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肉体 その2

 投稿〜

「ぬかせ!! ……と言いたいところだけど……」


 そう言うと、黒のクイーンはアゴに親指を当て、考え込む仕草を取る。


「この程度、天子ちゃんレベルの兵士なら余裕でこなすでしょう。彼女らレベルでできることで貴方が倒れるとは私も思いません。そこで……」


 アゴから親指を外し、その親指と人差し指の腹を擦り合わせ……一鳴らし。



 パチン



 いわゆる指パッチンと言うやつだ。それ自体は何の変哲もない。変哲だったのは、指パッチンに合わせて無数の杭たちが変形を始めたことだ。


(なんだ……?)


 グギグギと変形するはずのないものを無理矢理変形させているような音を立てる杭に、若干の疑問を持ちつつも、俺は右拳を握りしめ、反射を発動させる。


(杭が変形している今がチャンスなのかもしれないが、それは黒のクイーンも承知の上だろう。現時点で黒のクイーンのスキルの詳細どころか、大体も掴めていない以上、何の対抗策もなしに突っ込むのはよろしくない……)


 最初に見せた超加速は俺と黒のクイーンの立ち位置が平行になっていて、地面に強く踏み込めたからこそのもの。今の立ち位置では難しい。だからと言ってピンチかと言われたら、別にそうでもないのだが……


(袖女に話を聞ければ……)


 しかし、これらの悩みは袖女と話す時間さえ稼ぐことができればすぐにでも解決する。


 黒のクイーンに警戒しながら、チラッと横目で袖女の安否を確認する。どうやら袖女はブラックとともに比較的被害の受けづらいドームの端に移動し、戦いの終結を待っているようだった。


 今すぐにでも話を聞きに行きたいが、黒のクイーンがそれを許すはずもない。それに例え、袖女に聞きに行けるほどの隙を生み出したとしても……


(あんなこと言った手前……なぁ?)


 男としてのプライドが、話を聞きに行くことを拒んでいた。


 よって、俺は黒のクイーンの準備を眺めるだけとなってしまい、ついには変形が完了する。


「あれは……」


 先は元の杭よりも鋭く、三角錐型に大きく姿を変え、それをカバーし、包むかのように、切先以外を土台のようなものが包み込んでいる。それはまるで大砲の発射台のような……


(まさか!!)


「パイルバンカーか!!」


 パイルバンカー。現実の戦争では登場する事はなく、一部のロボット好きやゲームでよく見る現実とはかけ離れた兵器。主に金属などを素材に使い、火薬や爆薬等で先端の杭を射出する架空の兵器。


 その火力は甚大だが、飛び道具ではない故に当てるのが難しく、()()()()強いロマン武器。と言うのが一般的だ。


(なるほど……そのまま飛ばしちまえば関係ねぇわけだ)


「今更気づいても遅い……さぁ、行くわよ!!」


 掛け声とともに、無数の杭改め、無数のパイルバンカーがこちらを射抜かんとばかりに向かってきた。


 十分に避けられる速度ではあるが、問題はその数だ。反射で溜めた拳一つではとても相殺しきれない。


(なら……!!)


 まずは普通に反射を込めた拳であらかたのパイルバンカーを破壊。その後、左手の親指を噛み、血を出し、手のひらに滲ませると、手を横に振って血を全方向に飛ばした。飛び散った血は向かってくるパイルバンカーや地面に付着し跡を残す。


「血の反射!」


 叫んだ瞬間、血の付いたパイルバンカー、周辺の地面が炸裂する。パイルバンカーだけでなく、周辺の地面まで破壊したのには理由がある。


「姿が……」


 黒のクイーンの口からぼそりと言葉が溢れる。企み通り、俺は姿を一瞬でも隠せたらしい。


 いくら無数にあるパイルバンカーがあろうと、それらは全て黒のクイーンの管理下に置かれている。そして、黒のクイーンは俺の姿を目視することで発射している。なら、それが見えなくなったとなれば、命中精度は目に見えて落ちるはずだ。


(ここで踏み込んで移動すれば、パイルバンカーはもう俺を追えない!)


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