中での時だけ。自分の体から外に出て、闘力が霧散する前に、エリアマインドで闘力を固め、他の生物の体に移したのを確認した後、エリアマインドを解除すれば、闘力のエネルギーは霧散することなく、生物の体に留まってくれる。


 ()()は全くないが、他の人間の肉体を器にして、エネルギーを保持する自体はできるのだ。



 それこそ、中の黄身を守る卵の殻のように。



 さて、ここで一旦、俺のスキルを思い出して欲しい。





スキル名 闘力操作


所有者 田中伸太


スキルランク easyイージー


スキル内容

 所有者の体の中にある闘力を自由に操作し戦うことができる。闘力が0になれば所有者は気絶する。





 簡潔に言うと闘力と言うエネルギーを操る能力だ。


 そう。()()()()()のだ。


 所有者の体に中にある。と明記されてはいるが、それは本来、俺の体の中から移動するわけがないエネルギーだからと言うだけで、もし俺の体からエネルギーが離れ、それが形として残った場合、どうなってしまうのかはわからない。


 そもそも、()()()()()()()()()()と言う前提。その前提自体が異常なのだ。その異常が、本来、俺の体に宿ることのない2つのスキルによって、無理矢理可能にされてしまっている。


 本来は起こり得ない状況。自分の体以外に闘力が存在している状況下で、体の中の闘力を()()使ってしまうとどうなるのか?


 無論、闘力が尽きると気絶する。が、自分の体以外のところに闘力はまだ存在している。


(俺の仮説が正しければ……)


 右拳を自分の体よりも後ろに下げる。狙うはもちろん隕石。発車する準備を完璧に整えた。そして同時に、隕石の先端が少し、ほんの少しだけ盛り上がる。


(闘力は……俺の体に戻ろうとするはずだ!!)


 黒のクイーンの、体ごと。





「初めて会った日から待ち望んでたんだ……あんたのキレイな顔をぶん殴れる瞬間をなぁ!!!!」





 女王の顔面は、血が破裂するような音とともに、ありえないほど、陥没した。





 (最底辺)の拳によって。




 

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